「凡事徹底」できる企業が生き残る。世界と戦う分析・計測機器メーカーの経営戦略


株式会社堀場製作所
代表取締役会長兼グループCEO
堀場 厚

特選インタビュー

株式会社堀場製作所は京都に拠点を置く分析・計測機器メーカーだ。元は小さな一軒家からスタートした会社だが、今では国内外の企業を傘下に収めるグループ企業へと発展、その事業は自動車、環境、医用、半導体、科学分野など多岐に渡る。代表取締役会長兼グループCEO 堀場厚は経営の舵を繊細かつ大胆に切ることで、厳しい世界経済の中でも常に前進してきた。堀場が語る世界と渡り合うために必要なもの、日本の企業に欠けているものとは?

自動車事業

現在、堀場製作所では、自動車事業に力を入れているという。そこには一体どのような狙いがあるのだろうか?

堀場 自動車産業は今、ドラスティックに変革してるんですね。非常に開発スピードのピッチが上がりだした。

松尾 はぁ、そうですか!

堀場 自動車産業っていうのは比較的安全とか、いろんな問題があってゆっくり動いてたんですよね。それが急速なスピードで変革してるんですね。これからほとんどの産業を巻き込んでいくような産業になっていくと思いますね。ですから半導体産業、あるいはデータの産業、それからも極論すれば医学の世界も巻き込んでいくような、巨大産業になっていくと思いますね。

松尾 医学にも!?

堀場 はい。やはり車の中の環境、あるいはいろんな医学的な知識の必要な製品が車の中に絡んでくると思いますね。特に電動化に移ってきてますから、単にガスでは強かったんですけど、電動化で強い会社がいくつもあるので、そことグローバルに対抗していかないといけない。
それにまた、3年前に買収したMIRA(マイラ)というイギリスの会社が電動化、あるいは自動運転、バッテリーマネジメントという新しい自動車産業のニーズの技術をもって、我々のとこに来てくれたんですね。
昨年はドイツのFuelCon(フューエルコン)という燃料電池の会社ですけど、そこも我々の傘下に来てくれたんですね。堀場は一挙に排気ガスの会社から、自動車全体の産業の将来を支える技術力を持った会社に変身しちゃったんです。

人材育成

松尾 へぇ…そうなってくると、益々この優秀な人材だったり、研究施設っていうのも必要になってきますよね?

堀場 そうですね。そういう面ではいかに自前で優秀な人材を抱えているか、育て上げているかが勝負なんですが、我々幸か不幸か、その他のジャンルの部隊も持ってるわけですね。ですから、これがどういう方を指すかが、社内的なチャレンジだと思いますね。
これにはやはり6ヶ月に1回、海外から幹部を必ず集めてるんですね。3日間、研修所で語りあって、コミットして散っていくわけですね。6ヶ月たったらまたいろんな成果を持って帰ってくる。3日間といいますけど、海外から来ると結局1週間拘束されるわけですね。6ヶ月のうちの1週間、経費もすごいんですよね。
でも、この投資は私は無駄でないと。Face To Faceで必ず喋るわけですね。むしろFace To Faceでやるのをすごい楽しみにしてますね。

HORIBA BIWAKO E-HARBOR

堀場製作所では、2016年、開発力の強化を目指し、滋賀県大津市に新たな工場、HORIBA BIWAKO E-HARBOR(堀場琵琶湖イーハーバー)を建設。この新工場建設には、堀場のある意図があったという。

堀場 いわゆる、私の歳ぐらいの団塊の世代がくみ上げてきた技術がほとんどなんですね。ただそれが若い人たちに、必ずしも伝承されてないっていうのを気づきましてね。これどうするかなんですけども、じゃあ、入れ物全部をサラ(一新)にしよう。だから製造装置も全部サラにする。そうすると、絶対問題が起こるんです。わかりやすく言うと、例えばパンを焼くオーブンがありますね?

松尾 はい。

堀場 パンが焼けるんですよ。綺麗にね。でも、このオープンはどうやって設計して、どのように温度をコントロールしてるかを、パン焼いてる人知らないんですよね。

松尾 確かに。

堀場 オーブンの設計はできるかっていうと、できないんです。ここはまさしくオーブンの設計しないと新しいものが作れない。それを分かっている人たちが、まだ残ってるっていうことですよね。OBがやはり若い人たちに伝承する。これ、技術の遷宮という。

松尾 技術の遷宮?

堀場 はい。神社が20年に一度建てかえたりしていきますよね?まさしく、宮大工さんに技術を伝承していくわけですね。でも、マニュアルでは伝承できない。物を作らないと伝承できないんですよ。それと同じことをここにやったんですね。もう一つは、日本で工場を建てて、強い工場を作ろうと思ったんですね。日本と海外で唯一違うことは、やっぱり協力会社。
日本の製造の強みは協力会社なんです。我々じゃないんですよ。ですから、その協力会社をここに集めて、対応しようというのは、我々と協力会社のロジスティックが行ったり来たりしてるんですね。そのロジスティックが多いのと、中間在庫が非常に増える。じゃあ集めれば、ロジスティックがゼロになりますから、当然、リードタイム縮まりますよね?

