日本トップ=世界トップシェアでも「夢への挑戦」を!
第二、第三の矢とは?
ヤマシンフィルタ株式会社
代表取締役社長
山崎 敦彦
建設機械用油圧フィルタ一に選択と集中をしたことで、日本トップシェア、すなわち世界トップクラスのシェアを誇るヤマシンフィルタ株式会社。株価上昇率も注目のトップランナーは、トップゆえのリスクに目を配り、気を緩めない。そして、ぬかりない姿勢で臨む山崎敦彦(代表取締役社長)は、次なる成長へも確信をもつ。世界を変えるかもしれない、「ナノファイバー」で展開する、第二、第三の矢とは? 山崎代表が大切にする「夢への挑戦」の言葉、それを体現する「熱い挑戦と冷静なマネジメント」のストーリーをインタビュー。
優れた人材で強い組織を作り、顧客のニーズに応える。それが世界で羽ばたくヤマシンフィルタの原動力。
福井 さて、山崎社長のプロフィールを拝見いたしますと、大学卒業後、小松製作所に入社されていますよね。なぜこの小松製作所に入社されたのですか?
山崎 私は、大学の時には、紙を専門に勉強しまして、フィルタの濾紙については、ある程度基礎知識のところはできたと思うのですね。大学に入ったときには、もうヤマシンフィルタに行こうと思っていましたので。紙はわかった、でもフィルタを使う建設機械のなんたるかがまったく分からないということもあって、父が、「建機のなんたるかを勉強してこい」と、また同時に、「他人の飯を食ってこいよ」というこの2つの目的で小松さんにお世話になりました。
蟹瀬 今振り返られてどうですか? お父様の…
山崎 うちの父は、とても変わった人間でした。夢とか野望とかを持つとやっちゃうのですね。フィリピンに工場を出すときも、当時政情も不安定な状態で、本当にフィリピンで大丈夫なのかなというのが89年当時だったのですけれども、「とりあえず行ってやるべし」という意思決定をしたのは父でした。
蟹瀬 今のお話を伺っていると、お父様のそういうある種外から見ると破天荒だけれども経営者としての決断力、これはどのように評価されますか?
山崎 当時は、とても反発していまして…。
蟹瀬 今振り返ってみて…。
山崎 「何言ってんだ」と思うのですけど、亡くなった後から、これはなかなか立派な親父だったのだなというのを、改めて思うようになりましたね。
蟹瀬 これから、今この会社の社長をなさっていて、お父様のようにまた何か新しいことにチャレンジするとか、これからの方向というのはどんな感じでお考えなのですか?
山崎 実は今、ヤマシンフィルタには大きく2つの問題があります。1つは今、売上の90パーセントが建設機械業界なのですね。建機業界が良いときは良いのですけれども、これが落ちると必ずやはり業績も落ちると。
蟹瀬 いわゆる一本足打法になっているということですか?
山崎 はい。ですから柱をあと2つ、やっぱり3本の柱があって初めて安定する、3本の柱を作りたいというのが一番目ですね。2番目は、フィリピンが90パーセントの生産を担当しているのですね。フィリピンの工場に、もし何かあったときには、供給が止まるのですね。これも大きなリスクだと思っております。工場のほうは、中国にパートナーを見つけまして、そこに作ってもらうという契約を始めまして、中国に生産を一部分散しつつあります。それからアメリカのイリノイ州ですけれど、そこに新しい工場を作ります。フィリピンと中国とアメリカとで生産をやっていくという体制を取っていきたいと思います。それから営業については、建設機械用油圧フィルタ以外に新しい分野を、なんとしてもここ2,3年の間に作っていきたい。幸いここ2,3年は、建機の業界が、しばらく好景気が続くだろうと言われておりまして、昔のケネディ大統領が、「屋根を修理するなら晴れた日に限る」と。そのとおりに、幸い状況に恵まれているときにこそ、この将来のための布石を今やるべきだと思っています。
蟹瀬 ただ、その屋根を直すためには、当然お金がいりますよね。資金調達というのはどのように考えていらっしゃるのですか?
山崎 はい。第三者割当増資ということで、100億円の増資を出しました。この100億円のお金が今、キャッシュとして眠っています。これを使って、将来のための屋根直しを図っていきたいというのが、今の状況なのです。
こちらは、ヤマシンフィルタの開発拠点として濾材の研究や開発、さまざまなフィルタの試験分析などを行なっている横浜開発センタ。新たな事業を確立するために、現在どのような研究が行われているのか、担当者に話を聞いた。
尾下 横浜開発センタのほうでは、建設機械が弊社の売上の9割ということもありまして、建設機械のお客様向けの製品開発ということを主に行なっております。フィルタというものは、基本的にはゴミを取るということがいちばん重要なところにはなってくるのですけれども、そのフィルタでゴミを取るということだけではなく、実際そこに流れてくる油自身を長持ちさせるためにはどういうようなフィルタがあれば良いのかとか、どういう性能を持たせれば良いのかとか、次の付加価値をどのように提案していくかということを、今、基礎研究のほうで行なっているところですね。長い間、建設機械メーカーのお客様とお付き合いさせていただいていて、私ども開発のほうも一緒にお客様のほうに行きまして、現状使われている製品に対しての問題点だったり良いところだったりということをヒアリングさせてもらいます。それを次の次世代機の建設機械に活かしてもらうために、お客様の望む製品を作るということを一番に心がけております。お客様が100パーセントという部分を求めるのならば、やはり弊社があと20パーセント足したところを出せるような製品づくりというものを心がけております。
福井 またこちらにすごく綿のようなものが出てまいりましたけれども、こちらはなんですか?
山崎 これは、当社が将来をとても期待している、ナノファイバーという濾材であります。
蟹瀬 ほう、フワフワと、これは結構…。
山崎 分けていただくと、その繊維の細かさが分かるかと思います。
福井 綿あめみたい。
山崎 これを使って今後のビジネスを展開していきたいと考えております。
蟹瀬 これをどういうふうに使われるのですか? フィルタもあるのでしょうけど。
山崎 最初は、うちはフィルタメーカーですから、フィルタとして使います。これを濾材として今の油圧フィルタに使うと、ライフが3倍に延びる。3000時間とか5000時間使えるフィルタが、これによって実現可能になるのですね。まずこれを導入していきたいと思っています。その次に、建機油圧以外の柱を作りたい。こちらの分野にこれを投入して、やっていきたい。例えば、ビニールハウスがあって、そこの断熱材としても使えるだろうと。それから音をカットするのも特性としてありまして、さらに決して燃えないのですね。そういった点が評価されて、航空機の内装材とかこういったものにも良いのではないかということで、用途がとても広がっています。
蟹瀬 ものすごいこの先、いろいろな用途がある気がするね。
福井 本当にそうですね。
山崎 今、AIとかIoTとか情報産業がとても進歩していて、今、世の中があと5年10年したら世界が変わると言われているじゃないですか。同じように、フィルタの世界もこういう新素材によって次の時代はガラッと変わるということが言えるかもしれません。
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