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時代刺激人-ジダイシゲキビト-経済ジャーナリストの辛口メッセージ

Vol.297

2017.10.31

「ダントツ経営」主張のコマツ坂根さんの経営ロジック、
決断力が企業リーダーに必要

 ここで、少しアングルを変えて、企業経営などを取材してきた経済ジャーナリストの立場で、企業の組織病をもう少し考えてみたい。何と言っても、企業のかじ取りをするリーダーによって企業の命運は決まる。その点で、いろいろな企業リーダーを見てきて、私が一押しするリーダーは「ダントツ経営」を主張し、大胆に経営危機乗り切りを図って世界で勝てる日本の製造業を実現したコマツ元社長・会長の坂根正弘さんだ。今回の大企業の組織病という重病を直すにはぴったりの企業経営者だ。

 坂根さんのすごさは、2001年にコマツの経営がどん底にあった時期に経営にかかわり、「多少コストが高くても売上高が伸びて企業成長すればコスト高は簡単に吸収できる」という高度成長経済時代の経営と決別、厳格なコスト管理を行って「大手術は1回限り」と事業の整理統合など大リストラに踏み切った。そして持ち前の生産技術の強さを武器に世界1位、2位企業をめざすと公言し、ライバル企業が追い付けないダントツ商品の開発を進め、見事にトップランクの企業にコマツを押し上げた。何度も話を聞いていても、ロジックがしっかりしていて決断力も早い。まさに危機の時代の企業リーダーだと思う。

ソニー役員OB辻野さん
「利益ねん出のためモノづくりのルール守らないのも問題」

 今回の大企業の組織病の問題で、ぜひご紹介したいのが、長年おつきあいして意気投合しているソニー役員OBで、グーグルジャパン元社長、現アレックス社長の友人、辻野晃一郎さんだ。辻野さんは「ソニー時代、製品を市場に出すためには常に事業責任者と品質責任者が職を賭した攻防を重ねた。ただ、同じころ、別の部署では品質管理が甘くなってきつつあることも聞いていた。魚は頭から腐る、とよく言われるが、企業リーダーが問題で、品質経営に厳しくこだわるかどうかがポイントだ」という。
「魚は頭から腐る」はご存知の方が多いと思うが、組織の腐敗はトップを含めた上層部のダメ経営から始まり、次第に魚の胴体から尻尾へとまん延していく、という意味だ。

 また辻野さんは、その点に関連して「インターネットやデジタルトランスフォーメーションの進展によって、経済価値の所在がモノからサービスやクラウドに移行し、それに伴いモノづくりの最優先課題がコストダウンになってしまった。しかも、利益ねん出のためにモノづくりのルールを守らなくなった」ことを問題視する。さらに、辻野さんは「もっと根深い問題は、日本の社会構造の根底にある、個人よりも組織が優先、国民よりも国家が優先といった戦前から続く全体主義的、国家主義的な価値観にも問題がある。企業組織を守る、ということが一種の言い訳になって、そのための不正や手抜きを正当化したり、あるいは組織の不正を隠蔽したりする体質が強まっていることも問題だ」という。なかなか鋭い指摘だ。

日本は企業主導で経済動く企業社会国家だけに、
組織病の根治が最重要だ

 今回の問題は、実に重いテーマだが、企業社会国家とも言えるほど、企業が主導で日本経済が成り立っている、と言っていい。そんな状況下で、大企業の組織病がまん延したりすれば、企業の信用失墜にとどまらず、日本の経済社会の組織病にまで広がりかねない。それほど企業の影響力は大きいだけに、何としても根っこから直す根治作業が必要だ。企業リーダーの責任は大きいが、時代の先を見据えて、新しい時代に対応する組織づくり、人づくりなども重要になる。その意味で、企業の経営者教育というのも重要になるかもしれない。いかがだろうか。

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