蔵元の思い 被災地に(vol.38)


BUSINESS FLASH

東日本大震災から10カ月になる。酒造りの時期を迎えた東北6県の蔵元が「今年もおいしいお酒ができました」とのメッセージを、1合の純米吟醸酒に込めて販売し、10本売れるごとに1本を被災者に贈るというプロジェクトを始めた。

純米吟醸とグラスを意味する『JUNGIN GLASS PROJECT(純吟グラスプロジェクト)』と名づけられ、被災地の純米酒をPRするとともに、何よりも被災者に〝いつも通りの元気〟を伝えようという活動だ。

佐藤被災地にとって、新酒がいつも通りできることは〝復興〟を意味します。それでこのプロジェクトに感銘し、すぐに参加を決めました。

と話すのは、創業172年の歴史をもつ宮城県の酒蔵「萩野酒造」専務の佐藤曜平さん(32)
震災で伯父を亡くし、酒蔵も大きな損傷を受けた。プロジェクトへの参加は手間のかかる仕事を増やすことになるが、東北にとって必要だと思った。

このプロジェクトを発案したのは食・酒ジャーナリストの山本洋子さん。
純米酒の取材歴20年。『純米酒ブック』(グラフ社)の著者でもあり、純米酒の専門家として全国の蔵元に親しまれている。
山本さんは東京在住だが、昨年3月11日、たまたま東北を取材しているときに被災した。

山本あの日、激しい揺れの後、時が止まったかのように、風景も空気も、何もかもが動かなくなりました。そんな中、顔見知りの店へ行ったら、いつも通り温かいお燗で純米酒を出してくれたんです。ありがたくて、おいしくて…それで何か役に立ちたいとプロジェクトを立ち上げました。
純米酒は透明なグリーンのガラスの1合カップに入れることにしました。被災地には食器もないので、そのまま飲めるようにして、蔵元の〝いつも通り〟のメッセージを伝えたかったのです。

グラスのデザインは、東京・表参道でカフェを経営している川村明子さんに依頼した。
川村さんは1合カップをオシャレなグラスとして使えるように配慮した。

一方、蔵元は酒にこだわった。佐藤さんは宮城でとれた酒造好適米「蔵の華」を使用した逸品「日輪田 蔵の華 純米吟醸生原酒」を選び、2000本作って昨年末に発売した。

佐藤震災はつらかったけど、多くの方々に支えられておいしい新酒を造ることができました。今後は損傷した酒蔵を新築し、新しい時代の蔵元へ飛躍したいです」と佐藤さん。

プロジェクトに参加する蔵元は現在9つ。成人の日に宮城県南三陸町の成人式で240本、石巻市で50本が配られた。
酒どころ東北の元気は、純米酒とともに熟成しつつある。

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  • 公開日 2012.01.13

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