中国との技術摩擦も今後は課題 外国技術いい所どりで独自誇示


時代刺激人 Vol. 183

 食うか、食われるかの激しい競争が続くグローバル世界で、追いつき追い越せをスローガンにする中国など新興国が、日本の強みである先端技術をさまざまな手段で入手し、それが高じて、いわゆる技術摩擦、技術流出トラブルに発展するケースがいま、急速に増え、日本としてもますます、見過ごすことができなくなっている。

 食うか、食われるかの激しい競争が続くグローバル世界で、追いつき追い越せをスローガンにする中国など新興国が、日本の強みである先端技術をさまざまな手段で入手し、それが高じて、いわゆる技術摩擦、技術流出トラブルに発展するケースがいま、急速に増え、日本としてもますます、見過ごすことができなくなっている。前回181回コラムで取り上げた新日本製鉄がライバルの韓国鉄鋼大手ポスコを相手取って起こした総額1000億円の損害賠償請求訴訟問題も、その1つで、虎の子ともいえる方向性電磁鋼板技術が不正に取得されている、というものだ。
しかし、問題の根っこは意外に深い。新日鉄のケースの場合、その不正の引き金を引いたのが、何と新日鉄の技術者OBで、退職後の転職先ポスコで技術移転に深く関与した疑いが強いため、新日鉄にとっては実に厄介なのだ。

日本企業でリストラ合理化された技術者を狙いすましたように
ハンティング

でも、これは一過性の話ではない。長期デフレにあえぐ日本企業の多くの現場で、リストラ合理化で弾き飛ばされた技術者が、行き場を失って苦しんでいた矢先に、日本の先端技術取得に躍起の中国など新興国から、まるで狙いすましたように声がかかり、その再就職先で、それら技術者は水を得た魚のように技術伝授するため、結果的に技術流出となって問題を引き起こしている。これらが今や常態化していると言っていい。これこそがいま、日本の企業現場で起きている深刻な技術流出問題の本質部分だ。

そこで、今回もぜひ、技術流出問題の続編という形で、時代刺激人ジャーナリスト目線で問題提起しよう。これから申し上げる話は、国家がからみ、追いつき追い越せによって先進国を上回る急成長のためになりふり構わず海外から優れた技術の取得を、という国家スローガンが見え隠れするため、間違いなく厄介なのだ。そればかりでない。一昔前のような産業スパイ的な手法で技術を盗む、といったやり方ではなくて、IT(情報技術)を軸に、インターネット上で巧みに技術を抜き取る手法が加わっているので、さらに厄介だ。

小説「列島融解」が面白い、中国が秘かに大震災で被災した
企業をターゲット

これにぴったり当てはまる格好の話が、実は最近読んだ小説にあったので、まずはそれを紹介しながら、話を進めていこう。その小説は、濱嘉之さんが書いた「列島融解」(講談社刊)というタイトルの本だ。思わず引き込まれる本なので、ぜひ一読をお勧めする。

濱さんは、もともと警視庁OBで、主として内閣情報調査室、いわゆる「内調」と呼ばれる日本版CIA(米中央情報局)のような国家戦略・機密情報収集部門、それに誰もが気味悪がる公安部門といった特殊分野にかかわった異色の警察官僚ながら、警視庁退職後、作家としてデビューした。しかも、小説で取り上げる題材がリアルなうえに、鋭い問題意識を持っており、思わず引き付けられる作家だ。

中国人スパイを使って、特殊な先端技術を持つ企業を中国に招致し
「ある仕掛け」

この「列島融解」のテーマ設定が、とても興味深い。日本の先端技術の取得に躍起な中国が、日本に帰化した中国人のスパイ・ネットワークを使って、東日本大震災で企業設備や人材を一度に失って苦境にあえぐ企業、中でも基幹産業の3次、4次の下請け企業のうち、特殊な先端技術を持つ企業群をターゲットに、巧みに中国に企業誘致し、中国の日本企業向けにつくった特別の工業団地に進出させる。

その工業団地には、実は中国側が、日本企業から技術を盗み取る巧みな仕掛けがあって、裏でインターネットを駆使して、その工業団地とそっくり同じの2つの工業団地につくった工場設備で技術を盗み取る。しかも、その技術に工夫をこらして、さも中国の独自技術のようにする。それをもとに大量生産し、メイド・イン・チャイナの工業製品として第3国向け輸出する国家プロジェクトが潜む、という設定だ。とにかく今日的なテーマで、リアルな展開だから思わず引き込まれる。

著者プロフィール

  • 牧野 義司
  • 1943年
  • 大阪府
  • 早稲田大学大学院

今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

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