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時代刺激人-ジダイシゲキビト-経済ジャーナリストの辛口メッセージ

Vol.293

2017.03.29

福島原発事故の風化だけは避けよ
安倍首相の指導者資質が問われる

 今、国有地払下げにからんで学校法人「森友学園」問題が一気に政治問題化している。外交面で存在感を見せる安倍首相も、国内問題の「森友学園」問題の対応処理にあたっては、危機管理面で判断ミスと思える言動のまずさが目立つ。内外に問題山積で、安倍政権としては対応課題が多い時だけに、首相自身が政治問題化で事態をこじらせるのでなく、透明性のある国有地払下げに向けた対応などに関して、指導力発揮する資質が問われる。

3.11追悼式式辞で、首相が原発事故に
明確な言葉で言及せず、というのは問題

 その指導者資質という点で言えば、安倍首相の最近の対応で、私はいまだに強い不満を持っていることがある。それは、安倍首相が今年3月11日の政府主催の東日本大震災追悼式で、東電福島原発事故そのものについて、明確な言葉で言及しなかったことだ。

 翌日のメディア報道で、言及がなかったことを知り、私は唖然とした。あの場で、安倍首相は、「世界中を震撼させた原発事故の問題は、私たち日本にいまだに重くのしかかっています。事故による被災者の方々がおられる限り、政府、そして東電の責任が続くのは言うまでもないことです。決して風化させません。原発事故の教訓を踏まえ、未解明の事故原因の究明と合わせて、引き続き再発防止に全力を傾注していきます」というべきだった。なぜ、言葉を選び、強いメッセージを内外に発信しなかったのか、と不思議に思う。

私ならば「7年目の今こそ風化させないことが大事、
式辞文を書き直せ」と言う

 安倍首相は、東日本大震災後、震災被災地を30回ほど訪問したことをいろいろな場でアピールしている。首相職という多忙の立場で、それ自体、すごいことだ。でも、それだけの現場体験を自負するのならば、福島の現場で原発事故の被害の大きさ、そのもたらす問題の広がりに関して、政治リーダーとしても十二分にわかっているはず。

 首相の言葉は重いものがある。だからこそ、東日本大震災追悼式という重要な場で、安倍首相が自身の言葉で、原発事故で被災した人たちがいまだ苦境にあえぎ、廃炉作業を含めて事故処理がまだ延々と続けられていることについて言及することは重要だ。それをしなければ、原発事故の風化を招きかねない状況を首相自身で作り出してしまうからだ。

 首相スピーチライターの内閣官房参与で、ジャーナリストOBの谷口智彦氏を、私も知っている。谷口氏自身は情勢を見るに敏だと思っていたが、なぜスピーチの中に、原発事故の問題に言及しなかったのだろうか。私が仮に首相の立場だったら、「事故から7年目に入り風化しかねない時期にこそ、しっかりとしたメッセージが重要だ。書き直せ」と厳しく言うだろう。それこそが危機意識の問題だし、指導者としての資質につながる問題だ。

危機管理対応のまずさでは「森友学園」問題も同じ、
内外に問題山積時に残念

 ちょっと横道にそれるが、今回の学校法人「森友学園」問題の危機管理に関して、私のみるところ、安倍首相が「もし私や妻が関係していたとなれば、首相も、国会議員も辞めると申し上げておきたい」と述べたのは、指導者の言動としては、いささか軽率だ。何ら問題などあり得ない、と啖呵を切ったつもりなのだろうが、仮に不透明さや疑惑を残したままになると、その言動が責任問題に及び、あとで命取りになりかねないからだ。

 その点では森友学園理事長の籠池氏は役者が一枚も二枚も上で、誰もが破格の扱いと見た国有地払下げ問題に関して「神風が吹いたように思った」と疑惑に含みを持たせた。しかも妻の昭恵夫人がからむ100万円寄付問題の持ち出し方も同じだ。ここまでくれば、国有地払下げ問題の不透明さに早く決着をつける必要がある。重ねてだが、内外で課題山積時に、国有地払下げ問題で国会が右往左往というのは、日本の危機管理上も問題だ。

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