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日本企業がアジア成長センターで見向きもされなくなる?
スピード時代に経営判断を先延ばし、話にならないと強い反発
かつてはアジア諸国から技術力、事業力で高評価を得て、企業経営面でも尊敬の対象だった日本企業。なぜか最近、アジア成長センターの企業の間で「スピードの時代に経営判断が遅く、話にならない」と、反発が強まっている。日本企業経営者がリスクをとらず、経営判断を先延ばしすることが多い点を問題視している、というのだ。
「全権持つCEOが『最終判断は帰国後の東京会議で』に唖然」
私が以前、中国深圳で地元のベンチャー企業経営者を取材した際、日本企業経営への不満を聞かされた事例を思い出す。CEO(最高経営責任者)の肩書を持つ日本企業経営者が、ビジネスで全面合意した中国ベンチャー企業経営者に対し「東京に戻り取締役による経営会議で決めるので、待ってほしい」と述べたため、中国経営者は「発言に唖然とした。企業代表として全権を持つCEOがなぜ、東京の本社に戻って最終決定の手続きが必要なのか。アジアは今、スピード経営が主流だ。日本はこれではビジネスで敗北する」と怒った、という。
タイ財閥サハ・グループのブンヤシット・チョクワタナー会長も今年1月5日付けの日経新聞インタビューで「日本企業は事業運営で従来のステップ・バイ・ステップを踏襲して経営判断が遅い。スピードが速い今の世界には合わない」と批判している。サハ・グループは消費財を中心に日系企業80社と合弁ビジネス関係にあるだけに、発言に説得力がある。
日本への「持ち帰り文化」は損失招くと日タイ橋渡し企業
アジアの現場の声も紹介しておこう。朝日新聞オピニオン欄の最近の「日本と東南アジアの50年」特集で、日タイ橋渡し企業CEOのガンタトーン・ワンナワスさんはタイ国内の日系企業の「持ち帰り文化」が問題だ、と指摘した。最初は、持ち帰り文化が何をさすのか、わかりにくかったが、記事全体を読んで、その意味がわかった。深圳の中国ベンチャー企業経営者が問題視したことと全く同じなのだ。
その日系企業の場合、タイの合弁企業や系列の部品生産企業に対しコスト削減に関してうるさく言うのに、なぜか自身の経営判断になると対応が遅い。タイ日系企業にとっては現地判断こそが重要なのに、親会社を気遣ってか、日本に持ち帰って本社で検討する「持ち帰り文化」現象に陥っている。こんな経営手法を続けていると、グローバル時代のスピード経営に対応できず、日本企業は機会損失していく、というのだ。確かに重要な問題指摘だ。
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ビッグモーター事件、保険金水増し請求で利益かせぎ
ダイハツ工業も品質不正、企業のガバナンスはどこへ?
企業のガバナンスはいったいどこへ行ったのか、と思わず感じさせたのが、中古車販売大手ビッグモーター(BM)の保険金水増し請求事件だ。主力の板金部門が、保険代理店業務兼務という枠組みを悪用、自動車事故で持ち込まれた顧客のクルマにわざと傷をつけ、保険金の水増し請求を行って利益稼ぎしていた、というもの。悪質の度合いがケタ外れだ。
そんな矢先、ダイハツ工業が、30年以上にわたり対象64車種、海外分を含め件数で174件に及ぶ検査データ改ざんなどの品質不正を行っていた、との驚くべき内容を最近、公表した。軽自動車業界の最大手企業での不正事案だけに、本当に驚いた。
ここ数年、ダイハツ工業以外に日野自動車、三菱電機、東芝などの大企業でさまざま不正が発覚しており、日本企業全体の劣化を改めて実感する。日本は、企業ガバナンス問い直しにとどまらず、企業の現場、そして経済全体で、出直し改革のアクションが必要だ。
BM創業社長「知らなかった、ガバナンス不全おわび」と謝罪
BMの場合、最初、企業ぐるみかと思った。創業者の兼重宏行社長は、今年7月の引責辞任会見で「内部の板金部門から損保会社への保険金不正請求があった。社内の特別調査委員会報告で、事件を初めて知った」という。「最終責任は当然、経営にある。企業ガバナンスが機能不全に陥っており、深くおわびする」と謝罪したのは当然だが、株式非上場のオーナー企業のもとで起きた重大犯罪で、企業ガバナンスが働いていなかったのは大問題だ。
それにしても行政側の対応が遅かった。金融庁のBMへの損保代理店業務登録取り消し処分は大問題になって4か月後の11月末。悪質企業にはスピーディな厳罰対応が必要だ。
降格処分「悪意はない、敗者復活による人材活性が目的」
そこで、企業ガバナンスの事例研究ということで、BMの保険金不正請求を検証した。創業社長は「特別調査委報告書を見るまで知らなかった」というが、それもおかしな話だ。板金部門の悪質行為によって、巨額保険金がBMに入っており、全体統括しているはずの経営が知らないはずはない。創業社長は、自動車修理と損害保険を結びつけるビジネスモデルで頭角を現したというだけに、足元で組織が機能不全を起こしているのは理解しがたい。
BMの特別調査委報告書を読んでみて、「儲けることに専念しろ」という利益至上主義が、この企業組織に問題を引き起こしたのは間違いない。とくに社員の降格処分人事を煩雑に行ったことが問題だ。創業社長は辞任会見で「行き過ぎはあったが、悪意はない。敗者復活のチャンスをねらったもので、人間は活性化を通じて成長する」と述べた。しかし調査報告書では降格人事に客観基準が全くない、という。とても企業の体(てい)をなしていない。