バブル崩壊後30年も低成長の日本、明らかに異常


時代刺激人 Vol. 319

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

なぜ米国、中国に比べ日本でユニコーンが育たない?

ところが米国や中国で、ユニコーン企業が次々に誕生し時代を変えつつあるのに、なぜか日本ではAI深層学習の技術を活用して急成長のプリファードネットワークス(PFN、西川徹創業代表)などわずか10社にとどまる。2022年現在、世界のユニコーン企業は1052社、うち米国が539社、中国が174社もある、というのに対し10社は寂しい。専門家の話では、日本の場合、内外のベンチャーキャピタル(VC)、機関投資家からの投資額がケタ外れに少ない。投資対象としての価値が低いとの判断だ、という。この対応策は必要だ。

ただ、私は、日本でユニコーン企業が育たないのは大企業や行政官庁に技術力のある優秀人材が偏在しているのに、それら人材が年功序列制度の下で生かされず、いつしか組織の温もりに安住してイノベーションへのチャレンジ精神を失う組織風土に問題がある、と考える。それらが結果的に、ユニコーン人材を生み出すのを阻んでいる、と危惧する。

経団連、岸田政権のスタートアップ支援行動が遅い

そんな中で、経団連が今年3月、「スタートアップ躍進ビジョン」提言を公表した。スタートアップは、起業間もないものの成長力を秘める企業のことだが、提言では5年後の2027年までに起業数を10万社に、そして年間投資額を10兆円に、成功事例となるユニコーン企業をトータル100社めざせ、と。そして、日本を世界有数のスタートアップ集積地にするなど「起こすべき7つの変化」を提言に盛り込んでいる。実現すれば、素晴らしい。
しかし率直に言えば民間官僚(民僚)と言われる経団連事務局だけに、そつなく提言をちりばめ作文の印象が強く物足りない。大胆なアクションプログラム提言をすべきだった。

政治もやっと動き出した。政策テーマが欲しい岸田政権は今年初めにスタートアップ創出元年を打ち出した。イノベーションに弾みをつける「元年」にしようという政治姿勢は歓迎だ。しかし今年6月に経団連提言とリンクする形でスタートアップ5か年計画を公表予定という遅さだ。岸田首相の関心テーマの「新しい資本主義」も、問題提起後、いまだに中身が見えず、政治がスピードの時代に対応できていないのは、何とも歯がゆい。

大企業や官僚組織を壊しユニコーン人材の流動化が重要

そこで問題提起したい。破壊的イノベーションを起こすユニコーン企業を生み出すためには、大胆な経済社会システム変革に着手すべきだ。その変革策はいろいろ考えられるが、まずは危機対応できない組織になりつつある政治、行政機構、企業の組織風土をぶっ壊し、それら組織から飛び出すユニコーン担い手候補の人材が活躍する受け皿づくりが必要だ。

最近、面白い発想をする霞が関官僚OBと出会った。イノベーションの担い手を生み出すにはどうすべきかに関して、その官僚OBは「産業政策にかかわる経産省がゾンビ化した大企業を保護し過ぎた。今後は、大企業に問題が出ても雇用不安回避で保護するのでなく組織をぶっ壊す覚悟が必要だ。そして行政は、退出を余儀なくされた人材向けに、たとえば優秀人材がベンチャー創業できるようなエコシステムづくりでサポートも一案だ」という。
私も同感で、その際「今や霞が関の行政官庁も対象だ。大企業と同様、優秀人材を抱え込みながら生かし切っていない。イノベーターを生み出す場づくりが必要」と付け加えた。

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