コロナ影響による会員数の減少後、新たな発想で潜在需要を掘り起こす総合フィットネス
株式会社東急スポーツオアシス
代表取締役社長 社長執行役員
粟辻 稔泰
首都圏と近畿圏エリアを中心に創業から35年を迎える会員制総合フィットネス事業を中心に取り組む株式会社東急スポーツオアシス。歴史ある総合フィットネスは、新型コロナウイルスによる大きな打撃を受けたこの機会にこそ、従来のスタイルから大きな変貌を遂げようとしている。
「フィットネスへの需要は変わることなく続いています。このところのスポーツや健康への意識が高まるなかで、2020年に向けて盛り上がる風潮が社会全体にありました。新しいことにチャレンジしなくても、堅調に伸びてはいるという状況がありました」
新たなトピックの一つに挙げられるのはオンライン化だ。
「リアルのフィットネスに対して、オンラインフィットネスも数年前から進めているところです。方向性としてはリアルとオンラインの融合が、これからの新しいフィットネスの姿になると考えています。それを大きく加速させたのは新型コロナウイルスです。
2020年は大きな試練が訪れた年だったという。
「フィットネス業界全体が、新型コロナウイルスによって大きな打撃を受けました。当社
においても例外ではなく、会員数は約30%も減少しております。また2020年の4月から5月、当社は全館を閉鎖しました。これにより10万人以上の会員様から2カ月間の月会費が途絶えたのです。徐々に持ち直していますが、2020年末まで、まだまだ十分に回復していない状況です」
そこで、オンライン化との融合をスピーディーに進める必要が一気に高まった。
「これまでは、主にリアルなフィットネスに来ていただき、オンラインは補完的な位置づけでした。現在はリアルとオンラインとの垣根がほとんどなくなり、オフラインでもオンラインでもいろいろなことが受けられるようになってきています。また、高齢者の会員には、以前はフィットネスクラブに通っていたものの、通うことができなくなって辞めてしまった方もいらっしゃいます。生活様式が変わり、新しいスタイルでどのように提供できるかも今後の課題です」
また、新たな方策のひとつとして打ち出したのは物販事業だ。
「ホームフィットネスという家庭用の健康器具の販売をスタートしました。『フィットネスクラブが作った健康器具』という位置づけです。現在は商社として卸業務が中心でしたが、次のチャレンジとしては、ECを含めて自社で販売するという計画です。当社がインフォマーシャルを制作してテレビやECで販売したり、既存の会員様に販売していく方針です」
業界内を見渡すと、ここ数年で従来とは違った傾向がうかがえるという。
「フィットネス事業は他業種などから新規参入しやすい業態と言われています。当社のように総合的な大型スポーツクラブではなく、中小のジムやフィットネスという形態ならばかなり障壁が低く、ある程度の場所があれば事業化は難しくありません。そこで、トレーニングやフィットネス指導を目的とした個人ジムなどは大きく増加傾向にあります。そのため、受けられる方の選択肢は年々増えています」
米国のフィットネス参加人口は全体の20%を超えていると言われている。一方、日本ではわずか3%から4%だ。
「この狭い領域にいろいろな企業が参入して、お客様を取り合っているのです。残りの約96%の方には、もともと運動をしていない方もいらっしゃいますが、日常的にスポーツを楽しんでいる方であっても、フィットネスには通っていないという方も含まれています」
この96%にどうアプローチして、会員として取り込むかがポイントになる。
「日本で参加人口が低い要因は、フィットネスへの参加障壁が高いためだと思います。健康になるため、やせるためにフィットネスに通うには『努力が必要』とイメージしがちです。フィットネス=エンターテインメントという印象でまずはスタートしていただくのです」
楽しみながら、徐々に高いところを目指す方式ならば、確かに参加障壁を低くできる。
「当社を含め、フィットネスに入会すると『がんばってください』『この通りやってください』とお客様を縛ってしまいがちですが、それではすぐに離れてしまいます。『行かなくてはいけないけれど、辛くていけないから辞める』とあきらめる方も多くいらっしゃいます。そうではなく、楽しいから行きたくなるようにならなければいけません。がんばらなくても健康になればよいのです。現在のフィットネスは、まだ楽しさや面白さを提供できていません」
創業35周年を迎えた同社は今後、心も体も癒やされるフィットネスを目指していくという。新たなチャレンジで、2026年までの5年以内には最高利益を出すことを目標に成長を図る。
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