どうした民主党政権、「期待・不安半分」がいつの間にか「不安増大」に 内閣支持率の急低下も気になる、鳩山首相が政治的指導力強め求心力を


時代刺激人 Vol. 67

最近の鳩山民主党政権はいったいどうなっているのだ、と思わず口に出てしまうほど、鳩山由紀夫首相の指導力の欠如ぶり、優柔不断さ、軸ぶれが目立ってきた。とても気になる。そればかりでない。当初から危惧されたことながら、与党民主党の小沢一郎幹事長との二重権力も目立ち、政権基盤が急速に弱くなってきている。私自身、第60回コラムで、連立与党代表の亀井静香郵政・金融担当相の日本郵政の社長人事での強引な振る舞いに関連して「期待半分・不安半分の民主党に不安が表面化してきた」と書いたが、今回は鳩山首相自身の指導力について「不安が増大」と言わざるを得なくなった。
 メディアの内閣支持率に関する最近の世論調査結果も、それを反映している。時事通信が12月18日に発表した調査結果(12月11~14日調査)では、鳩山政権の内閣支持率が2カ月連続で低下したうえ、前月比7.6%ポイント減の大幅ダウンの46.8%と、政権発足以来、初めて50%を割り込んだ。一方で、不支持率は前月比7.5%ポイント増の30.3%と初めて30%台になった。支持と不支持の差がぐんと縮まってきているだけでなく、不支持率が大きく弾みをつけて上昇していることが気になる。

客観性を持たせる意味で、同時期に行われた他のメディアの世論調査結果も見てみよう。まず、読売新聞が時事通信発表の翌日12月19日に出した世論調査(12月18~19日)結果では、鳩山政権の内閣支持率は55%で、前回調査(12月4~6日)から4%ポイント下落した。同じく不支持率も4%ポイント上昇の33%となっている。また、毎日新聞がさらにその翌日の12月20日に発表した世論調査(12月19~20日)結果では鳩山政権の内閣支持率は読売新聞と同じ55%ながら、前回調査(11月21~22日)よりも実に9%ポイント下落した。逆に不支持率は前回比13%ポイントと大きく上昇し34%となっている。毎日新聞調査の場合、支持、不支持とも変動幅が大きい。

不支持率急増は鳩山首相の「リーダーシップがない」「指導力に期待が持てない」
 何が支持率急落、不支持率急上昇の原因か、それぞれのメディアの世論調査から探ってみよう。時事通信調査では、不支持の理由が鳩山首相の「リーダーシップがない」に集中し、前月比10.2%ポイント増と3倍増の14.5%だった。また、「鳩山内閣を実質的に動かしているのは誰か」については、小沢幹事長と答えた人が71.1%にのぼり、鳩山首相は10.6%にとどまった、という。
また読売新聞調査では米軍普天間飛行場移設問題の年内決着断念という政府対応を「評価しない」が51%、「日米関係にマイナスの影響を与える」が68%にのぼり、これが鳩山内閣支持率ダウンの背景になっている、という。また、民主党、社民党、国民新党の3党連立の枠組みを評価するかどうかに関して「評価しない」が64%にのぼり、民主党が国民新党などに振り回されている事態に不満が多いようだ、と読売新聞は分析している。
また、毎日新聞の世論調査も読売新聞と同様、米軍普天間飛行場移設問題の対応を評価しない、との回答が51%、鳩山政権の対米外交に関しても「心配だ」が68%となっており、読売新聞とまったく同じ基調だ。毎日新聞は「普天間問題などをめぐる対応の迷走が鳩山首相の指導力不足を印象付け、支持率低下につながった」と分析している。しかも、不支持の理由は「鳩山首相の指導力に期待が持てない」という回答が前回11月時点の16%から一気に42%に増加している。

政権交代の期待を担っての登場だけに「裏切られた」が強まればこわ~い事態も
 鳩山内閣の支持率が政権発足直後の9月時点では、ほぼ各メディアの世論調査で77%前後の支持率となっており、歴代政権の中では第2位に位置するものだった。もちろん、世論調査の数字に一喜一憂することはない、という見方もあるかもしれないが、わずか4カ月ほどで、30%ポイントもの内閣支持率の数字が落ち込む、と言うのは、どう見ても普通ではない。というよりも、異常な事態だ。
 旧自民党政権でも、似たような落ち込みを見せた不人気政権があったが、鳩山政権の場合、重要なことは、政権交代という言葉が今年の流行語大賞になるほど、有権者や国民の大きな期待を担って政権交代した。言ってみれば、さっそうと、しかも大きな期待を担って登場した政権だけに、その期待の強さが失望、あるいは裏切られた、と言った受け止め方になって、時計の振り子が大きく反対方向に振れると、鳩山政権にとっても、かなり厳しい事態となる。とくに、この裏切られた、といった受け止め方、それを裏付けるおかしな政治状況があと2、3カ月続けば、民主党にとって、アゲインストな状況になる。民主党が必勝を狙う来年2010年7月の参院選での勝利はまず期待できないと言っていい。

