長期政権化が見えてきた高市政権、でも課題は山積

2026/2/21 公開
2026/2/28 更新

経済衰退・円安リスクの日本、間違いなく大胆変革が必要

高市早苗首相率いる自民党政権が、最近の衆院選で圧勝し、野党の中道改革連合を惨敗に追い込んだのは、いまだに驚きだ。無党派の若年層を中心に、内閣支持率の高さがあったとはいえ、強引ともいえる解散総選挙の政治手法に対し、有権者の間では、豪雪地を中心に強い反発を招いたためだ。そうした中での自民党圧勝は間違いなくサプライズだ。

5か月近くたった今、政権運営も安定化し始め、衆議院における「数の力」を背景に、長期政権化する可能性も出てきた。多くの専門家の分析どおり、今回の自民党圧勝は、「高市人気」がもたらした部分が強い。その分、高市首相自身の政治リーダーとしての責任の重さが、格段に高まっている。今後は、高市首相が「数の力」を武器に、強引な国会運営に走らないようにメディアを含め国民・有権者の政治監視が極めて重要になる。

「責任ある積極財政」に不透明さ、デフレ脱却宣言も課題

その高市首相にとって、課題は山積だが、焦点は「責任ある積極財政」部分だ。政府が率先して成長期待の17の戦略分野に財政面で積極投資を行い、民間の活力を誘発して力強い経済をめざす、という。しかし財政支出の打ち出し方次第では、政策課題の物価高に歯止めがかからないばかりか、逆にインフレ高進リスクが生じかねない。とくに、円安で原油などの輸入価格が値上がりし、国内物価押し上げリスクも生じている。高市首相が積極財政の一方で、物価高対策にどう責任対応するのか不透明だ。リーダーの指導力が問われる。

日本経済は今、かつての長期デフレからインフレに局面が大きく変わりつつあるのに、依然として、経済低迷リスクを払しょくできないままだ。しかも、デフレ脱却宣言が行えていない。高市首相は所信表明演説で、「責任ある積極財政」で力強い経済の実現をめざす、と言ったが、掛け声倒れに終わっている。必要なのは、具体的な方策、とくに日本がデフレ経済には二度と戻らず、新たな道筋についた、と言い切れる確たる政策の方向付けだ。

信奉するサッチャー元英国首相の指導力に追いつけるか

そこで重要なのは、高市首相の政治指導力だ。高市首相自身は、同じ女性の政治リーダーとして1979年から11年間、英国首相を務めたマーガレット・サッチャー氏を尊敬し、女性の本格リーダーになるべく「日本のサッチャー」をひそかにめざしている、という。

サッチャー氏は在任中、電力やガスの事業民営化など構造改革に取り組み、苦境下の英国経済立ち直りを図った。南米の英国自治領フォークランド諸島へのアルゼンチン侵攻には軍事力で対抗して勝利をおさめる大胆さも見せた。しかし、スケールの大きさや政治家としてのタフな経験量の多さから見れば、高市首相は、まだサッチャー氏の足元に及ばない。

「トランプショック」、高率関税はトリプル安リスク

2025/5/24 公開
2025/6/8 更新

日本は米大統領に「世界経済の混乱避けよ」と毅然対応を

ドナルド・トランプ米国大統領は、実に人騒がせな人物だ。グローバル世界に影響を与える米国の政治リーダーとは、とても思えない。強引ともいえる政策を平然と打ち出して主要国リーダーを翻弄するばかりか、世界の金融資本市場を混乱に陥れかねない。日本は米国と同盟関係にあるとはいえ、米国の対応に問題があれば、毅然とした姿勢で臨むことが必要。

日本を含めた主要国への高率関税政策が最たる例だ。トランプ大統領は、自身で「関税は美学」と盛んに誇示、そして米国の対外貿易赤字を大胆に減らすため、高率関税を武器にDEAL(交渉・取引)に持ち込み、米国にだけ有利な「米国ファースト」の保護主義政策を全面に押し出した。その強引さは、米国都合の身勝手なもので、反発を招いている。

「高率関税が嫌なら米国に製造拠点移せ」は唯我独尊の発想

米国にとって、大幅な関税率引き上げで貿易赤字の削減につながるが、その引き上げ分は関係国にマイナスに働き、大きな経済混乱をもたらす。しかも今年4月に株安、債券安、ドル安というトリプル安の「トランプショック」が現実化した。当時、米国にとって誤算だっただろうが、関係国には影響が重大だ。米国の独善的な行動は、許されるものでない。

ところがトランプ大統領は「高額の関税支払いが嫌ならば、米国内に製造拠点を移し独自にビジネス展開すればいいでないか」と、半ば開き直りの姿勢だったため、反発が広がった。
グローバル展開する米国の政治リーダーとして、あまりにも思慮や見識に欠ける言動だ

