モバイル事業に加え、官公庁・民間を含めたインフラ工事事業による2本部制で最高益を更新
サンワコムシスエンジニアリング株式会社
代表取締役社長
坂本 繁実
情報通信、電気設備の総合エンジニアリング企業として、創立74年目を迎えたサンワコムシスエンジニアリング株式会社。携帯電話のキャリアによる基地局整備など、モバイル事業分野の堅調な成長により、2014年には600億円を超える売上で最高益を記録した。しかし、翌2015年には社内で「モバイルショック」と呼ばれる事態が発生した。
「当社は、モバイル事業に注力して事業を伸ばしてきました。この当時、携帯電話のキャリアはこれまでの3Gから4GLTEへの移行を図る計画を進める上で、基地局開設などの設備投資が一気に抑えられたのです。売上が約400億円に落ち込み、営業利益は1/3になりました。源泉であるモバイル事業が打撃を受けたため、社員のボーナスはカット、役員報酬も数か月カットという状況に陥りました」
厳しい状況下で社長に就任。すぐに、立て直しがスタートした。
「モバイル事業を主軸に展開していた事業体系を大きく2本部制に再編しました。ひとつは従来からのキャリアのモバイル事業を継承した通信ネットワーク事業本部です。これに加え、新たに官公庁、民間を含めたインフラ工事を施工する社会システム事業本部を開設したのです」
モバイル事業に特化した企業から、2本柱の事業への転換。しかし、結果はすぐには表れない。
「当社は創業当初から電気設備関連の事業を行っていた経緯があるのですが、それからは大きなブランクがあり、約2年間はなかなか事業が推進できませんでした。業績が悪い中で売上だけを求めていくと負のサイクルに入ってしまうと思ったのです。そこで、利益が出ない仕事はしない、利益が出るように仕事をする、という方針を徹底しました。負けた経験をもとに、どうやったら勝てるのかを探っていったのです」
その結果、現在は国土交通省や防衛省、東京都、高速道路、空港ほかの民間企業などに幅広く、電気設備の設計、施工を行う電設エンジニアリング事業を展開するまでに業績を伸ばしている。
「直近では、大規模医療機関のナースコール等を含めた電気設備、空港内の監視カメラ、荷さばき所の電気設備などに取り組んでいます。ようやく軌道に乗ったという段階で、まだまだ勝率は2割程度ですが、売上も約250億円を超えるようになりました。全体で見ると、現在の売上は600億円を下回るものの、最高益を出すまでに至っています」
通信ネットワーク事業分野では、4Gから5Gへの移行が進められている。
「5Gはキャリアだけでなく、ローカル5Gと呼ばれる設備を民間の企業や工事現場などでも構築されています。キャリアビジネス以外に民間企業の5G事業にも貢献できる場があるのです」
5Gは電波の特性として到達距離が短く、直進性が高いためビルの影などでは電波が弱くなりがちだ。そのため、4Gよりも基地局数が必要になると言われている。
「高速道路などでは比較的運用しやすいのですが、個人の方が自動車を自動で車庫に入れられるほど網羅するには相応の時間がかかります。今後はさらに設備を小型化して、もっと密度を高めていく必要があります」
同社は電気通信に特化した技術を持つ、プロフェッショナル集団の企業だ。しかし、海外には電気通信工事を専門とする企業はあまりないのだという。
「強電会社が電気通信工事も行うケースが一般的です。日本国内には、18社の主要電気通信工事会社があります。このうち、17社はNTTの仕事を主体とした企業です。当社は唯一、民間をメインに事業化している企業です。NTTを除くキャリアと、地域のCATVなどが主な取引先です」
また、強電以下の電気通信関連の事業はすべて引き受ける幅広事業領域を持っている。
「電気や通信、通信のなかでもLANなど特化した分野ではなく、すべての領域について対応可能な体制を構築しています。その中で、当社は常に技術者集団でありたいと考えています。施工管理会社として仕事を流すという立場ではなく、技術の先端に常に関わり合っていきたいのです」
あらゆる電気通信分野をこなすという事業体系の中で、やや弱い部分が空調だという。
「ネットワーク機器は熱に弱いため、空調整備が重要です。M&Aを含めて、空調分野の強化を図っていく方針です。また、今後のトレンドでもある5Gにもしっかりと向き合っていきます。既に6Gの姿も見えてきており、技術はこれからも大きく変化していきます。その進化にどう追従し、対応していけるか、業態が変化していく中でどう収益を上げていくかが経営課題です」
同社は通信ネットワーク事業、社会システム事業の両軸をさらに強化し、2023年には800億円規模の売上達成を目指す方針だ。
出演者情報
企業情報
関連コンテンツ
カテゴリー別特集
リンク