松尾 そうですね。

堀場 途中の中間在庫が減りますから、生産性も全部上がるわけです。単純なんですけどこれしようと思うと大変なんですよね。協力会社との信頼感がないと。これも創業者が作った協力会社との良い関係というのを、我々一応構築できてたんでこの工場ができた。それからこの工場決心したのは、1ドル89円のとき決心したんです。殿ご乱心の工場なんですけど、完成したときに1ドル110円でした。

松尾 ずいぶん変わってしまいました。

堀場 はい、5年かかるんですよ、構想から工場が本格稼働するまでに。ですから、今景気いいから工場を作ろうなんていうのはもう手遅れなんですよね。景気悪いから工場を作ろうというと、タイミングがいいんですよね。

松尾 なるほど…。

堀場 簡単でしょう?そうすりゃ良いんですけど、できない。

松尾 そうですよねぇ。

堀場 当たり前の事ができないのが経営なんですよ。

こちらのHORIBA BIWAKO E-HARBORには、堀場の経験から生まれた、あるアイディアが取り入れられているという。

堀場 10階建てなんですけど、一番いい場所にこの琵琶湖の見える、クルーザーを意識した階段が作ってあるんですね。

松尾 普通、オフィスの階段といいますと、非常階段(ですよね?)

堀場 非常階段でしょう?暗い感じでしょう?本来はオフィスを作らないといけないところに、それもかなりのスペースを使って階段。これはね、各フロアのコミュニケーションよくしようと。私の経験なんですけれども、本社でちょっと足を怪我したこともあって、階段を使って鍛えようと思った。
普段会わない人に階段で会うんですよね。どうしたんだとか、いろんなことが聞けてね。エレベーターだと何か知らないですけど、ドアは開くんですけど誰も乗ってこないんです。

松尾 会長ですからね!

堀場 でも階段だと逃げようがないから、その時は「あ、大切だな」と。この情報交換は。

松尾 確かに、少し立ち止まって踊り場なんかでお話もできたりしますよね?

堀場 椅子を横に作ったりしてね。ですから、その階段というのはコミュニケーション、いわゆる10階建ての工場であっても、各フロアの断絶を無くすために、カフェテリアが一番上ですから、いやでも10階まで上がらないと、階段使わないといけませんから。ですから、このコミュニケーションができるということで、階段を設計してもらった。まんまと成功しました。

松尾 そうですかぁ。

堀場 エレベーターを使ってるの私ぐらいだと思います。

松尾 あはははは。

堀場 ははは。

松尾 あとはレイアウトの面ですとか、工夫なさったところもあるんですか?

堀場 そうですね。これは私の提案ではなかったんですけども。大体この工場を建てるのに3回ぐらい「もうやめよう」って言ったことあるんです。気持ちがこもっていない。

松尾 気持ちがこもってないとはどなたの?

堀場 いわゆる設計事務所から設計されてきたようなものを、私の前でプレゼンテーションして、すぐ分かるじゃないですか。いやもうやめようと。自分たちのものっていう熱意とか、意識とかオリジナリティがない。3回ぐらい部屋出ていきました。

松尾 そうですか。

堀場 3回目に提案してきた中の一つに、工場長とか管理職は一つのところに集めて、コミュニケーションを良くしようということで、提案されてました。確かに開発とか、設計とか工場の管理者が一緒にいると。例えば問題が起こったと報告したときに、後ろで開発の責任者がそれを聞いてて、「こう対応しましょう」って即断できるわけですね。
後ろ振り向いたらいるわけですから。だから、今までだとわざわざ開発棟、それから生産棟と別れてて会議をいついつしましょうというのが、その場でできるようになったんです。

松尾 また、部下の方もあっちの偉い人、こっちの偉い人のところっていく心労もなくなりますよね?

堀場 なくなりますね。集めてありますから。

松尾 そこで問題解決ができると。

堀場 そうですね。これはすごく見習うべきだっていう、他の日本の会社のトップも来られて、「これはぜひやりたい」って言ってくれました。やはり、工場っていうと何かコストコストだけを追求しますけど。やっぱり、そこが夢のある場所で働く場所。私は贅沢はいけない、華美に走るのはいけないと思うんですけど、プレミアムでないといけない。世界に誇る一流の製品って言ってるのに工場が汚かったら、あるいは何かそこがみすぼらしいとなんとなく嫌な感じしますよね。だからそれを意識しましたね。でも贅沢はいけないと、一番困るのはユーザーさんが「こんな工場を建てるから堀場の製品高いんだろう。」って言われるのは困るんです。「こんな工場で作ってるから、良い、プレミアムな堀場の製品なんだね」って言われたら成功だ。この微妙なところをどう攻めるかが我々の勝負ですよね。

当たり前のことを当たり前に経営することで、社員一人ひとりが自覚を持って行動することができる。それが、一丸となって世界一を目指すホリバリアン。

出演者情報

  • 堀場 厚
  • 1948年
  • 京都府
  • カリフォルニア大学

企業情報

  • 株式会社堀場製作所
  • 放送日 2019.03.18
  • 業種 
  • 電気機器
  • 所在地住所
  • 京都市南区吉祥院宮の東町2
  • 資本金
  • 120億1千1百万円
  • 売上高
  • 2,105億7千万円(連結) ※2018年度
  • 従業員
  • 7,943名(グループ) ※2018年12月31日現在

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