スマホ、自動車など幅広い製品に欠かせない「添加剤」のリーディングサプライヤー


ビックケミー・ジャパン株式会社
代表取締役社長
福田 勝

賢者の進化論

デジタルマーケティングから信頼関係を築き
モノを売るのではなくソリューションを提案

グローバルなスペシャリティ化学会社グループALTANA社は、BYK、ECKART、ELANTAS、ACTEGAの4事業部門で構成される。塗料添加剤、プラスチック添加剤をはじめとするさまざまな工業用添加剤のリーディングサプライヤーがBYKだ。ビックケミー・ジャパン株式会社はその日本法人として、国内外に向けた事業を展開している。

「当社の事業は製品を紹介し、理解して買っていただくというビジネスモデルではありません。まずはお客様との信頼関係を構築し、その上で課題や困りごとをお聞きします。当社のR&D、技術営業が実験をしながらソリューションを提案するのです」

どれほど社会が変化し、技術が向上しても、揺らぐことのない方針だという。

「従来はお客様とFace to Faceで会話していましたが、現在はデジタルマーケティングにシフトし、Webを介したコミュニケーションを駆使しながら、信頼のある関係性を高めています。しかし、デジタルの利便性があるものの、話の深さなどには限界もあります。そこで、オンラインツールを使って当社の技術営業が1対1で課題を伺っています」

当初は若手に浸透し、そこから5年から10年かけてゆっくりと移行するものと考えられていた。これが新型コロナウイルスの影響により、わずか数カ月ですべての層に広がったという。

「当社は製品自体を前面に出すよりも、優れた技術をアピールしています。例えば、さまざまなポリマーの分子量分布をきちんとコントロールして、開発者の求め通りに作るという技術があります。そこではポリマーにつける『手』がポイントです。一般的に、世の中にあるものはいろいろな素材が組み合わされてできています。これを結びつけるのが当社の製品なのです。どんな『手』が必要か、どんな骨格がふさわしいかは、お客様の課題によって変わってきます」

同社のR&Dによって、優れた技術が生まれても、それを押しつけるだけでは自分たちの自己満足に過ぎず、ユーザーの役には立てない。

「そのためにもお客様の課題を理解するためのコミュニケーションが大切なのです。ドイツと日本だけを比較してもローカルの要望は異なります。ですから、ドイツの仕様のまま日本で使うことはまずありません。お客様の声を聞くことがポイントなのです」

「当社は豊富な製品を持っていますから、これを組み合わせてソリューションを提案することができます。しかし、バッテリーやエレクトロニクス関連では、新たなチャレンジをする必要も生じます」

同社は兵庫県尼崎市にテクニカルセンターを構えている。日本国内向けだけでなく、グローバル展開におけるR&Dの拠点として位置づけられている。

「特にバッテリーはグローバルな事業の責任者が常駐して開発を進めています。中国や欧州では、EV向けのバッテリー工場がどんどん新設されており、こうした需要に対応する当社のR&D技術は、尼崎から世界に向けて発信されているのです」

プラスチックのリサイクルやフードロス解消も
自社の研究開発が未来社会の発展に大きく貢献

エレクトロニクス関連は日本や東アジアが世界的にもリードしている分野だ。フラットパネルディスプレイは液晶から有機ELなどにも進化している。

「スマートフォンの普及などによって大きく進化し、需要もどんどん高まっています。世界中の液晶パネルの80%以上に当社の技術が採用されているなど、コアな部分に使われることで、当社の事業も大きく伸びています」

内部に使われるセラミックを主体とする電子部品や、情報量を高めた特殊なプリント基板、デバイスも、高集積化により素材の進化が求められている。

「当社への要望や需要量も大幅に増えています。また、バッテリー関連も大きく進化しています。発電する用途だけでなく、カーボンオフセットの実現に向けて、光や地熱を利用して蓄電する用途が広がりました。こうした環境下で利用される電極やセパレータ部分や、安全性に優れた全固体電池の研究も進めています」

同社が力を入れているのは、世界的に伸びている分野だけではないという。地球規模の環境を考えたときに、自社としてできる取り組みとは何かを常に考えている。

「例えば、プラスチックのリサイクル技術を高めることは地球環境に大きく貢献します。この分野ではリサイクル時の強度や外観を高める技術を提供しています。また、社会的な課題になっているフードロスについては、食品の賞味期限を延ばすためのパッケージを開発することでロスを減らすことができます」

食品パッケージの材質や貼り合わせ方についてのソリューションも自社で確立しているのだという。

「いずれの場合も、当社の最終製品あたりの使用量はごくわずかです。しかし、グローバルニッチを追求することで、膨大な量が必要になるのです。それが、当社のビジネスであり、大きな強みなのです」

事業のひとつとして添加剤を扱っている化学メーカーはあっても、添加剤という専門分野に特化した事業をこれほど大規模に展開している企業は見つからない。同社は、世界中に圧倒的なシェアを持っているオンリーワンの存在だ。

「当社の直接のお客様は、自動車を例にすると自動車向け塗料メーカーです。しかし、その先には自動車メーカーがあり、自動車のドライバーがいます。すべてのお客様に対して、当社のチャレンジが少しでも貢献できるようなお手伝いをしたいと考えています」

顧客の期待に応えるソリューションを提供し、未来社会に大きく貢献する事業を継続していくことが、同社の喜びとさらなる成長へとつながっていく。

出演者情報

  • 福田 勝

企業情報

  • ビックケミー・ジャパン株式会社
  • 公開日 2021.03.03

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