取引先別から品番別に管理スタイルを進化させるなど、ものづくりを追求するさまざまな取り組み
山陽株式会社
代表取締役社長
池田 勝年
エンジニアリングとしてのものづくりをベースに、プレス、線ばね、切削、カシメ、溶接、組立など、幅広い固有技術をベースにアッセンブル品の一貫生産体制を構築して、多種多様なメーカーに供給しているのが山陽株式会社だ。
「よりお客様のご要望に応えられる企業を目指して、常に努力と改善を進めています。なかでも企業改革の大きな柱として、管理スタイルを進化させました。従来は取引先別に管理していたのですが、これをすべて品番ごとに改めたのです」
1万アイテムを超えるという多品目を扱う同社にとって、その作業は容易ではなかった。
「改善のために必要な客観的な情報が正確に得られていない状況でした。そこで、品番単位で工程ごとに工数や品質ロスを一元管理できる体制を作り上げました。加工した数、誰がどの工程にどれくらいの時間が掛かったかなどを都度入力し、データベース化したのです。この仕掛けをつくるために5〜6年は費やしました。このデータベースを活用して改善ターゲットを客観的に抽出できるようになり、効率的、効果的に改善ができるようになりました」
品番管理システムの構築は大きなメリットがあったという。
「集合体としての情報収集よりも、子部品単位での善し悪しが数字で見えるようになったことが大きいのです。現場でも常に正確な数値を把握することができ、ボリュームの大きな製品ほど大きな成果が表れます。当社の自己解決能力や品質レベルの向上を高めるだけでなく、ロングレンジで考えるとお客様の管理コストを抑え、より安心してお取引をいただくことにもつながってくると信じています」
部品によっては提供期間の長いものもあるという。
「エンジンなどは最終製品が変わっても、同じ品番の部品が使い続けられることがあります。共通部品として、20年以上も採用されるものも少なくありません。少しでも安心感が増すことで、長くお取引いただけるサプライヤーであり続けられると考えています」
一方で、大量生産される部品を中心に、ものづくりの現場が海外へとシフトし、国内生産に求められる要望は厳しくなっているという。
「中長期目線で考えたとき、受け皿としての日本国内のサプライチェーンの課題が顕在化されつつあるように感じています。当社では、本社工場のリニューアルや新工場開設を1年早めるなどの対応を行いました。お客様からのご要望にお応えするために、将来を見据えて生産スペースの確保を実施しました」
これからの日本のものづくりに求められるのは、どのようなことだろうか。
「一般的には数量があればあるほど、安く作ることはできます。しかし、日本国内の生産量は減少しており、コストでは海外に勝つことはできません。そこで必要なのは、機動力のある現場と自分たちが汗を流し、手を汚し、客観的なデータを活かしたものづくりを続けていく姿勢が大切だと考えています」
その言葉のなかには、同社が目指すものづくりへの情熱がうかがえる。
コロナ禍においては製造業ならではの難しさがあるなかで、万全の対策を模索した。
「出社してラインを動かさなければ製造現場は機能しませんし、お客さまへの供給責任を果たすことができません。営業担当者であっても、現場の業務に直結しなければならないため、出社を控えることはできないのです。そこで、社内を大きく2班に分けて、いずれかで感染者が発生しても現場を止めなくて済むようにしました。もちろん、毎日の体温測定を徹底し、休憩時間をずらしたり、社内会議を2部屋に分けて行うなど、できる限りの対策を講じました」
現場をはじめ、社員の意識にも変化が表れたという。
「仕事量のばらつきが表れるなかで、部署の垣根を越えた応援態勢を構築しました。従来は所属部署の業務量に余裕があっても多部署の業務に就くことはありませんでした。現在は柔軟性を高め、社員の力を有効に使おうという取り組みを進め、各部署に適正な人員を配置しています。こうした努力もあり、2020年後期以降はコロナで一時沈んだ業績も向上してきました」
今後の成長のカギを握るのは、やはり人材だという。
「当社に限らず、製造業では人材不足の解消と人材育成が大きなミッションです。まずは『ここで働いてみたい』と思ってもらえるよう、新工場建設の際に社内のデザインを見直したり、社員食堂のメニューを選択制にしました。また、一般的にヒュームや高温で厳しい職場環境となりがちな溶接職場では、溶接ロボットをブースで覆って、工場内に溶接ヒュームが排出されないように職場環境の改善を図っています。さらにTPM活動を通して、人材育成に取り組んでいます。外部からも講師を招いて、自己解決能力の高い優れたものづくり人材を育てていく考えです」
今後、時代がどう変化しても、ものづくりを辞める考えはない、と力強く語る。そこには全力を挙げて取引先の要望に応える同社の真摯な姿勢が感じられる。
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