お客様第一主義、現場第一主義で、高齢者から障がい者、保育へと事業領域を拡大
株式会社ケア21
代表取締役社長
依田 平
放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社ケア21 代表取締役社長 依田 平:賢者の選択ご出演 2008年8月放送)
全国に訪問介護ステーション、グループホーム、デイサービス、介護付き有料老人ホームなどを展開する株式会社ケア21。放送当時には全国に70カ所の訪問介護ステーションを設置し、約7,000人の利用者だった。
「現在は、395事業所で、利用者は19,500人に増えています。やはり人を育てる仕組みができたのが大きいと思います。これにより多店舗化が進み、福岡、仙台、広島など各地にいろいろな事業所を展開できたのだと思います」
企業の成長を支える人材。その確保は業種・業態を問わず困難な状況が続いている。
「エリアによって人材確保の難しさは異なります。大阪などは比較的人が集まりやすいのですが、名古屋は苦労しています。その中でも、まず当社の経営理念、これから進む方向性を理解してもらうことが大切だと考えています。求人誌・求人サイトでも、どんな職種のスタッフを募集しているかということだけでなく『人を大事に、人を育てる会社』という理念を前面に推し出しています。この部分はブレることなく続けています」
同社の離職率は約16%だという。業界全体では20%を超える状況にありながら、これを大きく下回っている。ここからも、企業の姿を正しく理解し、ともに成長していこうという志を持って応募していることが伺える。
優秀な人材の引き留め策として、5アタック制度を導入。離職を考える社員に5回の面談を行っており、最大5人のスタッフが相談にあたっている。また、離職後にもスムーズに復職できるUターン制度もある。他社を経験した後に、やはり魅力ある企業であることを認識し、戻ってくる人も多いという。これは社内の士気向上にもつながっている。
放送当時には、ケアスタッフとは別に営業を配置することで、事業としての会社の発展を図っていた。
「お客様第一主義、現場第一主義をより強固に貫く上で、社内の体制を改めました。やはり、現場を知っていることが大切なのです。現在は現場の社員が自ら営業に取り組むというスタイルに変更しています。現場と営業との間に生じがちな認識の違いや温度差をなくすことでスムーズに進行できています」
この柔軟な改革も、同社をより大きな発展へと導いていると言えるだろう。
「事業所のリーダーとして活躍するためには、人間力や技術もあるのですが、やりきる力として営業力も求めています。当社のよいところをしっかりアピールできる力を持っているかが問われるのです」
介護事業において、営業力の高さは業績に大きな影響力を持つのだという。
「外部のケアマネージャーに対して、当社ならこのようなご要望にも対応できます、こうしたサービスも提供できますと、積極的にアピールすることがご利用者の拡大につながっていきます。お引き受けした以降も、ご利用者の状況がどう推移しているか、毎月きちんとお伝えして相互理解を深めています」
こうした信頼感が、次のビジネスチャンスを着実に呼び込む方策になっている。ここには、「待っているのではなく、積極的に営業する経営」という、同氏が当初から貫く理論が生きている。
「攻めないと守ることもできないのです。事業経営には、常に攻めていく姿勢が大切です」
大きく貫かれた企業理念と柔軟な変革は、新たな事業領域への拡大にもつながっている。
「当初は高齢者を対象とした事業に集中していましたが、現在は障がい者や保育にも力を入れています。これまでの事業とその広がりによって、当社は、総合福祉企業になりました」
2000年当時、介護保険に関わる費用は3兆円だったが、現在では10兆円を超え、2025年には20兆円から25兆円と言われている。
「医療や自動車産業に匹敵するような基幹産業になりつつあります。将来的には海外にも繰り出していける産業です。教育の仕組みを海外で使っていただいたり、技能実習生の受入や現地に戻る際のサポートも行っていきたいと考えています」
今後はこうした海外からの人材の力がより必要になり、介護の現場は大きく活躍できる場でもあるという。
同社は2018年3月から、高齢者向けの食事配達事業もスタートした。
「高齢者の方は温かい食べ物と温かい心のサービスを求めています。そこで、当社の施設を使って調理し、近隣のエリアにお届けしています。さらに玄関先で渡すだけでなく、ご家庭の皿などに盛り付けて、10分間滞在するのです。その間に話を聞いたり、片付けや簡単な洗い物をするなどのサービスを提供しています。移動もあるので、1時間に4軒しか回れませんから、従来より料金は高くなりますが、ほとんどの方が継続され、高く評価いただいています」
現在は新宿区と江東区で展開し、既に約900食の利用者があるという。今後10,000食規模に拡大していく方針だ。
同社はこれからも、積極的な攻めの経営で自ら市場を切り拓いていく。
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