創業111年の老舗化学メーカーの事業戦略。「持続的成長」に 必要不可欠な要素とは
DIC株式会社
代表取締役社長執行役員
猪野 薫
DIC株式会社は印刷インキ、有機顔料、PPSコンパウドで世界トップシェアを誇る化学メーカーだ。現在ではコア事業を軸に世界64カ国に展開しており、世界的有数のファインケミカルメーカーとして発展を続けている。代表取締役社長執行役員 猪野薫は「サステナビリティ(持続可能性)」を意識した企業価値向上を目指し、社会貢献活動にも余念がない。現状に満足せず、たゆまぬ挑戦を続ける猪野とDICの事業戦略に迫る。
コア技術を育て上げ、世界トップレベルに発展した化学メーカーがある。DIC株式会社。
猪野 もうただのインキ屋ではないよと。もっと社会価値を高める事業に質的に転換をしていくんだと。
代表取締役社長執行役員 猪野薫。DICは、化学メーカーとしての顔を持ちながら、3つの領域において社会貢献活動に取り組んでいる。
DIC川村記念美術館。
猪野 私どもの美術館は、印象派から現代美術までということで、時代の要請がいわゆるサステナビリティであって、この流れが元に戻るということはおそらくはない。
企業価値の向上と持続的な成長を目指すとき、新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION
蟹瀬 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの蟹瀬誠一です。
福井 福井仁美です。さて、改めてゲストをご紹介します。DIC株式会社 代表取締役社長執行役員 猪野薫さんです。よろしくお願いいたします。
蟹瀬 よろしくお願いいたします。
猪野 よろしくお願いします。
福井 まずは、DICの事業と歴史をコンパクトにご紹介するショートイントロダクションです。
DIC株式会社は、1908年に川村インキ製造所として創業。その後、有機顔料、合成樹脂事業に参入し、印刷インキメーカーから化学メーカーへと歩み出すとともに、事業の多角化を進めていく。創業時からグローバル展開を視野に入れ、1962年に大日本インキ化学工業株式会社へと社名変更後は、M&Aなどで本格的に海外展開を進め、世界有数のファインケミカルメーカーに発展を遂げた。2008年の創業100周年の際に、社名を現在のDIC株式会社に変更。ブランドスローガン「Color & Comfort」のもと、持続可能な社会に向けた製品開発を進めるとともに、さらなる飛躍を目指して事業を展開している。
蟹瀬 まずお伺いしたいのですけども、創業当時、これはインキ事業を中心に事業展開をされてこられたわけですね。どのあたりから化学メーカーの方にシフトされていったんですか?
猪野 元々インキで創業いたしましたけども、インキの原料というのは主に顔料と合成樹脂。それを輸入して原料でインキを生産していたのが、自前で生産するようになった。ここがある意味では化学メーカーの走りなのではないか、このように思っております。
蟹瀬 シフトされたのは何年代なんですか?
猪野 1950年くらいですかね、ええ。
蟹瀬 そうですか。それで60年代くらいになってくると、日本でもいろんな日用品に合成樹脂が使われるようになりましたよね?これはやっぱり需要が伸びてくると、それに対していろいろ対応していかなきゃいけないということになるわけですよね?
猪野 いわゆる日用品の類で、需要が急増するというところとはちょっと異なりまして、ただ、工業用途の物も高度成長期時代、相当急増しましたので、そういう生産体制は日本を中心に、特に3工場体制、今でもそうなんですけれども、そこを相当ブラッシュアップしてきたということになります。
福井 今本当に世界的にも展開されているということなんですけれども、その当時からグローバル展開っていうのは視野に入れていらっしゃったんですか?
猪野 元々ですね、私ども創業家の方々が、いわゆるグローバルマインドっていいますか、そういうところが特に強い持ち主だったようですね。私が入社したときも、創業二代目、三代目の方だったんですけれども、海外の成形から始まってM&A、当時、日本の化学会社としては、かなり先手を打って買収を仕掛けていって、グローバル化をしていった、そんな会社だったというふうに記憶してます。
蟹瀬 日本の企業って日本の国内のマーケットが割と潤沢で、あんまり外の方へ目が向かなかったことが多かったですよね。そういう意味では、先駆的に先代の方々がご覧になったって、何かモチベーションはおありだったんですかね?
猪野 特に技術者魂といいますか、技術者の夢としては自分たちが開発して1つモノになったものを、もっと世界に広くあまねくそのまま伝えたいと、そんなような思いがあったようですね。
蟹瀬 かつては企業は、当然のことながら利益を上げていかなきゃいけない。これはもう一番中心にあるわけですけれども、環境問題だとか、それからいろんな社会貢献をしていかなきゃいけないっていう流れになりましたよね。そのあたりはどういうふうに対応されていますか?
猪野 今ひとつ時代の要請がいわゆるサステナビリティであって、特に欧州のブランドオーナーがリサイクルのできないフィルムを使わないだとか、色素合成ではなくて、天然系のものを使うだとか、いうことを既にもう宣言をしていて、新聞報道、テレビとかを見てると、もうこの流れが元に戻るということは、おそらくはない。ただ、当然企業としてはその中で、利潤を儲けないと続きませんので、いわゆる社会価値の向上と、それからそれによって追求した結果、我々も得られる経済価値の増加が、常にシンクロすることで投資と正の循環を施していく。
投資家の皆さんも短期的な利益よりも、より中長期的な企業価値の向上というところを求められていて、ある意味ではそういうことの中で少しペイシェンス(忍耐)を持っていただくような、そんな世の中に変わってきてるのかなっていう感じはしております。
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