科学技術の力で世界に貢献する。「未来都市」が担う使命と行政の役割
つくば市
市長
五十嵐 立青
茨城県つくば市は政府によって研究学園都市として、持続可能な開発というプロジェクトのもと数々の新しい施策を打ち出している。市長である五十嵐立青は、26歳から市議として、38歳からは市長としてつくば市の運営に携わっている生粋の政治家だ。五十嵐は旧態依然とした役所、政治家の役割は終わりを迎えようとしていると考え、全く新しい市民との関わり方や施策を次々とを打ち出している。五十嵐が唱える世界中の街の問題を解決するモデルケースとしての考え方とは?つくば市の先進的なまち作りの可能性に迫る。
五十嵐 今、第3のステージという話を申し上げましたけれども、お話の内容って実は全部国がやってきてくれたことなんですね。都市のインフラを国が2.6兆円もかけて、実は作ってきてくれた。それは非常に大きなアドバンテージですけれども、逆に言えばまだ材料として揃ったというだけなんですね。
ですから、実はこれからが第4ステージ、本当の意味で大事な「まち作り」の段階だと思っていまして、そこを市が積極的に動くことで、この世界でも有数な都市のアドバンテージを活かして飛躍的に発展させていきたいと、逆に言えば、今までこの持っているポテンシャルがポテンシャルのまま眠っていたと。
つくばってすごいよねとか、これから期待できるよね、と言われ続けて早30年。気付いたら大物ルーキーが、いつの間にかベテランで引退するようになっちゃったような。そんなタイミングだと思っていますので、これを形にしていくのが私の仕事だと思っています。
蟹瀬 企業でいうと第二創業期みたいなところに入っている、という感じがしますよね?
五十嵐 はい、おっしゃる通りですね。ですから、今までの延長だけでは駄目なので、やはり次のステージに戦略的に進んでいかなくちゃいけないというふうに思っています。
市長に就任した五十嵐は、研究学園都市として、つくば市が向かうべき方向性を「世界のあしたが見えるまち」というスローガンで示した。
五十嵐 研究学園都市の使命というのは一体何なんだろうと、なぜ国がわざわざ、このつくば市という街を作ろうとしたのかということを考えると、私はつくばの使命というのは、人類に貢献することだと思ってるんですね。
科学技術を使って、市民を幸せにして人類に貢献して、そのモデルを作っていくということだと思っていますので、それがやはりつくばを見れば、自分たちの街のヒントがあるよと、解決の糸口見えるんだよ、と言われるような街になりたいという思いを込めて、この「世界のあしたが見えるまち」というビジョンを掲げています。
政治家の約束というのは、どうせ選挙の時だけだろう、と誰も信用してないわけですけれども、そういうことしてるから政治が信頼を失うわけでありますので、これをロードマップという形でですね、いつ何をやるんだというのを全て示して、1年ごとに今ここまで出来ました。これは出来ません。やってみてこれはちょっと難しかったから、こういうふうに変えます。ということをずっと公開をし続けています。
蟹瀬 マニフェストと考え方と全くぴったり合ってるわけですよね。言いっぱなしじゃなくて、それ大事ですよね。
五十嵐 そうですね。そこで評価を本来されるべきでありますので、政治家が選挙のときになんか曖昧な言葉でですね、「子育て支援がんばりまーす!」それは誰にでも言える話で、具体的に何をして、それをどういう方法で実現するんだっていうことを示すことが、非常に重要だと私は思っています。
五十嵐の示したロードマップは、「行政改革」「子育て」「福士」「インフラ」「地域の活性化」そして「誇れるまち作り」という6分野に分類され、各分野の項目を合計すると、82項目になるという。
坪井 82って結構な数だなと思うんですけれども、市長としては達成度といいますか、今どれくらいなんでしょうか?
五十嵐 未着手の事業というのは、ゼロなんですね。進捗を「S=もう終わったもの」とABCと、まぁCは「遅れ」ですけれども、遅れている事業が大体1割ぐらいでして、あとはですね、おおよそ順調に今のところ進んでいます。
坪井 へえ。
五十嵐 ただ、31年度が色々重要になってくる年の計画を作っていますので、ここでどういうふうに着実に進められるかによって、ちょっと遅れが増えてしまわないようにですね、着々とやっていきたいと思ってます。
蟹瀬 行政の長って、改革をやりたいっていうときになると、そこで働いている職員の方々との間で、何らかの溝みたいのが出来てくる。このあたりはどうだったんですか?
五十嵐 役所に対して、おそらく人によってイメージとさまざま違うと思うんですけれども、つくば市役所の職員に限って言えばですね、極めて優秀で、しかも真面目なんですね。もちろん市長が変わる組長が変わるというのは、多かれ少なかれですね。戸惑いもあるし、不安もあると思うんですけれども、職員は私が就任した時も、本当に「どういう考えを持ってるんだろう」っていうことをすごく聞いてくれましたし、職員はただ忠実にですね、やはり自分たちのトップが考えていることを、どうやって実現しようかというのを考えてくれているんですね。
だから、彼らは当然仲間でありますし、もちろん厳しい事も私も言いますし、実力主義に変えていきましたので、それにはすごく不満、抵抗ありましたけれども、でも、ほとんどのやる気ある職員たちから、むしろその動きは歓迎されましたね。例えば、先ほどのロードマップを作るときもですね、かなり直接やりとりをして、これはどういうふうに市長が考えて出したんだと、僕はこういう考えで出しました。それに対して何度も何度もやりとりをして、ロードマップを作っていくというような過程を通じて、少しずつ職員とのですね、こう認識を合わせていくという作業にかなり時間を使いましたね。
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