新しい世界への感動と挑戦が原動力。心配性の国・日本に必要なのは文化だ


安藤忠雄(建築家) ×宮本亜門(演出家)

特選インタビュー

2017年には「安藤忠雄展-挑戦-」と題し、これまでの軌跡と未来への展望にせまる展覧会で、およそ30万人を動員。いまだ衰えぬ挑戦意欲をもつ建築家・安藤忠雄。そんな活躍に、常に憧れ、心の支えだったと語る、世界で活躍する演出家・宮本亜門。
今、建築界と演劇界の雄が唱えるもの、それは「文化の力」。そして、世界で活躍しているからこそ強い問題意識をもち、そして奇しくも同じ「心配性」だと感じたという国・日本。その行く末に必要なのは、楽しく、感動的で、振り切れた挑戦であるという。

学生による模型制作

安藤日本の国の学生たちは元気がないと言われているんですね。なぜなら、3年生になったら、就職ばかり考える。2年生はあまり模型を作ったことがない。はじめはできるかなって思っていたら、だんだん3か月くらい経ってできるようになってくると元気になってくるんです。6か月経って、6人の元気が良くなったんですよ。「すごい、あいつらいい」と。やっぱり責任を持って任せる。そして、やり通すことができる。やり通したら元気が出てくるんですよ。「あの子良いな」と。

宮本すごく面白いと思ったのは、学生たちが最初はやる気がないではなくて、なかなか、これってすごい今だと思うんです。つまり今って、ネットでも1秒以内に答えが出てきて、すぐに目の前にあるものだと信じやすい。しかし何か月も先にあるものだったり、まだ目に見えていないものはとても信じづらいじゃないですか。でも、1回体験したということは「そのあと、こうなるんだ」という初体験をするわけじゃないですか。

安藤若いころに1回、死に物狂いで物事をやってみないといけない。それで私、その模型ができて面白いなと思ったのは、 レベルが高いというよりも熱意を込めて作ったやつについては、向こうも熱意を持って見ますね。そういうふうにして挑戦してみたら、10万人来るのかなと思っていたら30万人来ました。よく来たな、と思いました。

竹内安藤さんの場合は挑戦の意欲、熱意はどこから生まれてくるのですか?

挑戦への意欲

安藤とにかく、面白いことをしようと。まだまだ挑戦というよりもやっていきたいと。一か八か、なんとかなると思っていますから。

竹内そうなのですね。宮本さんはいかがですか?

宮本挑戦をしようと思ってしたことがないんですよね。あらゆることを今、変化していくということを面白がって、そのなかで次に我々が行くのはどこか? って考えちゃうタイプなんですね。どんどん流行語を取りいれながらやっていったときに、自分たちの血も活性化していくと思うんですね。

原点、十字架のガラス

安藤「光の教会」(大阪府/1987年竣工)の十字架にガラスを入れたくなかったのですが、入っているんですよ、寒いから。「寒いからこそ、人がお互いに助け合うんじゃないか!」と言うたんですけど、えらい怒られまして、「何を考えてるんだ、安藤さん!」って。それで、行くたびに牧師が言うんですよ。「安藤さん、ガラスは取りませんよ」「まだ、何も言うてないやろ」って言うんです
けど。今度(展覧会)は1/1(1分の1)でガラスを入れないようにしよう。自分たちが考えた原点に戻ろう。なんでも原点に戻らないかん。原点に帰ったら、相手も原点に帰って見てくれる。それで、ちょっと手を抜くと、相手も手を抜いたように見る。

竹内宮本さんの原点といいますと?

宮本亜門の原点

宮本原点というと恥ずかしいんですけど、引きこもりなんですよ。引きこもりで1年間、部屋から出られなくて。ずっとレコードだけを聞いていた音楽がダァーと頭の中に広がってきて、このままいくとおかしくなっちゃうんじゃないかなと思って、とにかくこれを舞台演出家か、映画監督として表に出したいと思ったのが高校生のとき。学校へ行っている場合ではないと言ったこともあって。そこら辺からすべて、自分の世界を人に伝えるものっていう意味では伝えられるかどうか、結論は先に見えなくてもこれをやらないと自分ではないというところから走ってきました。

和魂洋才 ニッポンを演出する

竹内宮本さん、ニッポンを演出するというテーマで様々なジャンルの演出をしていらっしゃいますけれども、ニッポンを演出するというのはどういう……。

宮本本当に偉そうですよね、ごめんなさい(笑)。政治家にやっていただければいいんでしょうけど……。演出するというのは、やっぱり和魂洋才ではないですが、私はいろいろな国のいろいろな演劇やパフォーマンスのあり方とか、人に何の感動を伝えるか、方法論としてだいぶ勉強してきました。日本は今まですごいモノが受け継がれてきているけど、別にこれはある意味でわざわざ人に伝えなくてもいいとか、知る人が知ればいい、これも魅力的だと思います。
でもここで、たとえば、能だったら能の良さ、この根源の良さを少しでも知ると、「こんなに面白いのか」。たとえば、お茶にしても「こんなに、ここはこういう意味があるのか」。そういうものを一番最初、世阿弥にしてもそうだし、千利休にしてもそうだけど、ただただ誰にも見せたくなかったわけではなくて、心を伝えたくて始めたことならば、その思いを少し分かりやすく、少しひも解きをしながら、いろいろな形で日本の魅力をもっと広げたほうが、世界が幸せになると思います。大袈裟なことを言うと。

日本の魅力を広げると世界が幸せになる

宮本世界のいろいろな格差だとか、モノに見えるお金だけが中心だったり、成功した人だけが偉いのではなくて、違う考え方、違う思想がこの日本には十分あるので、それを良い形で今こそ出さないと、「いつまでも謙虚にしていたら、もったいないんじゃないですか」っていうくらいのことで日本に関わっていきたい。

竹内今のお話を聞いて、どうですか、安藤さん?

