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時代刺激人-ジダイシゲキビト-経済ジャーナリストの辛口メッセージ

Vol.293

2017.03.29

日本のトップリーダーの対応次第で
「風化」に歯止めもかけ風評被害にも終止符可能

 私が今回、安倍首相が東日本大震災追悼式で、東電福島原発事故そのものについて、明確な言葉で言及しなかったことを問題視したのは、首相自身が原発事故の風化を招きかねない状況を作り出してしまうことのこわさを強く訴えたかったからだ。福島の人たちは、宮城県などの人たちと違って地震・津波災害よりも、原発事故による避難で住み慣れた土地や家を失っただけでなく、放射能汚染によるリスクを抱え、それが今は風評被害、経済的損失という形で福島県全体に影響が及んでいる。それだけに風化は許されないのだ。

 そればかりでない。中国など周辺諸国もこの問題に関しては頑なだ。福島産のコメが全量全袋検査で放射能ゼロを記録しても、福島産食品の輸入禁止措置を変えようとしない。それだけに、重ねてだが、日本のトップリーダーのしっかりとした原発事故対応、開沼さんが指摘するポスト復興期の課題への明確なメッセージが改めて、重要になってくる。
 風化という言葉は、厳しい意味合いを持つ。自然災害の場合、樹木が朽ちたりするが、人間社会の場合、歳月が過ぎ去ると、記憶や意識が薄れて、下手をすると忘れ去られていくリスクがある。日本のトップリーダーの見識、指導力が問われる、と言いたい。

原発事故処理は終わっておらず、
国会事故調提言どおり独立の調査委の新設が必要

 東電福島第1原発事故に関しては、以前のコラムで、私は事故の真相究明調査を行った立法府の国会事故調の事務局に参画し、事故調査を側面からサポートする立場にあったことを申し上げた。その国会事故調報告書をお読みいただいた方が多いと思うが、2012年7月に国会提出した報告書では、事故は、地震と津波によって引き起こされた自然災害ではないこと、津波を予測して事前に十分な対応ができたにもかかわらず対応を怠った「人災」であるとこと、とくに規制する側の原子力安全・保安院(当時)などが、規制を受ける側の東京電力など電力会社、電気事業連合会などに取り込まれ、本来の原子力規制の役割を果たせなかった「規制の虜(とりこ)」に陥った「人災」であると結論付けた。

 しかし今後につながる問題として、私は、国会事故調が提案したとおり、改めて立法府が担保する独立の原発事故調査委員会をつくり、現在の原子力規制委員会だけでなく、原子力行政に直接・間接にかかわる経済産業省などの行政機関、電力会社の原発運営の監視を行うこと、原発事故が起きたことを想定しての政府の危機管理体制の見直し、それと東電原発事故時に最も欠落した多段階の原子力防災対策「五層の深層防護」の構築などが必要だと思っている。いま、これらの対応を独立の立場で行える組織がないのが大問題だ。

原発事故の責任の所在あいまいなまま、
事故処理費用が国民転嫁されるのは疑問

 原発事故から7年目に入った今、事故現場の処理は終わっていない。それどころか廃炉に向けて、かなりの時間と労力が費やされる必要があり、今も6000人ほどの人たちがそれらの処理に携わっている。問題は、原発の事故処理、廃炉処理、さらに賠償などを含めた処理費用は、当初想定した額の2倍以上の21.5兆円に膨れ上がる見通しで、文字どおり気の遠くなる数字だ。1つの原発事故でこれだけの事故処理費用がかかっているのだ。今後、状況によってさらに膨れ上がる可能性が高い。

 それどころかこの財源は、電力自由化のもとで新規参入した新電力にも負担が及び、結果的に一般の利用者が負担する電気料金に転嫁される状況も出てきた。信じがたいことだ。ところが、原発事故そのものの責任はいまだにはっきりしていない。その意味でも国会事故調が提案した新たな独立の原発事故調査委員会でしっかりとしたケリをつけるべきだと思う。その意味でも、風化は許されない。いかがだろうか。

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