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時代刺激人-ジダイシゲキビト-経済ジャーナリストの辛口メッセージ

Vol.292

2017.02.28

中国は「強大国」誇示するなら環境重視を
地方政府や下級裁判所が住民に冷ややか

 発表ものをこなすジャーナリズムではなく、現場からの独自発信こそ大事、という立ち位置に長年こだわってきた私は、メディアの調査報道に関しても当然、積極推進論者だ。そんな私が「これはすごい」と思ったのが、2月5日放映のNHKスペシャル「巨龍中国の大気汚染 超大国の苦悩~PM2.5 沈黙を破る人々」という調査報道番組だ。

NHKスペシャル「巨龍中国の大気汚染」は
3年間追跡した調査報道で、脱帽

 中国の環境汚染は、急ぎ過ぎた経済成長の反動で深刻さが加わり、中国国内のみならず今や日本を含めた周辺国に影響を及ぼしている。中国習近平政権が「強大国」を誇示するならば、対策のホコ先を変え環境大国をアピールする国にすべきだと思っている。そんな中で、NHKが、環境汚染対策に苦しむ超大国の現場を3年間にわたり「定点観測」の形で密着取材した。中国における外国メディアの取材は大きな制約を受けるだけに、脱帽だ。

 今回の番組は、中国・武漢の大気汚染現場での住民の反公害運動に対して地方政府のとった汚染物質排出源の企業寄りの行政、また中央の環境保護部(日本では環境省にあたる政府機関)の現場窓口の対応、そして下級裁判所の住民提訴を半ば門前払いするやり方などを3年間にわたって、住民サイドに立って、いくつかの家族の動きを描いている。

急速な都市化による問題噴出する中国・武漢で
環境被害に苦しむ現場に密着

 武漢は、地方都市とはいえ1000万人の人口を擁する巨大都市。ここ数年、農村部からの大量の人口流入で急速に都市化が進んだ。それに伴い武漢市当局は、住宅建設など物的インフラ整備に努めるが、急増人口が吐き出すゴミ処理に追われ、対策が追い付かない。それをビジネスチャンスと見た中国企業が2008年に進出し巨大なゴミ処理工場を建設していったあたりから大気汚染などの問題が深刻化してきたと、その報道番組は伝える。

 ゴミ処理会社が環境維持に必要な煙などの排出基準を守っていないことが最大の問題で、調査報道では、王成さんという24歳の息子を亡くした王さん一家が、医師から、ゴミ処理会社の煙に発がん性物質が混入し急性白血病死去の原因の可能性が強い、と言われる姿を描く。また任端さん一家は、5歳の息子のノドに腫瘍が見つかり医師からゴミ処理会社の大気汚染の影響でないか、と聞かされる姿を映し出す。任端さんは、不妊治療の結果に授かった息子のため我慢ならず、同じ被害にあった人たちと住民運動に立ち上がる。

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