日本の芸術文化

安藤はじめから言うと、「能……辛気臭いな」って思ってしまうわけです。だけど、そこへ一歩入ってみたら、また違う世界、能の世界がある。それで、たとえば、文楽とか浮世絵とか、そういうものもまた面白い世界があるわけですけれども、日本の芸術文化というのは世界のなかでも大変珍しいものだと、私は思うんですよ。
日本は経済力、経済力って言うけど、経済力以外に日本人の知的レベルを上げてきたのは、そういう大衆文化のときからずっと上がってきたわけですから、それをもう一回、できれば子どものころから体験してほしいなと思います。

ジャポニスム2018

竹内日仏友好160周年を記念してパリで開催されている「ジャポニスム2018」にも参加されているということなのですが、これはどういった……。

宮本ジャポニスムそのものはもう半年くらい、あらゆるダンス、演劇、もちろん伊藤若冲(じゃくちゅう)の展示会も含めて、安藤さんも含めて、いろいろなものがダァーとパリを占領するかのように行われるという大変珍しい大規模な(日本文化の祭典です)。

竹内日本文化を何か月もかけて、パリで……すごいですね。

宮本北斎以降、ある意味、日本の本質的なモノや文化を一番先に喜んでくれたのはやはり、フランス人であることは事実だと思いますし、今度はまた違う第二波というか、今の違う日本の表現をいろいろ見てほしい。

竹内具体的にどういった取り組みを……。

宮本能楽師の方が実際いて、まったく同じように羽衣(はごろも)や石橋(しゃっきょう)で舞われるのですが、それを全部3Dで舞台は何もないんですよ。もう全部映像なんです。3Dなのですが能楽師の周りに全部、霧や水が舞ったり……。能というのはあの世の世界の話なんですね。あの世、幽玄の世界をどうやってテクノロジーを入れながら見せるか。

大阪での取り組み、安藤の構想

竹内安藤さんご自身のルーツである大阪でも、たくさんのお仕事をこれまでにもされていますけども、現在、何か大阪で取り組んでいることって……。

安藤日本人が本を読まないとか言うてますよね。新聞も読まない。なので、本を読む「こども絵本館」を作ろうと考えまして、大阪の中之島の真ん中に子どもの図書館というものを作っているんです。これは私だけじゃなくて、大阪の企業人、できたら日本中の人たちを巻き込みながら、絵本の図書館を、絵本を中心にした子どもの図書館を作りたいと思っています。

竹内では、子どもたちがそこに気軽に訪ねて、絵本に触れてという。

安藤そうですね。「安藤さん、図書館なんか来ますか?」僕もそう思ったんですけれども、やはり仕掛けが大事。考えたのはiPS細胞の山中先生とか、野依先生、ノーベル賞の人たち、小泉進次郎さんとか野口 健さんとか、いろいろな人たちが子どものころに読んだ本を取り上げよう。

宮本なるほど。

安藤ここは山中先生が読んだ本、ここは小泉進次郎さんが読んだ本、ここは……というようにしておけば、それだけでも見に来るでしょう。

竹内気になりますね。皆さん、どんな絵本を読んでいたのか。

安藤それで読むだけではまずいから、本を売ろうと。「あの番号のあの番号は買えますか?」って言ったら、申し込んだら買える。
大阪人は買えるだけでは買わない。「5パーセントマイナスですよ」って言ったら買う。だから、そういうふうに書いておこう(笑)それで、今のところ、全新聞社と本屋さん、全部参加しているんですよ。だから、これを全国に伝えていきながら、そのなかで演劇とか音楽とか、いろいろな分野のものがあればちょっと子どものときに体験するのとしないのでは違うと思うんですよ。

竹内建物自体もこだわりとか思いが込められていますか?

安藤そうですね。できるだけ、どこでも本を読めるように。たとえば公園でも読める、川辺でも読める。本はどこへ持って行ってもいい。それで今、子どものころの本が欲しいという話をしたら、大体要らない人がたくさんいるわけです。それを今、集めているのですが、たぶん集まり過ぎるんです。集まってきたら、今度、子どもで本を読みたいけれども、本がない人に差し上げる。循環させようと考えていまして、今のところは難しかったけども、何とか進んでいます。来年にはできると思います。

竹内そうなのですね。地元での取り組みもしていらっしゃるのですね。

企業情報

  • 安藤忠雄(建築家) ×宮本亜門(演出家)
  • 放送日 2018.06.24

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