高機能プラスチックCOPが急成長 新たな株主還元方針で配当率をアップ

高機能プラスチックCOPが急成長 新たな株主還元方針で配当率をアップ

躍進を続ける企業には、成長を支える方策がある。その秘訣を探る「成長企業の法則」。今回は、独創的技術で未来をつくる化学メーカー 日本ゼオン株式会社の代表取締役社長 豊嶋 哲也氏に聞いた。

スペシャリティケミカル企業として高付加価値製品をよりいっそう強化

「当社は2025年に創立75周年を迎える化学メーカーです。1950年の創業当初は塩化ビニル樹脂メーカーとしてスタートし、1959年、日本で初めて合成ゴムの生産を始めました」
同社が独自に開発した耐熱性、耐油性に優れた合成ゴムは世界中の自動車のエンジン周辺部品に採用された。
「高度成長期には右肩上がりで業績を伸ばしていきましたが、やがて合成ゴムに頼りすぎていることに危機感を抱き、次の柱となる新たな事業を模索しました」
1980年代から、業容の転換を見据えたさまざまな試みを始め、そのなかから新事業が芽生えてきた。2000年には、入れ替わるように、祖業の塩化ビニル樹脂の生産を打ち切り、同事業から撤退した。

シクロオレフィンポリマーと用途先の製品

「中核となるのは、高機能プラスチックのシクロオレフィンポリマー(COP)です。1980年代から開発を始め、現在大きく開花した製品のひとつで、優れた光学特性を持ち、各種カメラレンズやディスプレー用光学フィルムといった光学用途に採用されています。また、タンパク質低吸着性、高バリア性、低不純物特性などを生かし、医療分野、バイオ分野でも活用されています」
COP事業は、開発スタートから約35年という歳月を経て、同社の主力製品と位置づけられるまでに成長した。さらに、現在も活用領域は広がり続けているという。

「COP事業の成長は、失敗を恐れずにチャレンジをし続けた結果だと考えています。さらにスペシャリティケミカル企業として事業を磨き上げるため、徳山工場におけるポートフォリオ組み換えの計画を発表いたしました。汎用ゴムの一部製品と使い捨て手袋用ラテックスの生産を2026年に停止し、2028年にCOPの新たな生産拠点を新設する計画です」
同社は今後、とくに医療用途と半導体用途、光学フィルム向けにCOP事業の拡大を図る。

「COPは特殊な原料でできているのですが、当社はその原料を自前で作っています。また、複雑で高度な製造技術が必要で、他社の追随を許さないと自負しています」
同社は、2024年10月の決算説明会で、新たな株主還元方針を発表した。
「新たな配当方針として、株主資本配当率(DOE)4%以上、自己株式取得を2024年度に100億円としていたところ、200億円に増枠しました。2026年度までに合計で400億円の自己株式取得を計画しています。今後のCOPの成長性と、これに伴う大型投資には自信を持っており、よりレバレッジをかけても問題ないと判断したものです」
同社は今期、15年連続増配を更新する見込みだ。研究開発への惜しみない努力と、将来を見据えた事業変革の英断、成長過程にあっても常にチャレンジを怠らない姿勢が、同社を力強く支えている。

 

今や社会分断など混迷の時代に、ネット上の虚偽情報も影響

2024/12/27

中間層の弱体化などが心配、政治経済リーダーの責任は重大

世界中の主だった国々を見渡すと、どの国も政治や経済にさまざまな混迷がある。それに連動して経済社会は停滞し、大きく前に踏み出せない状況が多々、見受けられる。

国によっては極右政党の台頭による政治混乱が無視できないものになったりする一方で、インターネット上でSNSによる誹謗中傷、虚偽情報の拡散が目立ち始め、それらが影響して社会混迷に一段と拍車をかけている。

それだけでない。経済格差の拡大などに加え、これまで経済社会の安定を支えていた中間所得層の弱体化、という心配な事態も起こりつつある。これらの動きによって、社会混迷どころか、社会全体の分断が進んでいる。米国がその典型例だが、日本も次第に似たような不安定状況に陥りつつある。いずれも無視できない構造的な問題だ。

日本のデフレ脱却はいつ?中国は「経済の日本化」回避に躍起

日本経済に目を転じると、バブル崩壊から30年以上がたつのに、いまだにデフレ脱却・終了宣言が出来ていないのも無視できない問題だ。日本の経済イノベーションが死語になったのか、と錯覚しかねないほど経済に勢いがなく、低成長経済から、いまだに抜け出せていない。長年、実態経済をウオッチしてきた私にとっては、首をかしげることばかりだ。

かつて年率8%成長を誇示した中国でも、不動産価格低落が進み経済のデフレリスクが強まっている。中国共産党は、日本経済デフレを後追いしないように、と必死で「経済の日本化回避」を政策課題にしつつある、という。経済に勢いがあったころの日本は、中国のみならず新興国にとって、先進モデル事例となったが、今は様変わりの状況と言っていい。