低迷するボウリング・アミューズメント業界で躍進、北米にも20店舗以上をグローバル展開
株式会社ラウンドワン
代表取締役社長
杉野 公彦
放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社ラウンドワン 代表取締役社長 杉野 公彦:賢者の選択ご出演 2009年10月放送)
日本を代表する複合エンターテインメント空間「ラウンドワン」を全国に100店舗以上展開する株式会社ラウンドワン。ボウリング・アミューズメント・カラオケ・スポッチャ(スポーツを中心とした時間制の施設)等を中心とした、地域密着の屋内型複合レジャー施設の運営を幅広く手がけている。
「現在、事業を展開しているのは、日本だけではありません。2010年から北米進出をスタートし、2018年9月現在では25店舗に広がっています」
その計画は放送当時から既にスタートしていた。日本はこれから人口がどんどん減少していく。日本だけを視野に事業を展開していては、やがて成長が滞る時期を迎えることを同氏は予見していた。
ならば、ラウンドワンを受け入れてくれる国を探そう。1番の候補に挙げたのは北米だった。それは、ボウリング・アミューズメントの原点だから。本場で、日本仕込みのラウンドワンの事業とその手法が通用するか、試してみたい。それがたとえ夢で終わろうとも。
2010年8月、ロサンゼルス市内のショッピングモールにある家具店の跡地に1号店を出店。アメリカで、ラウンドワンがエンターテインメントとして通用するだろうか。その可能性を探った。
「十分な手応えを感じました。日本でもかつてそうであったように、ボウリング場はどこも老朽化していたのです。明るく、健康的なアミューズメント施設を待ち望んでいたのかもしれません」
第1号店を皮切りに順調にアミューズメントの本場で出店を重ね25店舗。今後もさらに出店予定が多数計画されており、その勢いまだまだ続く。日本のマーケットに目を向けてみよう。業界全体を見渡すと、下降曲線に入っていると同氏が見通していたように、厳しい状況を迎えているのが現実だ。
「現在は、カラオケ4,000億円、ボウリング800億円、アミューズメント4,000億円、その他1,000億円の市場で、アミューズメントが伸びてはいるものの、全体では約20%の落ち込みです」
こうした背景にありながらも、全国100店舗超の運営を維持し続ける同社は、大きく健闘していると言えるだろう。
「シニア層を中心にボウリング人気は根強いものがあります。平日の昼間などを中心に無料に近いレッスンを開催し、ボウリング自体にもゲーム性を高めるなどの工夫をして、より受け入れていただけるように改善を図っています。また、健康志向の高まるなかでスポーツ要素の高いスポッチャのポジションが定着しました」
ラウンドワンといえば、創業当時から続く人気の秘訣がイベントの豊富さだ。「毎日が学園祭」「いつ行っても楽しめる」というのは、同社ならではの大きな魅力で、飛躍の原動力のひとつにも数えられる。
「現在もコアになっているお客様は大学生です。しかし、小学生など若年層を中心に、ボウリングを一度も体験したことのない人がどんどん増えているのです。そこで、『ボウリングって楽しい』『カラオケは面白い』という経験を若い頃に味わってもらえるようなイベントを積極的に開催しています」
一度もやってみたことがない、連れられていったがつまらなかった──そんな思いを経験してしまっては、どうしても足が遠のいてしまう。同氏が同社だけでなく、業界の未来を見据えて実行しているのは、そうならないための地道な「種まき」だ。
「例えば、同窓会のアトラクションといえば、ボウリングやカラオケは定番です。しかし、一堂に会さなければ同時にプレイすることはできません。離れた場所で生活している人が同じ時間、同じ場所に集まるのは難しいものです。そこで、当社の店舗を通信ネットワークで結び、テレビ会議のように何人かがそれぞれが離れた店舗にいながら、同じ時間に同じ楽しみを共有するシステムを開発し、2018年12月より順次全店舗へ導入をすすめていく」
時代が移り変わっても、より楽しい空間を提供しようという同氏の思いは、変わることがない。さらにアメリカで反響の大きかったイベントを日本国内でも採り入れるという動きもある。
「来店機会を増やしてほしいと思い、ビールを1.99ドル程度で提供するサービスを始めたところお客様から好評でした。そこで、日本でも期間限定でビールを1杯100円で召し上がっていただけるキャンペーンを開催したのです。当社が居酒屋やレストランではないからこそ実現できたイベントです」
ビールが100円で飲めるという手軽さは、ちょい飲み需要を誘い、日本でも反響が大きいという。また、今後国内でも人気が高まりつつあるeスポーツに関連した需要も取り込んでいくなど、同社の斬新な戦略は尽きることがない。株式会社ラウンドワンの成長はこれからも続いていくことだろう。
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