地球は一つ。人類が生きるために求められるこれからのリーダー像とは
後編
安藤忠雄(建築家) ×澤田秀雄(H.I.S.)
地球の人口は近年加速度的に増加している。それにともない、食料やエネルギー問題はより深刻になってきている。人類が平和に発展を遂げるためにはこの2つの問題はかならず解決しなくてはいけない至上命題だ。今回も前回に引き続き、世界を知る建築家 安藤忠雄と株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長CEO 澤田秀雄を招き、これからの企業の考え方、理想のリーダー像を語ってもらった。二人が言葉から伝わる「グローバルな見方、考え方」が必見だ。
旅行業であるエイチ・アイ・エスが、なぜ次世代太陽光パネルを開発するのか。その理由はエイチ・アイ・エスのグループ企業理念にあるという。
澤田 我々、旅行業をやってますので、うちのポリシーは自然の摂理にのっとり、世界の平和に貢献する、というのがうちのポリシーにあるんですね。僕は食料、食べ物がきちっと与えられると紛争は減ると思うんですよ。その次に、僕はエネルギーだと思うんですよ。エネルギーがきちっと供給されると、石油も石炭もエネルギーですよね。
取り合いなったりするわけですから、石油の持ってる国を取ろうとかですね、これが潤沢に世界に提供されれば、僕は、紛争はなくなってきて平和になるんじゃないかということで、我々が力入れているのはエネルギー関係、食料関係…。
安藤は、今後はエイチ・アイ・エスのように、営利追求だけではない、企業経営の考え方が重要だという。
安藤 私はロック・フィールドという会社の工場を、あちこちやってるんですが、そこは風車回して、太陽エネルギーやって、一番いいのはそこで働いている人たちが、一番良い場所で食事をすると。
唐橋 はい。
安藤 快適に食事して子供を預かって、というのがあると、この会社は考え方がしっかりしてると思って働きに来る人がいっぱいいるわけや。そうしないと、この会社はお金が高いから働くというのもありますけれども、もう一つはやっぱりこの会社は考え方がしっかりしてるなと、いうことを選べるような日本人にならないかんと思います。
安藤と澤田は日本の未来を鑑みたとき、この国には未来を見据えたリーダーが必要だという。
二人が唱える、今、日本に必要なリーダーとは?
安藤 リーダーは構想力と持続力で達成させないけませんから、やっぱり構想力。構想力、日本人は下手やね。構想力には責任がいりますから。責任はやっぱりそれをやり遂げるという意思が要りますから。下手なもんばっかりですね。
これがなかったら、なかなかリーダーには難しい。で、澤田さんは自分で今会社をしていて、かつ、もっと大きな世界を作ろうと思って外国行っておられるわけでしょう。そういう意味では、構想力あっていいじゃないですか。
唐橋 どうですか?
澤田 リーダーは3年、5年後をきちっと目標というか夢を語れるという人とですね。あと、やっぱりリーダーは人を育てると。もし、企業を大きくするんだったらですけどね。が大切かなと思います。あとはよく言われてる志ですかね。世の中のためになる志がきちっとしてると、この三つが大切じゃないですかね。
安藤 だから、ぜひ澤田さんのような方が大阪の構想会議やってもらわないと、お役人がやってたんでは面白い構想力は出ないと思うわ。私は大阪万博するいうのが澤田さんのように外部も分かっている、大阪も分かっている、構想力もある人に、何も建築作るのが万博作るわけやないからね。構想力が勝負だから、澤田さんのような方が発言してもらわなあかん。
2025年に開催が決まった2025大阪関西万博。この万博開催に向けて、最初から提唱してきたのが堺屋太一。
安藤 もともと万博言い出したのは堺屋さんですよ。4年ぐらい前に万博やるぞ!と言い出したんですよ。で、私に「一緒にやろう!」という。いやもう堺屋さん万博の時代違いますよ、と私は言うたんですよ。「いや、やろう!」言うとった。私は、「ちょっと」と思うたんだけども、もともと堺屋さんが言い出したんですよ。
唐橋 堺屋さんはどんなリーダーでしたか?
