海外の一線級で学んだから実現したい、日本モノづくりのDNAで世界標準へ
エイブリック株式会社
代表取締役社長 兼 CEO
石合 信正
時計作りで培った技術を活かした、高品質な「アナログ半導体」。デジタルの半導体は聞き慣れた言葉だが、「アナログ半導体」も、デジタル社会を支える一翼を担う。1937年創業、現在のセイコーインスツル株式会社を前身とする、株式会社エイブリックを牽引する代表取締役社長兼CEO・石合信正。GEのジャック・ウェルチにも学んだという、海外の一線級からカムバックして感じた、日本のモノづくりDNAに対する思いと未来とは?
石合海外で体当たりでやっていた仕事で少し自信がつきましたので、どうせだったら実力主義の外資系で勝負しようかなと思ったわけなんですね。自分で新聞の、バイエルの求人広告を見まして、応募したんです。
蟹瀬外資系に就職して、困ったこと、あるいは、ここが日本企業と違うなと気がつかれたことはどのあたりですか?
石合いくつかカルチャーショックを受けました。
まず、一点目はそれぞれの職種が専門性で出来上がっていますので、自分で自分のキャリアを見つけていかなければならないという厳しさがあったということ。二つ目は論理的な説明の仕方、結論を先に言って、あとで理由を言うということ。三つ目は絶対感情的になってはいけない、すべてデータを用いて、きちんと説明しなさいということ。そして、四つ目、これが一番苦手だったのですが、前に出て発言するということです。当時は私、非常に内向的だったものですから、非常に苦しい思いをしました。
蟹瀬アメリカなどでもそうですが、「会議で一言もしゃべらないなら、お前はそこにいないのと同じだ」というね、非常に評価が下がりますよね。
坪井どうやって、順応されていかれたのですか?
石合最初はとにかく目をつぶって前に出て、それから口を開くという……。ものすごい冷や汗の連続でございました(笑)
蟹瀬そして、今度はGE、ゼネラル・エレクトリックに転職されている。
石合はい。
蟹瀬伝説の経営者、ジャック・ウェルチの会社ですよね。Control your destiny、「自分の運命は自分で決めろ 」という……。
その中で、学んでこられたことはどんなことなのですか?
石合直接、いろいろ教えを得る機会がございまして、今でも鮮やかな思いがたくさんあるのですが、一つは、GEのビジネスリーダーの方々、それから道理も含めて、皆さん、パワーとパッション、熱意ですね、とにかく結果を出さないと生きていけないということ。
石合それから、GEの四半期は外の会社の数年分くらいのスピードの変化があったということ。それから、いろいろな世界一のビジネスに取り組む具体的な解決手法ですね。
坪井外資系といえば、蟹瀬さんもご経験があると思いますが、日本企業との違いはどう感じていましたか?
蟹瀬僕はジャーナリズムという全然違う世界かもしれないですけれども、はっきりしているのは非常に決断が速いということで、会議などは大体15分ぐらいでパパッと終わらせて、「これやって、あれやって、はい、行け!」みたいな……。それから、失敗を恐れないという精神ですね。これはGEでは……?
石合もう徹底されていますね。おかげさまで、覚えたというよりもやっているうちに身についた、肌に入った感じでございます。
石合はゼネラル・エレクトリックにおよそ10年在籍後、インベンシス・クライメイト・コントロール、アリスタライフサイエンス、キャボット・ジャパンで要職を歴任。そして、2016年、エスアイアイ・セミコンダクタ、現在のエイブリック代表取締役社長に就任する。
蟹瀬この7社目になって、日本企業に戻られていますよね。これは何か思うところがおありだったのですか?
石合はい。欧米系のいわゆるグローバル企業にトータルで30年以上勤めたのですが、実はその中で、たとえば、アジアパシフィックのヘッドクォーターが日本から中国やシンガポールへ移っていく。それで、全体的に日本の力の低下を何となく感じたんですね。
一方、身を置いていた欧米系のグローバル企業というのはすごいスピードで仕事のやり方を変えてどんどん進化していく。たぶん、そのやり方は日本でも通用する部分があるかもしれない。その部分をもって、日本の良いところは残しながら、新しい合理的なやり方だったり、グローバル化ということでなにか自分の身を刻んで培ってきた経験を役に立てないかなといった、ちょっとかっこいい言い方をすると「使命感」みたいなものを感じたのです。
蟹瀬へぇ……。でも、この二つをハイブリッドにするというのはなかなか難しいという気がするのですが、そんな中でこのエイブリックという会社を最初に見たときに、どういう印象を抱きましたか?
石合Small Smart Simpleという極めて明快な方向性があること、それから品質にこだわっているところ、これが日本の強さだと思います。二つ目は何といっても、現場力。三つ目は非常にまじめで誠実で潜在能力が高い、そして、柔軟性が高いということですね。
石合それからもう一つ、今はすでに売り上げの7割が海外なのですが、さらに進んだ一つのグローバル化、これを足していったときには、良いものを残していったうえでやり方を変えていくと、たぶん、結果が出てくるのではないかと思います。
坪井そういった製品や現場力、ヒトという高い技術力を今後、どのように活かしていこうとお考えですか?
石合これは新しい仕事の仕組み、これは外にいらっしゃる有能な方々の、あるいは技術力を借りて、一緒にパートナーシップを取って進めていきたいという部分があります。
蟹瀬いわゆる、自前主義ではなくて、外部のノウハウも入れていく?
石合はい。
石合技術的な一例として、今、立命館大学様とともに、水が漏れたときに検知するシステムを今、共同開発させていただいています。
出演者情報
企業情報
関連コンテンツ
カテゴリー別特集
リンク