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秋田県に「しょっつる」と呼ばれる伝統調味料がある。魚を数年間塩漬けにして作る調味料で、特に秋田県では冬にハタハタのしょっつるが仕込まれてきたが、現代の醤油(しょうゆ)文化に押されて一時消えかけていた。
しかし、このほど〝漁師のかあちゃん〟9人が結成したグループ「ひより会」の努力で見事に復活。
しかも新しい秋田の名産として、全国に販路を拡大しているという。
岡本➖➖秋田の漁師の味を守りたかったのです。消えかかった理由は、私たちの次の世代が面倒なものを嫌うだろう、ということでした。ならば面倒でないしょっつるを作れば、きっと残ると思いました。
と「ひより会」代表の岡本リセ子さん(68)。
ハタハタは神の魚「鰰」と書く。
秋田県八森地方では冬場の貴重なタンパク源になることから、「神様が遣わした魚」として尊重され、塩焼き、煮付けなど、さまざまな調理法で余すところなく食べられている。
しょっつるも保存食として塩漬けにする際、発酵してできる魚醤を指す。
つまり、神の魚を完全に食べ尽くすという秋田の食文化が生んだ独特の調味料なのである。
それが食生活が豊かになって、次第に作られなくなったというわけである。
そんなとき、秋田県の指導で漁業関係者の女性部が結成された。
〝漁師のかあちゃん〟たちに漁業を活性化してもらおうという県の施策である。
そしてリーダーとなった岡本さんが最初に手がけたのがしょっつるの復活だった。
岡本➖➖できるだけ面倒にならないようにと、昔は大きな樽に漬け込んでいましたが、その樽を小ぶりなものに変え、手軽に作れるようにしました。
ほどなく岡本さんを代表に、1人5万円の出資金で「ひより会」が立ち上がった。
岡本➖➖今年でもう9年目になりますが、おかげさまで全国から買いに来られる方が増え、現在はハタハタ1トンを漬け込んで作っています。
同時に、ほっけや鯵(あじ)などをブレンドしたしょっつるも開発した。
岡本➖➖しょっつるはコクがあって、鍋やみそ汁に入れたらとても美味しくなります。一度食べたらその味が忘れられないのか、何度もご注文いただくのですよ。
と岡本さん。
地元に古くから伝わる伝統の味を受け継ぐのは、どの地方にとっても大きな課題である。
そうしないことには、現代の便利な食生活が伝統食をどんどん押し流してしまう。
岡本➖➖地元の食文化はまず、地元が守らなければ残りません。ビジネスばかりに目がいくとうまくいかないと思います。しょっつるが再び注目されてきたのも、私たち地元の者が積極的に食べているからですよ。
と岡本さん。
いま一度、食文化を考えたいものである。
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- 公開日 2011.06.24
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