今や被災地で復興よりも新興が大事 津波対策で海辺に人工の生活島を


時代刺激人 Vol. 178

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 「復興よりも新興を」――最近、これはいい、さすが言葉を大事にするノンフィクション作家だなと思ったキーワードだ。「メタルカラーの時代」のタイトルで鉄鋼などのモノづくりの現場の人たちの生き方を描いた山根一真さんが、新聞で被災地支援問題に関して、この言葉を使っておられたのが目に入った。

「復興よりも新興を」――最近、これはいい、さすが言葉を大事にするノンフィクション作家だなと思ったキーワードだ。「メタルカラーの時代」のタイトルで鉄鋼などのモノづくりの現場の人たちの生き方を描いた山根一真さんが、新聞で被災地支援問題に関して、この言葉を使っておられたのが目に入った。その瞬間、時代刺激人を標榜する私にとっても、思わず「参った」と思うほど、このメッセージは新鮮で、説得力を持つものだった。
宮城、福島、岩手県の東日本地域一帯に、自然の猛威によって大きな爪痕を残した東日本大震災、さらに大津波による東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされた人たちの復興、再建は、1年以上たった今も遅々として進んでいない。その現実を、被災地現場で何度も目の当たりにして、私はずっと苛立っていた。

そんな矢先、この「復興よりも新興を」という言葉に出会った。直感的に「そうか、復旧、復興というと、元に戻すことに、いろいろな人のこだわりが出る。とくに区画整理では利害が錯そうして権利調整に苦しみ、物事が前に進まない。加えて政争に明け暮れる政治、行政機関の縄張り争い的なタテ割り行政の弊害がカベになる。しかし、もし、新興という全く新しい制度枠組みで『一からやってみようや』と、取り組めばやれるかもしれない。思い切った発想の転換が事態を大きく変える起爆剤になる」と思うようになった。

東北スカイビレッジ構想が新興にぴったり、
元旦NHKスペシャルで奥山さんも紹介

この新興というキーワードにふさわしいプロジェクトがあるので、今回のコラムで、ぜひ取り上げてみたい。ご存じの方もおられるかもしれないが、東北スカイビレッジ構想だ。実は、今年1月元旦のNHKスペシャルの特集番組「目指せ、ニッポン復活」で、私の友人で工業デザイナーの奥山清行さんが、建築家の迫(さこ)慶一郎さんらと一緒に、東日本大震災で被災した沿岸部の平野部に、高さ20メートルぐらいの津波が押し寄せても大丈夫な、自然と共生する新たなコンパクトシティをつくりあげたくて計画している話がある、と言っていたのが、そのプロジェクトだ。

たまたま最近、東京都内で、この東北スカイビレッジ構想の詳細を聞くと同時に、リーダーの迫さんに会うチャンスがあった。迫さんは、若さを感じさせる建築デザイナーで、何と北京に拠点を置き、新興中国の都市再開発などのプロジェクトを手掛ける構想力のある人であることがわかった。話を聞いてみると、思わずわくわくする話だった。

建築家の迫さんが構想、内陸部の高台への移転よりも
海辺近くの平野部に居住を

迫さんは、北京と東京との往復の生活中に、たまたま昨年3月の東日本大震災に出会ったが、その1か月後の4月に、当時の菅直人首相が、津波対策のために高台に住宅移転を、という構想を打ち出したのを耳にし、それまで温めていた東北スカイビレッジ構想を具体化させようと決断したという。

奥山さんがNHKスペシャル番組で、その一端を紹介したように、津波を回避するための高台がない平野部の被災地に高さ20メートル、直径200メートルの、コンクリートでつくった東京ドームぐらいの大きさの巨大な島のような人工の構造物をつくりあげる。そして、構造物の上の平らな広いスペースに住宅や学校、病院、商店などを立ち上げ、そして、島の内部には半導体はじめ、さまざまなサプライチェーンとなる工場、それに付随する会社の事務所スペース、さらには野菜などを生産する植物工場も設置するものだ。

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