社員を信じ、すべて自社製(vol.12)


BUSINESS FLASH

不況下でも「人を信じ、雇用を促進する」をモットーに発展してきた企業がある。長野県飯綱町でジャムやワインなどを生産するサンクゼールである。
約30年前、ペンションとして創業したが、手づくりジャムの製造販売などで全国展開に乗り出し、リーマン・ショックをものともせず、順調に増収増益を続けている。

現在、社員は約230人。
長野県内に本社と工場、ワイナリー、レストラン、ワイン用ぶどう畑などを運営するほか、全国約30カ所に直営店舗を展開。売上高は30億円を超える。
そこには、どんな戦略があるのだろうか。

久世ーーべつに大それた戦略などありません。私たちはただ、お客さまに感動を売りたいから、すべてを社員で内製化しているんです。

と取締役の久世良太さん(34)。創業者の久世良三社長のご子息である。

しかし、いまのご時世、できるだけアウトソーシング(業務の外部委託)をした方が効率的と考える企業が多い。
そんな中、ジャムやワイン作りはもちろん、通常は外注する直営店舗の設計からデザインまでも、あえて自社で手がけている。

久世ーー建築部という部署があって、直営店舗はすべてここで設計しています。一級建築士の資格を持つ社員もいて、技術的にも信頼できるんです。

と久世さん。どうやら、このあたりに発展の秘訣がありそうだ。

また、テーマを決めて社員と経営者が車座で意見を交換する時間を毎週設けているという。
どんなに忙しくても、この時間を削ることはないらしい。

久世ーーたとえば、国際情勢など大きなニュースがあったときは、それをテーマにしたり、身近な人が亡くなったときは死をテーマにしたりして、社員が自分の意見を自由に発表するんです。
この会議を定期的にするようになってから、経営者と社員の距離が縮まり、社員同士の信頼関係も深まりました。

この〝車座会議〟は8年前、久世社長の呼びかけで始まったという。
社員は当初、とても面倒くさそうだったが、次第に打ち解けて、今では楽しみにするようになったという。
そして、この会議と平行するように業績が伸びていった。

久世ーーかつて、借金で倒産の危機に瀕した時期がありました。そのとき、社長が社員の人間的な成長こそが肝心と気付いたんです。
私たちは会社でありながら大きな家族と思っています。その温かい心をお客さまにも伝えたいと思って、すべて自分たちの手でやっているんです。

どんなに苦しい状況も、社員が人間的な成長を遂げることで乗り越えられる。〝効率至上主義〟の世の中、最も大切なことが置き去りにされているような気がする。

企業情報

  • 公開日 2011.07.01

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