賢者の選択TOP > 時代刺激人

時代刺激人-ジダイシゲキビト-経済ジャーナリストの辛口メッセージ

Vol.295

2017.08.23

米国でのホンダジェット開発成功にヒント
独創的技術と異文化コミュニケーション力

 自動車のイノベーションが今、面白い。トヨタ自動車がグループ企業と連携して近未来にチャレンジした「空飛ぶ自動車」開発が話題になったほどだ。しかし私は、同じ自動車メーカーの本田技研工業が航空機開発を手掛けたことに強い関心がある。オートバイから自動車、そして一気に航空機へとチャレンジする点は、モノづくり企業の極みだからだ。

 その本田技研の米国法人ホンダエアクラフトが、4年前の2013年、独自開発したビジネスジェット機ホンダジェットをご記憶だろうか。厳しい安全査定で定評ある米FAA(連邦航空局)から航空機として型式認証を得た時には驚嘆した。

安全査定で厳しい米FAAの型式認定得たのはすごい、
三菱MRJとの違い際立つ

 とくにFAAは、ホンダが独自開発した航空機について、折り紙付き高評価を与えたという話を聞いて、戦後、日本の航空機メーカーが米国ボーイングなどの航空機下請け生産に終始していただけに、自動車メーカーが全く独自にエンジンを開発、航空機開発につなげたのは快挙、と思った。ホンダジェットは7人乗りのビジネスジェットで、航空機の主力ではないが、スピードや上昇性能、燃費や乗り心地のよさなどが米国を中心にグローバル評価を得て、量産体制に入っているというからすごい。

 航空機専業の三菱重工業子会社の三菱航空機は、三菱リージョナルジェット(MRJ)の日本での開発にこだわったが、安全性確保などの面で課題を残し、いまだに型式認証がとれず、「離陸(TAKE OFF)」に至っていないのとは対照的だ。

リーダー藤野さんの来日時講演で苦労話聞き、
グローバル競争勝利の秘訣わかった

 実は今回、コラムで取り上げてみようと思ったのは理由がある。最近、そのホンダジェットの開発総責任者でもある藤野道格ホンダエアクラフト社長兼CEOが来日し本田財団で講演した際、開発当時の苦労話を聞くチャンスがありワクワクすることが多かった。それと同時に、藤野さんの話を聞いていて、ジャーナリスト目線で、日本企業がグローバル市場で勝つポイントがあるな、というヒント部分があったため、レポートしようと考えた。

 そのポイントは、企業がグローバル競争をする場合、積極的に競争現場の主戦場にあえて臨み、激しくもまれながら競争に勝つための大胆な取り組みを行い、誰もが高い評価を下してくれる実績を示すことが必要、という点だ。要は、日本を拠点に、日本仕様の完成品をつくって世界に打って出る、という発想でなく、最初から主戦場で競争することだ。

オンリーワン技術武器にソフトパワー駆使、
日本でなく米国主戦場での競争が重要

 もう少し具体的に申し上げよう。ホンダジェットの場合、航空宇宙工学専門家の藤野さんがすべてのキーパーソンだ。経営のトップに立ち、2つのソフトパワーを駆使した。
1つは、藤野さんが、グローバル市場で勝ち抜くためには、ライバル企業と同じものをつくるのではなく、オンリーワンと言える独創的な技術による新機種開発が必要、としたイノベーション力のすごさ、そして主戦場はビジネスジェットの本場、米国と決めたこと。もう1つは、藤野さんが30か国に及ぶ国々の技術者1800人を巻き込み、異文化コミュニケーション力を駆使して組織を動かしたダイナミックな指導力だ。

 藤野さんの話で最もすごいと思ったのは、独創的な技術開発へのチャレンジ、イノベーションに対する執念だ。藤野さんは「ビジネスジェットに新規参入するホンダが他のメーカーと同じようなものをつくって意味があるのか、と自身に問いかけを行った。そして、あえて独自の発想、イノベーションで行くことにした」という。その最大成果が、航空機エンジン開発関係者の「常識」を打破した主翼の上の部分へのエンジン取り付けだ。

PAGE TOP

 登録はこちら 詳細はこちら