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時代刺激人-ジダイシゲキビト-経済ジャーナリストの辛口メッセージ

Vol.297

2017.10.31

神戸製鋼OBたちは深刻、
「過去に同じ問題を起こしながら失敗研究できていない」

 この高品質経営の問題に入る前に、大企業の組織病の現実に関して、少し申し上げよう。実は、今回の品質データ改ざん問題は、経済ジャーナリストの立場で取材経験のある神戸製鋼に集中したうえ、友人も多かったので、ショックだった。さっそくOB数人といろいろ話し合った。1人のOBは「過去に別の事業部門で品質データ改ざんが見つかって企業責任が問われた時に、今回発覚した別の事業部門の幹部は『わが部門は問題ないか、すぐチェックしろ』といったアクションをとらなかったのだろうか。私ならすぐ対応する。失敗の研究が出来ておらず、再発防止策も機能していなかった。間違いなく重症だ」と。

 また、別の神戸製鋼OBによると、かつて1980年代に旧通産省(現経産省)から天下りOBを迎え入れた際、この官僚OBが問題意識旺盛で、タテ割り組織の弊害が目に付くと営業企画部を新設し、たこつぼ化していた組織の横ぐしを刺して、いい意味での企業横断的な連携を進めた。そのOBは「そのフォローアップをしていないが、組織改革には取り組んでいただけに信じられない。結局は、タテ割り組織の力の方が強く、歴代の経営陣も指導力を発揮せずマンネリズムに陥っていたのだろうか」と危惧している。

「もともと高品質だったので、
納期間に合わせろ対応でデータ手直し許されるかと」

 さらに、もう1人の神戸製鋼OBは、「声高に言える話ではないが、神戸製鋼の場合、品質基準に関しては、自助努力で、他社よりもレベルの高いものにしているケースが多い。このため、今回の事件発覚の発端となった納期に間に合わせろとか、利益出しのために検査工程などのコストカットに努めろなどのプレッシャーに負けて、『もともと品質レベルを上げていたのだからデータ手直しをしても許されるのでないか』と勝手な解釈で対応した可能性がある」と述べた。私は「それは自己都合の論理だ。それならば取引先企業との契約内容のうちの品質基準の部分を変更するべきだった」と反論した。

 いずれにしても、神戸製鋼ともあろう企業が、こういった企業の品質経営にかかわる部分で緊張や規律のない経営を行っていたのは残念というほかない。鉄鋼の高炉と機械の2本立てという特殊構造の経営にあったとはいえ、トップリーダーを含め経営陣の経営責任が大きく問われる。私は、今回の問題で、メディアがすぐ安易に経営者の経営責任はといった形で辞任要求するやり方でなく、組織病の改革のための抜本的取り組みで指導力を発揮し、全組織に徹底が図れたと確認できた段階で、経営責任をとる形にすべきだと思う。

顧客に新たな満足と感動を与える品質経営が
重要と東レ元副社長の田中氏

 さて、大企業が直面する重度の組織病に関して、モノづくり製造業を中心に「品質ダントツ世界一」となる企業経営をめざせ、キーワードは高品質経営だ、と申し上げた。実は、この「品質ダントツ世界一」は、東レ元副社長でイノベーションオフィス田中代表の尊敬する友人、田中千秋さんが「よみがえれ 日本のモノづくり産業競争力」をテーマにした講演でアピールした言葉だ。私も共感する部分が多く、今回、使わせていただいた。

 田中さんは講演で「品質ダントツ世界一」になるための4ポイントを強調した。具体的には1)国の力はモノづくり産業の競争力に依存する、2)顧客に新たな感動と満足を与える「品質経営」がモノづくり産業の生きる道、3)製品の企画・設計段階からバリューチェーン全体での品質づくりが重要、4)(モノとネットをつなぐ)IOT活用による品質の高度化の積極的推進だ、という。

 私はこれに「高品質経営」を加えたい。田中さんの言葉を借りれば、「単なるスペック表の数字を守るだけの古い品質管理経営ではダメだ。顧客が感動して企業への信頼を強めるレベルの品質まで仕上げることで、日本のモノづくりの確固たる基盤が出来上がる。品質経営にこだわる日本はそこまで行くべきだ」ということに尽きる。企業経営トップは高品質経営を目指せば、日本企業の持つ潜在力も加わり世界をリードする企業になるだろう。

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