日々の積み重ねが、企業を危機から救い、成長へと導く。
古賀オール株式会社
代表取締役社長
古畑 勝茂
放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(古賀オール株式会社 代表取締役社長 古畑 勝茂:賢者の選択ご出演 2010年9月放送)
独立系の鉄鋼専門商社として、鋼板を様々な産業に向けて安定的な供給を続けてきた古賀オール株式会社。番組放送以降、同社にとって最大のできごとは、東日本大震災だった。
「いろいろな意味で勉強ができました。当時はまだ製鉄大手の再編前でした。メイン仕入れ先の茨城県鹿嶋市にある製鉄所が津波の被害を受けて、まったく作ることができなくなったのです。3月の震災から、少なくとも6月までは製鉄所稼働のメドが立たず、それ以降もどれくらい供給できるか分からないという状況でした」
同社は製鉄所からの仕入れが滞ってしまったのだ。さらに状況は悪化する。
「宮城県白石市にある当社の工場も大きな揺れでクレーンのレールをとめるボルトが曲がったり、折れたりして稼働できなくなりました。東京工場も液状化で周辺の舗装も修復が必要な状態でした。東京工場の耐震性を速やかにチェックし、修復工事に当たりました」
業界内には、同社は鉄鋼を仕入れられない状況にあり、発注しても納品できないという噂が流れたのだという。
「当社は早急に他社から仕入れなければならなくなったのです。当時、既に製鉄会社大手の合併が発表されていましたから、大半は合併する製鉄会社からの供給を取り付けました。さらにメインではないものの、従来から取引のあった国内の製鉄会社数社に事情を話すと、こころよく『応援しましょう』と融通してくれたのです。また、韓国の製鉄会社にも打診しましたら、緊急に鉄鋼の供給を約束してくれただけでなくお困りでしょうと、当時不足していた乾電池を大量に送ってもらいました」
感謝の意を伝えるとともに、改めて心に刻んだことがあるのだという。
「取引の量に関わらず、いかにふだんから取引したい会社だと思っていただけるような、お互いに気持ちのよい取引をしていたかが問われているのだと、身にしみました」
壊れたボルトの代替品もボルトメーカーが休日返上で製作してくれたという。
「自分たちはいかに多くの方々に支えていただいて、事業ができているのか痛感しました。しかし、苦難はまだ続くのです。多くの取引先からサプライチェーンの寸断により、稼働できないので納入を中止して欲しいという連絡が相次いだのです」
同社の売上は6割にまで落ち込んだという。これはリーマンショック時に匹敵する状況だ。
「天は乗り越えられない試練は与えないという言葉を思い出し、なんとか乗り越えることができたのです。何ごともあきらめてはいけません」
現在は落ち込んだ売上も回復し、堅調に推移。今後順調に伸びていく傾向がみられるという。同社はたとえ不況下にあっても、積極的な設備投資を行い、最新設備で顧客の要望に応えてきた。
「よい製品をお客様にお届けするためには、最新の優れた設備が必要なのです。さらに優れた社員も大切です。よい会社にはよい社員がいます。よい社員がいるからといって、必ずしもそれがよい会社かどうかは分かりませんが、優れた社員がいなければよい会社にはなれません。そこで当社は社員教育に力を入れています。また、教育だけでなく社員の意見を吸い上げることも必要です。トップダウンばかりでなく、ボトムアップが企業をのばすのです」
企業の進化にゴールはない。日々の積み重ねが取引先からの信頼を得て成長につながるのだという。
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