鳩山首相の「首相判断」があいまい、優柔不断なのが問題
 それにしても、なぜ、民主党政権は一気に、国民や有権者の支持を失う結果になったのだろうか。私は、経済ジャーナリストなので、主として、経済問題に関する政権の対応を見てみたい。結論から先に言えば、トップリーダーの鳩山首相の「首相判断」があいまいで、発言がぐらつくところに最大の問題があった。各省庁で大臣、副大臣、政務官という政務3役による脱官僚、政治主導の政策決定のシステム導入は、試行錯誤の面もあったが、これまでそれなりに機能し始めていた。ところが、この政策決定システムに連立与党の政策協議などが加わり、とりわけ亀井郵政・金融担当相のような、旧自民党体質丸出しの思いつきでの政策提案などが入り込んできた。このため、政権としては、鳩山首相の裁断を仰ぐという形で「首相判断」に行くケースが増えたが、肝心の鳩山首相の判断が優柔不断であったり、「私が決める」と言いながら、問題先送りするだけだったりケースもあり、次第に不信感を募らせる結果となった、というところでないだろうか。
 いくつか具体例を挙げることができる。マニフェスト(政権公約)の実行をめぐっての鳩山首相の言動だ。まず8月末の総選挙での演説では「マニフェストに書いたこと、約束したことは、民主党は必ず実現する」と言っていた。政権を担当してからの10月28日の衆院本会議での代表質問に対する答弁では、鳩山首相は「マニフェストは国民との契約だ。必ず実現する。仮に達成できない事態に至ったら、私としては責任をとる」と述べた。この間、若干の不規則発言もあったが、大きな流れは、政権公約に沿って政策遂行する姿勢を変えていなかった。

民主党のマニフェストを実行に移すのは重要だが、フレキシブルさも必要
 ところが12月2日の国会内での講演で、鳩山首相は「国民が望まないものを強引に押し付けるのはいかがなものか」とトーンダウン、さらに2週間後の12月17日には「国民の思いや経済状況はいろいろ変化する可能性もある。柔軟性が求められるのが政治でないか」と述べた。聞きようによっては、鳩山首相としては、民主党が総選挙でマニフェストを政権公約として約束したのは事実だが、金科玉条のように断固実行する、というものでもない、国民の受け止め方が重要ながら、状況によってはフレキシブルでもいいのでないか、と言いたげだ。
 同じ政権内部で年金問題のスペシャリストとして厚生労働行政に携わることになった長妻昭厚生労働相は、就任第一声が「私は、大臣として、マニフェストを忠実に実行する」と発言し、厚生労働官僚に対しては、「マニフェストをしっかりと勉強しろ」と指示しただけに、鳩山首相のこの後退ぶりをどう受け止めるのだろうか。
しかし、私は、実は、民主党のマニフェストに関しては、基幹部分に関しては、国民の支持を得て政権交代を果たせたのだから、当然、政策公約として実行に移すのがスジだが、経済状況に応じて柔軟に対応せざるを得ないものに関しては、むしろ、政策の軌道修正も必要だ、と思っている。現実問題として、野党時代につくった政権公約が、いざ、実際に政権を担ってみて、見通し判断が甘かった、という政策、あるいは経済状況が大きく変わっているため、状況に対応して、フレキシブルに対応すべきものといった政策もある。そうしたものまで、マニフェストを民主党憲法のように頑なに守るよりも、まずは経済のデフレ状況に対応した政策を機敏に打った方がいい、という問題もあるはず、と思っている。

鳩山首相は政権のトップリーダーとして緊急記者会見で強いメッセージ発信を
 そこで、私が言いたいのは、鳩山首相が必要に応じて、緊急記者会見を開き、大胆に政策の軌道修正をせざるを得ないものがあれば、有権者や国民に強くアピールすればいいのだ。早い話が、経済の低迷で税収が落ち、新年度の政策需要を満たすためには、「埋蔵金探し」によって新たな財源確保を図るが、緊急避難的には、国債発行に頼らざるを得ない、といったことを記者会見で訴えればいいのだ。このあたりの説明がないまま、平野博文内閣官房長官が定例記者会見で、逃げの姿勢で対応するため、結果的に、鳩山政権の経済政策が混迷状態、という印象だけ与える結果になってしまう。
 要は、鳩山首相は、政権のトップリーダーなのだから、まずは毅然とした政策方針を打ち出し、経済の先行きについて、いい意味での方向づけをすべきだ、と思う。現時点では何のメッセージも発さず、ただただ状況に流されているだけ、という印象を与える。いま多くの有権者や国民が求めているのは、鳩山首相の強いリーダーシップ、とりわけ先を見据えた経済成長戦略、そして日本がどういった道筋をめざしているのか、その方向づけなどを力強くメッセージ発信してほしい、というところでないだろうか。

著者プロフィール

  • 牧野 義司
  • 1943年
  • 大阪府
  • 早稲田大学大学院

今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

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