シリコンバレーから日本を見つめ誕生 AI翻訳機 POCKETALK
世界マーケットへ
ソースネクスト株式会社
代表取締役社長
松田 憲幸
放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸:賢者の選択ご出演 2005年9月放送)
ソフトウエアは高価なものという従来からのイメージを大きく覆し、2003年には1,980円という低価格でソフトウエアの販売を実施。瞬く間に急成長を遂げ、日本の代表的なソフトウエア企業としての位置づけを得たのがソースネクスト株式会社だ。
その当時、5,000円から10,000円が中心価格帯だったソフトウエアのコストを大幅に下げ、高い機能はそのままに消費者が手に取りやすい商品を展開する画期的な戦略はすぐに定着。家電量販店だけでなく、コンビニや書店にも販路が広がったことは、業界に大きな影響を与えた。さらに、同社が取り扱う商品自体にも魅力があり、多くのファンを生んだ。
同社を率いる松田氏の活動拠点は、現在、アメリカ・シリコンバレーにある。
「2012年に米国法人を設立したことをきっかけに、私自身も家族とともにシリコンバレーに移り住みました。現在ではおよそ6割が現地での活動です。」
原動力はスピードの重視と他社がやらないオリジナリティ。そう語っていた同氏が自ら体現したのは、企業トップ自らの海外進出だった。
「私自身が現地に拠点を構えることで、決断スピードは著しく向上しました。これは出張等で頻繁に滞在することではなく、そこに居住することで実現できたのです」
世界のITはシリコンバレーを中心に動いている。その中心に自身がまず身を置き、シリコンバレーの取引先と直接対面してやり取りすることがスピードを何倍にも加速するという。もちろん、取引先はシリコンバレーに本社を構える企業ばかりではない。しかし、IT関連企業などのトップは年に何度も世界中からシリコンバレーを訪れる。そこに新たなビジネスチャンスがあるという。
「シリコンバレーにいると、ここがITを取り巻く世界の中心であることを本当に実感します。東京にいてはアポイントの取れない方とも日常的に会うことができます。日本ではなかなか話すチャンスのない日本の方とも現地ではゆっくり話し込めます。同時に、日本を離れることで、不思議と世界から見た日本の現状と今後の姿を冷静かつ的確に捉えられるようになってきます。日本国内にいてはまったく見えてこない新しい感覚です」
同氏がかねてから打ち破りたいと考えていたのは言葉の壁だ。日本人の多くが持っている英語など語学への抵抗をビジネスを通じて取り払いたいという思いを持っていたという。
「2017年に英語からヘブライ語まで、24の言語をカバーする世界的な語学プログラム『ロゼッタストーン』の日本法人を買収しました。当社が手がけることで、数万円だった製品を数千円で提供できるように価格設定しました」
パソコンだけではなく、スマホやタブレットを使って、いつでもどこでも学習できる語学プログラムは、同社の新たなヒット商品になった。
さらに日本人の言葉の壁を解消する取り組みは続く。
「互いに相手の国の言葉を知らなくても、まるで通訳がそばにいるかのように対話ができる音声翻訳機『POCKETALK(ポケトーク)』です。これはソフトウエアやスマホのアプリではなく、あえて専用のコンパクトなハードウェアにすることで、操作の簡単さや高い翻訳精度を実現しています」
翻訳エンジンは端末に内蔵するのではなく、クラウド上に置かれる。これにより常に最新で最適なエンジンを採用することにより高い翻訳結果が得られるという。端末にグローバルSIMを内蔵しているため、海外でユーザーが通信環境を整える必要はなく、109の国や地域で自動的に通信回線に接続される。月額通信料や追加費用は不要で通信料は2年間使い放題だ。
「これも、私がシリコンバレーにいなければ、手がけることのない製品だったと思います。今秋から新モデルが登場し、さらに翻訳精度や使い勝手が向上しています」
既に外国人観光客などに接客する日本国内の大手企業からも引き合いがあり、2020年に向けた大きな需要も予見される。
「日本と海外というばかりでなく、世界的に受け入れられる製品だと確信しています。また、機械なので何度話しかけても嫌な顔をされることはありませんから、言語学習にも役立ちます」
今年10月には、米国での展開も開始した。日本からシリコンバレー、そしてその先の世界へと同社の事業は大きく広がっていく。
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