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〝本当に必要な地域医療〟を提供するため、全国でも珍しい医療を導入している病院がある。
奈良県大和郡山(やまとこおりやま)市にある「医療法人青心会 郡山青藍(せいらん)病院」である。
法隆寺に近い閑静な住宅街にあり、一見何の変哲もない地方病院だが、診療科目が変わっている。
内科や外科、総合診療科などと並んで「その他の診療」という科目がある。
そこには「椎間板ヘルニアレーザー手術」を筆頭に、「高濃度ビタミンC療法」「遺伝子検査」など、あまり耳にしない名前が並んでいる。
なぜ、地方都市の病院に、このような手術や検査が必要なのだろうか。
野中ーー林業を営む人が多いからですよ。
と専務理事の野中壮介さん(68)。
野中ーー林業の人たちは職業柄、よく腰を痛めてヘルニアになるのですが、そう簡単に仕事を休むことはできません。
と説明してくれた。
野中ーーそれで海外で行われている『椎間板ヘルニアレーザー手術』を導入しました。日本では保険適用外なので費用は38万円と高いのですが、日帰り手術で少なくとも3カ月間は元の体に戻ります。
しかし、斬新な医療には専門の技術や機械が必要になる。しかも全額自己負担となると、人口が少ない地域では患者も限られ、採算が合わないのではないかと心配になった。
開院したのは26年前。徳島大学医学部を卒業した野中家久院長が大和郡山に来たとき、奈良の救急車が大阪へ走っていくのを見て驚いたことが開院のきっかけだったという。
大学で教え込まれた医師としての理念「患者のための医療」から、「奈良の患者は奈良で診るべき」という想いを強くし、この地で開業することを決意。
徳島で親しんだ藍染めの青藍と大和郡山の地名をとって「郡山青藍病院」と名付けた。
野中ーー以来、24時間365日救急対応を続け、『困った時の青藍病院』といわれています。
しかし、地域医療のニーズは救急対応だけではない。
高齢化が進む地方では高齢者ケアが必要で、介護老人施設「ピュアネス藍」も併設した。
病院で治療した高齢者のリハビリテーション施設として80人を受け入れている。
ところが、それでは病院経営が成り立たない。ここに一役買っているのが、この斬新な手術や検査である。
野中ーー『椎間板ヘルニアレーザー手術』は全国でも珍しい手術なので、都心から多くの患者を受け入れています。地域のために斬新な治療を導入し、都心の患者も受け入れ、その利益を地域に還元しているんです。
過疎化と高齢化に悩む地方都市。そこで必要な医療を提供し続けるための、病院の1つのあり方を示している。
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- 公開日 2011.08.19
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