国民病「アレルギー」をコントロール。患者と医師が踏み出すべき第一歩


一般社団法人 日本アレルギー学会
理事長
東田 有智

特選インタビュー

アレルギーは国民の2人に1人が持っているといわれている。しかし、アレルギーの正しい知識と経験を持つ医療従事者は非常に少ないのが実情だ。一般社団法人 日本アレルギー学会は日本のアレルギーに対する正しい知識と治療を広めるため、アレルギーのエキスパートを育てるための活動を行っている。理事長 東田有智が語るアレルギーとの付き合い方、これからのアレルギー治療の未来とは。

こちらは大阪府大阪狭山市にある近畿大学医学部付属病院。東田が院長を務めるこちらの病院は大阪府アレルギー疾患医療拠点病院に認定されており、呼吸器とアレルギーの専門医が治療にあたっている。特に深夜に発症することの多い喘息発作に対しては、24時間の診療体制を導入し、万全を期した診療対策をとっている。
こちらの患者は猫・ダニアレルギーによって、幼少期からアトピー性皮膚炎を発症。現在は最新の薬を使って皮膚を攻撃してしまう免疫を抑制する治療を行っており、症状にかなりの改善が見られたという。
こちらの患者は17年間ぜんそくに悩まされており、2年前から近畿大学医学部附属病院で治療を受けているという。

患者今でしたら寒暖差があったりですとか、PM2.5が飛んだりとか、ホコリとかちょっと吸うと喘息発作か起きてしまう状態で、もともとは違う病院で通っていました。だんだんお薬が効かなくなってきて症状が悪化してくる感じで、ちょっと打つ手がないなっていうときに、東田先生が日本に取り入れられたBT治療(気管支サーモプラスティ)という気管支の治療が近大でやっているっていうのを主治医の先生が調べてくださいました。そこで紹介状を書いてくださったのがきっかけで近大代にお世話になることになりました。

気道の治療を終え、現在はその日の体調に合わせ、量を調整しながらステロイドを使用。また、それに合わせて気道を攻撃する細胞の働きを抑える投薬を行っており、喘息の症状は徐々に快方に向かっているという。
こうした治療を受けられるのは豊富な知識と経験を持った呼吸器とアレルギーの専門医がいる病院に限られるため、1日も早い専門医の育成と治療に対する正しい知識の普及が急務となっている。

患者そうですね、診察でお話しても納得いくように説明してくださいますし、すごく知識が豊かですので、いろいろな方向でお話をしてくださるので、頼りがいがあってこれからもお世話になりたいと思っています。

正しい治療を受けている患者数

坪井こうした正しい治療というのを受けている方というのはどのくらいいるんでしょうか?

東田これはね、難しいんですけれども喘息の患者さん一つを取ると、だいたい、潜在的な患者数は約1,000万人とも言われているんですね。しかし、現在その治療を不定期でも受けている人はだいたい300万人弱。

宮川そんなに少ないんですね。

東田その300万人の患者さんが全部きちっとうまく治療されているかというと、そうじゃないんですよね。適切な治療を受けられているのはそのうちのだいたい2割ぐらいじゃないでしょうか。2割ぐらいの人がうまくコントロールされている。あとの8割、何か症状を少しでも出している可能性がある。そういうのが今の日本の現状ですね。

治療格差

坪井私個人に置き換えても、やっぱりどこに行けば、良いのかっていうのも分からないです。

東田分からないですよね?どうしても東京、大阪にはドクターの数も多いのでアレルギーの専門医もたくさんいます。地方だとそういう専門医がいない。専門施設もない。アレルギーって内科、小児科、耳鼻科、皮膚科、眼科があります。アレルギー患者は国民に2人に1人、対して(専門医は)現在3,600名ぐらいじゃないですかね。
例えば消化器科は、専門医は1万7,000人ぐらいはず。循環器科は1万2,000人ほどいる。それ考えると(アレルギー専門医は)非常に少ない。となると、どうしても都会と格差が出てしまう。情報の社会といえども情報が入りにくい、それは大きな問題ですね。

宮川本当にそういうことでやっぱり情報共有を何とかして欲しいなって患者側からは思うんですけどもね。

東田こういう患者がこれだけいて医師、医療職のアレルギーに関わる人がこれだけ少ない。これでは追いつかないですね。そこでやっと国が重い腰を上げたということです。だから、平成27年に「アレルギー疾患対策基本法」というのが施行されました。これはやはり今のアレルギー専門医の少なさ、ナースも含めたアレルギー医療職、医療関係者が少ない。
これを増やして均てん化(誰もが等しく利益を受けられる状態)を図らないと、いつでもどこでも同じ治療が受けられないと国民にとってこんな損失はないわけです。
最終的にはアレルギーというこの疾患の病態解明をしないといけない。それには研究をやっていかないとだめなんです。そこにはそれだけのコストがかかるわけです。そういうコストも出してください(と言ったら)そこで国も動いてくれて、その分を出しましょうと、いうところにようやく来たということです。

宮川ずいぶん時間かかったんですねぇ。

東田かかったんですよ!

2015年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」の理念は大きく分けて4つ。アレルギー疾患の重症化の予防および症状の軽減を行い、生活の改善を図る。居住する地域にかかわらず等しく適切な治療を受けられるようにする。アレルギー疾患に関する適切な情報を入手できる体制を整備する。アレルギー疾患に関する学術的な研究を推進する。この法律の施行によって、アレルギー患者を取り巻く状況は、今後大きく変わっていくという。

使命

坪井その法律が施行されて、日本アレルギー学会としては何か具体的に取り組みをされているのでしょうか?

東田特に均てん化を図らないといけない。ということは専門医を増やさないといけない。専門医だけではなくて、看護師・栄養士、要するに「アレルギーインストラクター」という資格を作らないといけない。そういう人を増やさないといけない。
それには、今の中央だけでやっていたら駄目なんです。地区で動けるようにしないといけない。だから、支部を作ることが決まりました。支部を作ればそこで活動できるわけです。そこにもアレルギー学会からコストを出して医療職の育成をやってくださいと。
患者さんには市民公開講座で知識を広めていこう。今の治療はこうなんですよっていうことをちゃんと知ってもらう。ステロイドはいろんな種類がある。副作用の問題もそうなんです。過剰投与するわけではないので、ちゃんとやれば安全なんですよ。きちっとやれば良くなるんですよ。今より良い生活ができる、これは間違いないんですね。それをもっと知っていただきたい。

誰もがなり得る疾患について、正しい知識と最善の治療法を提供し続ける。それが日本がアレルギー学会の歩み続ける道。

出演者情報

  • 東田 有智
  • 1953年
  • 大阪府
  • 近畿大学

企業情報

  • 一般社団法人 日本アレルギー学会
  • 放送日 2018.08.05
  • 業種 
  • 医療関連
  • 所在地住所
  • 東京都台東区上野1-13-3 MYビル4階

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