澤田 大阪のことをすごい考えておられたんじゃないですかね。ぜひ、次の万博を協力的にやられたかったんじゃないですかね。
(2013年12月放送より)
堺屋 子供のころから、想像力、何かを空想することが大好きだったんですね。それで、博覧会を好きでして博覧会は開いてすぐ消えるから、聖なる一回性が素晴らしいんですね。後に巨大なものを残しますから。都市開発、文化開発というのは数十年影響を与える、これが面白いところですね。
通産省入りまして、5年目でしたけど、ある日、万国博覧会という言葉を聞いたときにゾクゾクっとして、これはぜひやってやろうと。それも大阪で、一極集中、オリンピックの10倍以上の規模がありますから、これを大阪で開こうといったときには皆さん、夢物語、横暴だと言われたんですよ。
1970年。およそ半年にわたって開催されたアジア初の国際博覧会。堺屋はプロデューサーとして万博の成功に大きく寄与。その後も枠にはまらない大胆な発想で、周囲を魅了し続けたという。
安藤 とんでもないこと言うてた。1000メーターのプール。等がどうとか
澤田 道頓堀に作ろうと言われたんですよ。道頓堀にプールを作ろうと。結構僕らも説得されましたね。
安藤 大丈夫かなこの人いうて。1000メーターのプール。その1000メーターあれば、1メーターで1人ずつ1000人同時に、50メーターを泳げる言われた。
澤田 そうそう、道頓堀でね。
安藤 道頓堀で。面白い。
澤田 すごい面白い発想されますよ、堺屋さん。
(2013年12月放送より)
堺屋 道頓堀という堀川がございますけれども、この道頓堀を長さ800メーターのプールにしようと。道頓堀のプールなんて話をね、デーン!と出すことで、やれるんだと、日本というのはとんでもないことをやれる国だということを示したいんですよ。
安藤 こないだ堺屋太一さんの弔事やってくれと言われて話を考えてみたら、堺屋さんはものすごい大きな壁を作って、その壁乗り越えたらまた新しい壁が来て、また乗り越えたら面白いことが起こって、それを見た人が自分も何か新しいことに挑戦したいと思うように。面白いことを発想したら反対が来ると、反対が来たらまた説得せないかんと。そしたら、また大きなアイディアになって行くから、反対にあるようなものを登場させないかん言ってましたよ。残念ですよ。
澤田 亡くなられてね。
安藤 構想力は満点だったからね。
唐橋 「団塊の世代」というね、言葉も残されていたもんね。何か堺屋さんは時代を俯瞰して見られてたようなところがありますね。
安藤 そうそう、よく考えてましたよ。平成30年(という本)もね、20数年前に書いたやつが今ちょうど平成30年読んでたら、まったくそのとおりなってるね。彼はデータしっかりしとるから、それに対して知的能力も高いから。だからその両方を合わして十分、今平成30年のことを語ってますからね。だから、2025年までは頑張って欲しかったですよね。
安藤と澤田はともに大阪府出身、今でも大阪をこよなく愛する二人は、大阪の話題になると、話が止まらない。
澤田 僕、大阪大好きですよ。だって大阪生まれで、大阪育ちですから。なんとなしに大阪は味があるんですよね。東京とちょっと違うんですよね。
安藤 ああ、ぜんぜん違うわ!東京と大阪は違う。だいたいね、大阪の人は「外国行く?」「いや、俺はもう行きません。」みたいな人ばっかりや。私の知り合いの同い年の友人の建築家にね、「東京行く?」「そうやなぁ、東京オリンピックのとき行ったなぁ」言うて。それ何年前やねん!その情報量のなさがいいやんか。それがスゴいやんか!やっぱり大阪の人はあんまり情報求めてないね。目の前の現金は求めとる。これは世界都市の中でも珍しい。
澤田 現金ですね。
安藤 眼の前の現金好きやで!どないかしてくださいよ。
大阪を愛するがゆえの辛口ジョーク。これが安藤・澤田流、愛のエールかもしれない。
唐橋 賢者の選択 FUSION。今日の話いかがでしたか?ゲストは建築家の安藤忠雄さんとエイチ・アイ・エス澤田秀雄さんでした。いやあ、お二人とても勢いがある方々でしたね。なんか若い方も何か触発されて気付きが得られたらいいなと思いました。では、次回もお楽しみに。
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