「堅忍不抜」でつくった、街づくりまで進出する保険薬局の「サービス」とは?
阪神調剤ホールディング株式会社
代表取締役社長
岩崎 壽毅
「保険薬局」の全国展開で独自のサービスを提供する阪神調剤ホールディング株式会社。代表の岩崎壽毅(としき)が創業以来つくりあげてきた、医療と調剤の分業の思いは広まり、いまや世間のイメージを超える「サービス業」へと変貌を遂げた。「かかりつけ薬局」を目指すなかで、「街づくり」まで進出するその理由と仕組みとは?
蟹瀬保険薬局をサービス業として位置づけて事業を行っていくとなりますと、そこで働いている方々の質というのはとても大事になってくると思います。たとえば薬剤師の方をどのように育成されているのか、あるいは接客の技術なども必要ですよね。このあたりはどうなさっているのですか?
岩崎私どもは創業時から接客に力を入れてございまして、体を悪くした方が薬局にどういう心境で来ているということから、接遇・マナーの研修は年に50回ぐらいはやっています。医療は薬局として、薬剤師として、医療機関として、非常に大事なのですが、「サービス業でもあるんですよ」ということを強調しています。
蟹瀬普通のビジネスでよくお客様ファーストという言葉を使いますが、カスタマーファーストという。まさにそれと同じような感覚が必要だということですかね?
岩崎少なくとも私どもは、そういう感覚をしっかりと身につけるように常に訓練しています。
蟹瀬そうすると、お伺いになっている理想の薬局というのはどういう薬局なのでしょうか?
岩崎皆様方に一番信頼されるかかりつけ薬局を目指しています。
蟹瀬かかりつけ薬局というのは良い言葉ですね。お医者さんのかかりつけというのはありますけれどもね、主治医として。
岩崎はい。かかりつけ医、かかりつけ薬局、薬剤師というのが私どもに求めている言葉でございます。
保険薬局の枠を超えたサービスを提供し、最も信頼される「街のかかりつけ薬局」になりたい。それが、これからも阪神調剤ホールディングが歩む道。
ドーキンズさて、岩崎社長のプロフィールを拝見しますと大阪薬科大学をご卒業後、製薬会社にお勤めになられていますが製薬会社ではどのようなお仕事をされていたのですか?
岩崎製薬会社は武田薬品とアメリカン・サイアナミッド・カンパニーという会社の合弁会社でして、私も分業についていろいろなことで興味がありました。アメリカの会社に入りたかったこともありまして、レダリー社に入社して営業に携わりました。その営業を通じて、いろいろなドクターと毎日話し合うことが仕事でございまして、非常に勉強なりました。アメリカに行かせていただき、そこで勉強して、アメリカ・ヨーロッパは医薬分業をしていたので、私も薬剤師として、日本も必ずそういう時代がくるだろうなと思いました。それがきっかけとなって起業に結びつきました。
製薬会社に勤務していた岩崎はアメリカやヨーロッパの確立された医薬分業制度や薬剤師の地位の高さを目の当たりにし、日本でも医薬分業を推し進め、薬剤師の地位向上を図ることを決意。しかし、当時は医師や利用者の理解を得ることができず、医薬分業の普及は苦戦を強いられていた。そんななか、1974年に行われた診療報酬の改定により、日本でも徐々に医薬分業の推進が図られていくこととなる。
岩崎最初の第一店舗を出したときは2.6パーセントくらいの分業率だったのですが、昭和49年に今まで院外処方せんを書いたら100円だった報酬が500円に上がりまして、それで1日100人、200人、300人と見ているドクターは院外処方を書くほうが効率がいい、また診察一本にしぼれる、ということもよく話し合いをしまして、ドクターにも同調していただきました。そして、協力してやっていこうという形で進んで行ったわけでございます。
蟹瀬ただ患者さんの視点からすると、お医者さんからすぐもらったほうが便利な感じがしますよね。わざわざ別の所に行かないといけないので。
岩崎そのことにつきましては、私はドクターに「先生は診察に専念してください。薬のことについては専門家の私どもに任せてください。これがやはり、日本のためになることですから。患者さんもそれで納得してくれます」と。そういうふうにドクターを説得していきました。非常に難しいことなのですが、それは製薬会社時代にヒューマンリレーションを多くのドクターと築いていたということがあり、起業のきっかけの一つになったと思っています。
こうして医薬分業への道を切り拓いた岩崎は、1979年に株式会社阪神調剤薬局を設立。現在では全国に470店舗を超えるチェーン展開を行っている。
蟹瀬そして医薬分業が広がって、そのなかでやはり薬剤師さんの社会的地位も高まったと考えてよいのでしょうか?
岩崎多少なりとも上がってきたのではないかなと(思っています)。ですから、まだまだ薬剤師も勉強して、そしてドクターに次ぐような高い教養と倫理観も必要です。医療ですから、きちんと身につけて、患者さんに国民の皆さんに満足してもらえる、そういう薬剤師集団を作っていかなければならないと思っています。
ドーキンズ岩崎社長は2004年に日本保険薬局協会を設立されていますが、この協会はどのような目的で設立されたのですか?
岩崎やはり、国民の視点に立った薬局、それから保険薬局を日本の国民の皆様に知っていただこうと思いました。今まで熾烈(しれつ)な競争を演じてきた8社が寄って、競争も一時休止にして、とにかく協会を作って、皆さんに「保険薬局とはどういうものであるか」ということをもっともっと知っていただこう。そういう趣旨のもとで作りました。
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