アートとエコを融合(vol.18)


BUSINESS FLASH

瓶などの廃ガラスを美しく蘇らせる技術「ガラスおこし」を発明し、地方活性化に取り組んでいる“技術系アーティスト”がいる。
大阪市を拠点に活動する岡本覚(さとる)さん(56)で、アーティストとともに大阪工業大学客員教授、大阪府立大学客員研究員など錚々たる肩書を持つ。
廃ガラスのリサイクル技術を研究し続けた所以である。

岡本ーーアートは付加価値の魂といわれ、不景気の世の中では真っ先に反古にされてしまいます。
それでアートとエコをくっつけることによって、新たな価値を見出していけたらと思いました。

と岡本さん。
“アートとエコの融合”という言葉だけでは、よく見かける“廃材アート”と同じに聞こえるが、岡本さんの場合はレベルが違う。

アートに仕上げる以前に、廃ガラスを美しい素材にする技術にこだわっているからだ。
その結果、現在までに3種類の特許と1つの実用新案を取得した。

岡本ーー一般の人のガラスに対する考え方とは少し異なる観点で作品を制作しています。
たとえば、ガラスは壊れやすいと思われていますが、ビー玉をコンクリートに思いっきりぶつけたところで割れません。
実はガラスには石の7倍の強度があるのです。だからこそ薄いガラスコップやめがねのレンズができるということを知って欲しいと思っています。

およそ30年前、アメリカに留学し、日本にステンドグラスを紹介すべく創作作家として工房を設立した。以来、次々と新しい技術を開発し、特許だけでなく毒物・劇物を扱う国家資格も取得した。

現在、活動の中心になっている技術は「ガラスおこし」だ。廃ガラスから立体的な網目構造のガラスを作る技法で2008年に特許を取得した。
この技術を使うと、現在大半の市町村で廃棄処分の対象になってしまう色付ガラスについて、特に色を分別しなくてもリサイクルが可能になる。

岡本さんはこの技術を使って奈良県大和郡山市の人々とともに、道路の舗装に使われるブロックの一種「インターロッキング」を制作した。
子どもたちと商店街の人々がリサイクルできないワイン瓶などを収集し、大人たちが焼成して完成したインターロッキングを土木業の人々がきれいな道路に施工した。
本来、廃棄するしかなかったガラスが“みんなで作った道路”に変わり、人々の温かな笑顔を誘った。

岡本ーー最近では、子どもたちが色分けされた廃ガラスを砂絵の具のように使ってガラスタイルを作り、川べりやフェンスなどに飾ったりしていますよ。

そして今春、岡本さんはこれまで発明した技術を結集して大阪中之島に巨大なオブジェを制作した。ガラスの「船首」を持つ「水都大阪」をイメージした作品だ。

岡本ーー現在ガラス瓶は年間流通量の30%にあたる47万トンが廃棄されています。私はそのガラスを使って地方を活性化していきたい。その想いを表現しました。

と岡本さん。
ガラスの「船首」に、地方の船出が象徴されているようだ。

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  • 公開日 2011.08.12

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