大学から世界に。新薬開発で病から解放したい思いを乗せたペプチドリームとは
ペプチドリーム株式会社
代表取締役社長兼最高経営責任者
窪田 規一
東京大学発の新薬開発を手掛けるバイオベンチャーが上場した。東京大学大学院教授の菅裕明と、ペプチドリーム株式会社の窪田規一が出会い、同じ夢を共有することで誕生。創業から7年経った今、ペプチドリームは国内外の大手製薬メーカーが共同開発を熱望する異色のバイオベンチャーへと成長を遂げた。二人が共有したペプチドリームの夢とは?
蟹瀬特許ポートフォリオというお話が出ているわけですけれども、この特許ポートフォリオと言われても、どういうことかわからないのでご説明いただけますか。
窪田一般的な特許というのは、一つの大きな特許があります。これが大木の幹みたいなものです。そこから派生するいろいろな小さな特許というか、特許を枝葉のように広げていくという、これが一般的な形なんですね。あとは複数の特許を網の目のように形成していくというのが、よく言われる特許ポートフォリオです。
私共の特許ポートフォリオは、この真ん中にありますフレキシザイム。これは先ほど申し上げた、特殊なアミノ酸をペプチドの構造の中に組み込むことができる世界唯一の物質特許であり、用途特許です。これがあります。これによって特殊なペプチドを作ることができます。でも、一つだけ作っても、これはお薬の開発には向かないんですね。複数、いっぱい作らなきゃならないんです。いっぱい作るのが一般的にライブラリーと呼ばれているものです。
窪田ライブラリーは数が多ければ多いほど、種類が多ければ多いほど、確率が高くなります。私共はこの特殊ペプチドを数千億から数兆種類。にわかにちょっとピンと来ないと思うんですけれども、それだけの種類を一本の試験官の中に作り上げる技術があります。それがこのFIT system(フィット・システム)です。
蟹瀬すごいね。世界最大の要するにライブラリー、図書館ですから、そこにブワーっと本が並んでいるものが試験官の中にあるということですね。
窪田仰る通りですね。
蟹瀬その本は選ばなきゃならなくなるんでしょうか。
窪田選ぶために必要なのがスクリーニングと呼ばれる技術で、これがRAPID display(ラピッド・ディスプレイ)というものです。これは、数千億、数兆という特殊ペプチドの中から一番いいものを選び出す、それをものの一カ月程度でやってしまうという技術です。
そして更には、特殊ペプチドというのはその名前の通り、特殊なアミノ酸も入っていますが、構造も特殊な構造を持っています。大きな丸い輪っかの構造であるとか。そういった構造を作る特許が二つあります。これらを全て組み合わせて、我々の創薬の開発プラットフォーム・システム、PDPSというものになっています。
ですから、この中のどれか一つが抜けても動かなくても、このプラットフォーム・テクノロジーは動かないんです。更に、我々が開発している特殊ペプチドは、今のところ90パーセント以上の確率でオリジナルIPと呼ばれる、世界中で誰もまだ作ったことがない、発見したことがないものなんです。
それを発見するために使ったライブラリーというものをそれぞれ特許化することによって、真ん中の一つのお城の中、この部分をしっかり固めます。それで、フレキシザイムは男性か女性かわかりませんが、お姫様がいるとすると、その周りをライブラリーという騎士団が囲んでいくと。それによって特許全体を守りながら、かつ強固なものにしていくと。というのが我々の特許戦略です。
蟹瀬知的財産みたいなものを日本の企業なんかはわりと守るのが下手くそだとよく言われますけれども、かなり戦略的に組み込まれているということですよね。そう簡単には中央のところまでは突破されないと。
窪田はい、そういう風に心掛けておりますし、手前味噌ながら、特に海外の大手製薬メーカーは特許戦略に関しては非常にシビアです。ですから、デューディリ(デューデリジェンス)と呼ばれるような、特許に関しては徹底的に調べられます。
蟹瀬チェックをしてね。
窪田はい。もしそれがインフレンジー、特許侵害であるとか問題がある場合にはほとんど契約できません。ですから、私共が大手の製薬メーカーと契約をさせていただいているということは、この特許戦略、特許ポートフォリオをある意味では認めていただいているということじゃないかなと思っています。
蟹瀬しかし、このポートフォリオを今拝見していると、これだけでもずいぶん特許の数がある気がするのですが、全体としてはどのぐらい特許の数っていうのはあるのでしょうか。
窪田現在私共が出願中のものを含めまして、15特許ございます。そのうちの14がこのポートフォリオの中に組み込まれています。
蟹瀬そしてこれがビジネスとして黒字化されていると。
窪田ええ。これが本当に我々の原動力です。
白石なるほど。ということで、そちらのペプチドリームのビジネスモデルについて、今回はある投資会社顧問の方にお話を伺ってきましたので、こちらをご覧ください。
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