N’2020 Planの約7割を達成し新たにN’2030 Planを策定 模範になる経営モデルの構築を進める
学校法人二松學舍
理事長
水戸 英則
日本、アジア、そして世界へ展開するビジネスリーダーにその戦略と決断を伺う「賢者の選択」は、今年10月に放送開始15年目に踏み出しました。各界を代表するリーダーの総出演者数は延べ600人を超えます。番組にご登場いただいた賢者はその後、どのような道程を歩み、現在を迎えているのでしょうか。その軌跡と、未来への思いを伺いました。
(学校法人二松學舍 理事長 水戸英則氏:賢者の選択ご出演 2012年7月放送)
番組放送から6年の間に大学教育を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。
その要因のひとつとして挙げられるのは少子化だ。
「少子化は今後も進行していきます。18歳人口は2030年を過ぎると100万人を切り、2040年にかけては90万人を切る見通しです。進学率が57%まで上昇すると仮定しても、2040年の大学進学者数は12万人減の51万人になると文科省は試算しています。急激な変化ではなく、同じようなペースで減リ続けていきます」
こうした中で、教育に大きな変革をもたらすのが、サイバー社会の到来といえるだろう。
「いわゆるAI、ロボット、IoT、ビッグデータといったような第4次産業の社会は以外に早く来るのではないかと思っています。政府が打ち出したソサエティー5.0のサイバー社会が到来することで、働き方や産業構造が大きく変わります。こうした背景のなかで、高等教育がどうあるべきかが新たに付け加えられたことだと思います」
東京の大学、地方の大学には異なる規制や課題もあるという。
「東京都内の大学は、地方創生問題が大きく影響しています。東京23区内の学生数増員を規制することになり、来年度からは増員できません。増員を伴う学部学科の増設が認められなくなるのです。さらに、全国の大学で入学定員に対する充足率について、従来は8,000人未満の場合1.3倍までだったのが、1.0倍に抑えられます。そのため、合格者数を絞らなければならないのです。都内の大きな大学は定員が多いため、その影響はさらに大きくなります。既に従来と同じ学力では希望する大学に合格できないという状況が見られています」
放送時の6年前と比較すると、行政の規制の枠が厳しくなっていると言える。
「ソサエティ5.0の世界で高等教育がどうあるべきか、中央教育審議会の将来教育部会で、多様な業種と教育関係者によって議論をしているところです。その中間報告によると、規制緩和とともに教育の質は厳しく追い求めるよう指針が出されました。低レベルの学生を受け入れて、4年間で付加価値のある教育をして卒業させること、その結果を指数で示すことが求められています。付加価値を付ける構造をカリキュラムの中に埋め込まなければ、設置審からは認められず、学部や学科の新設ができません。規制緩和の面では1学部について学部専任の教授から学部兼任、大学間の兼任を認めるという方向です。また、学部の中の学科であったのを学部や大学間で共用の教養学科が作れるようになるのです。これによってコストの削減が図れます」
単位互換についても、両大学で同じ学部を持っていなければ互換できなかったものが、なくても単位互換ができるようになる。自分の大学にない学部の単位を他の大学で受けられる。
「さらに、地方では地域連携推進法人として、国公立大学が傘下に法人を作り、大学の下に複数の大学がぶら下がれるようになります。このほかにも教育を取り巻く環境には、大きな変化があり、これからは柔軟な頭脳を持っていないと大学経営ができません。気がつくと乗り遅れているということにもなりかねないのです」
学校法人二松學舍は、創立135周年の2012年に長期ビジョン「N’2020 Plan」を発表。
2017年には、創立140周年記念式典で、新たな長期ビジョンとして策定した「N’2030 Plan」を発表した。
「急速な状況の変化に対応し、N’2030 Planを作りました。これはN’2020 Planを継承するものです。N’2020 Planでは2つの新学科を新設しました。ひとつは文学部 都市文化デザイン学科です。文学部開設以降60年以上の歴史の中で、初の新学科です。もう一つは国際経営学科です。両学部の定員も増員しました。また奨学金制度の大幅拡充、キャンパスの整備など、約7割の達成を実現しました」
行動計画としてアクションプランを毎年度策定して、課題の改善や環境の向上を図ってきた結果が表れたといるだろう。
「N’2030 Planには、画期的なことを盛り込みました。大学経営を経営資源、入学、在学中(教育段階)就職(出口)、卒業後の5局面に分けて、各々の局面においてコアとなる指標をあてはめて考えます。指標には目標校(ベンチマーク校)を決めて、目標校の平均値と本学の平均値を比べ、そのかい離がどのように生じてきたのか、課題を抽出してアクションプランとして計画を立てるものです。これはかい離がなくなるまで続けます。大学のブランドを引き上げながら目標を達成していくことを考えています」
これらの目標はダッシュボードとして一覧にして収め、進捗状況を管理しつつ、総括目標を達成していく。この方式は企業と共同開発し、将来的には他の学校にも提供していく方針だ。他大学の模範になる経営モデルの構築を進め、これを共有化する。
同大学では、これからのグローバルな社会で活躍できる人材を育成していく。
「育成する人材像は、知識とそのスキルであるコミュニケーション力、創造力、論理的な思考力を兼ね備えた人間性を三位一体に作っていくことです。知識には基本的な教養と専門的な知識があります。数理データマインドをつけるためには文系でも数学が必要です。コミュニケーション力、表現力などを培うのに必要なのは国語力です。すべての基本となるのは優れた国語力なのです」
語学を学ぶ際や、論理的な思考力をつけるためにも国語力はその中心に位置づけられる。社会や時代がどう変わっても、日本において国語はなくならない。同大学は今後、これまでに積み重ねてきた伝統を重んじながら、時代に即した人材教育を行っていく方針だ。
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