「東急ステイ」と「東急ハーヴェストクラブ」などのリゾート事業の運営会社を統合し新体制に
東急リゾーツ&ステイ株式会社
代表取締役社長
田中 辰明
東急不動産ホールディングスグループのホテル・リゾート事業の更なる成長を目指し、2020年7月に誕生したのが東急リゾーツ&ステイ株式会社だ。株式会社東急リゾートサービス、東急ステイ株式会社、東急ステイサービス株式会社がこれまで培ってきた実績と信頼をひとつにして、新たな価値を提案する。
「統合前は各社がそれぞれホテル・リゾート事業を進めており、人材の確保、インバウンド需要への対応、海外人材の登用、コスト面の急上昇など共通の課題がありました。グループ内でそれぞれが各課題に対応するよりも、ひとつに統合して取り組む方が、メリットが大きいと考えました」
営業面でも利用客へのアプローチ幅が広がり、多様なターゲット層にサービスが提供できると判断したという。
「構想から約2年を経て、実際にスタートした時は、新型コロナウイルスの影響で大きく環境が異なっていました。しかし、約2年の期間をかけていたからこそ、2020年の統合を実現できたのだと思います。こうした課題は瞬間的なものではなく、企業として持続的に成長していく上で、早めに解決しなければならないのです」
誕生からわずか半年だが、ホテル事業の営業体制や人材の確保など、各社に共通していたことを一本化しただけでも大きな効率化が図れているという。
「当社は会員制事業の比率が高く、コロナ禍においても多くのお客様にご利用いただいております。ゴルフ事業では緊急事態宣言下で法人の需要が減少するものの、個人のお客様は増え、月によっては前年を超えるほど安定しています」
2020年秋からはGo Toトラベルキャンペーンが実施され、リゾートホテルを中心に利用が集中した。
「実質的には約2カ月でしたが、ホテル内で食事をされる方も多く、稼働率が大きく伸びました。Go Toトラベルに関わる事務処理も必要で一時的に人員が不足しました。当社は運営面の事業ポートフォリオが広いことを生かし、本来の職域を越えて社員がサポートするなど臨機応変に対応し、新会社としてのメリットを十分に発揮できました」
当初、東急ステイは都内の山手線の内側を中心に「滞在型のホテル」を前面に展開してきた。
「当時はまだインバウンド需要も高まっておらず、ホテルの独自性として客室内に洗濯機やキッチンを整備して滞在型を打ち出しました。これが一定のマーケットの中からお客様の需要を喚起することにつながりました」
時代は急激なインバウンドへとシフトし、法人客のビジネス需要をターゲットにしていた同ホテルにも外国人観光客が増えていった。
「コロナ直前に約30%が海外のお客様、約20%が国内レジャーのお客様でした。ツインやダブルの稼働率が上がり、当社も2017年に都内から地方都市、リゾート地へと展開を広げました」
全国展開は順調に進行し、2020年4月に「飛騨高山 結の湯」がオープンし28店舗を数える。2021年4月には「函館朝市 灯の湯」、さらに同年8月には30店舗目の「新宿イーストサイド」がオープン予定。
「飛騨高山と函館のホテルではリゾートホテル事業を通じて得たノウハウを生かし、立地や地域特性を活かした心地よい空間の温泉大浴場を設置しています。各社がこれまでに培ってきた経験を生かし、時代の変化に対応し、お客様の滞在価値が上がるよう取り組んでいます」
統合した3社だけでなく、東急不動産ホールディングスグループ各社が担う幅広い事業を融合した取り組みも実践している。
「グループの力を活用することで、幅広いお客様にさまざまな提案ができます。例えば東急不動産が展開しているシェアオフィス『ビジネスエアポート』や、株式会社東急スポーツオアシスのフィットネスクラブ『東急スポーツオアシス』が利用できるなど、グループ内のリソースを活用した宿泊プランも提供しています」
東急ハンズが、東急ハーヴェストクラブの客室、リゾート施設内の店舗デザインや、売店で販売する商品を共同で開発しているという。
週の後半はリゾート地で仕事をして、週末は同じ場所でレジャーを楽むとか、飛び石連休の期間を含め仕事とレジャーを目的に滞在する、ワーケーションの提案もしている。
「お客様の利便性向上にもつながる新たなサービスも始めています。東急ステイでは予約、チェックイン、カードキーの発行、チェックアウトまで非接触が可能なアプリをご用意しています。スキー場ではレンタルやスクールの予約から決済までWeb上で対応しています」
これまでは人的サービスをいかに手厚くするかがホテルの質や格を表してきた。しかし、今後はそれだけでなく、例えばできる限り接触を避けたいというお客様には、極力対面型のサービスを排除して満足していただける運営体制を確立するなど、多様なニーズへの対応が求められるという。同社は、新会社とグループの力を生かし、次世代の豊かなサービスを追求していく。
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