企業はなぜ失敗を繰り返すのか JR北海道やみずほ銀問題は深刻


時代刺激人 Vol. 229

なぜ企業は同じ失敗を繰り返すのか、と思わず言いたくなるような不祥事が最近、続発している。すでにご存じのJR北海道が鉄道の運行管理上で重要なレールなどの安全管理を長期にわたって怠っていた問題、メガバンクのみずほ銀行が反社会的な暴力団員向け融資を行い、取締役会に報告が上がっていながら対策を講じていなかった問題がそれだ。

いずれの企業とも、過去に企業のガバナンスが問われる列車事故やシステム障害などの問題を経験しており、経営的には問題克服していたはずなのに、またまた同じガバナンスが問われることを繰り返していたわけだ。事態は重大だ、と言わざるを得ない。
コラムでは東日本大震災と東電原発事故の影響を受ける福島県南相馬市の問題をテーマにしているうちに、取り上げるタイミングを失してしまったが、企業のガバナンスの問題は重要なので、今回、正面から向き合ってみたい。

コーポレート・ガバナンスに問題、
背景には経営分割や経営統合の後遺症?
 結論から先に言えば、この2つの企業に共通するのは、経営にとって致命的ともいえるガバナンス欠如があった、と言って間違いない。
コーポレート・ガバナンスは、ネット上の百科事典、ウイキペディアによると、企業が不正行為の防止と競争力や収益力向上を総合的にとらえ、企業価値増大に向けた経営を行う仕組みを言う。要は、経営首脳部で決めた組織改善策などをどう実行するか、その取り組み状況をいかに管理・監督するかの内部統制、さらに企業システムの機能をチェックする監査がポイントになるが、この2社では、どうもそれらが機能していなかった。

問題はまだある。JR北海道の場合、1987年の旧国鉄の分割・民営化に沿って経営分割されたが、東日本、東海、西日本の中軸JR3社と対照的に、乗客人口が少ないうえ、管轄区域が膨大で保守管理負担が大きいこと、さらに労使対立が深刻といった、経営分割の後遺症がガバナンス欠如に結びついてしまったことだ。
みずほ銀も2002年に旧第一勧業銀、旧富士銀、旧日本興業銀の3行の経営統合に伴い、プライドの高いバンカーたちの確執が互いの足の引っ張り合う結果となり、システム障害への対応遅れなどガバナンス欠如の引き金を引いた面がある、と言っていい。

顧客目線が欠け、JR北海道は
労使対立が先行し乗客の生命や安全は二の次
 しかしこの2社の経営にとって、もっと大きな問題は、率直に言えば顧客重視の目線が欠けていたことだろう。
とくにJR北海道は、あとでも述べるが、労使に深いミゾがあり、顧客である乗客の生命重視や安全確保が結果的に二の次、という信じがたい状況にあったことが次第に明らかになってきている。公共輸送機関の経営に携わる資格なし、と言っていいほどだ。コーポレート・ガバナンスが問われる、というのはまさにその点だ。

同様に、みずほ銀も似たような問題がある。巨大メガバンクの一角を担う有力な金融機関なのに、金融システム破たん時のトラウマか、金融庁の厳しい監督の影響で不良債権を発生させないことにエネルギーを注ぎ、個人顧客や中小企業向け融資に厳しい態度をとることが多かった。ところが、系列化した信販会社オリエントコーポレーション(オリコ)の暴力団向け融資に関してはルーズで、問題融資が発覚したあとの対応も、あとで述べるようにコーポレート・ガバナンスが問われるような経営の姿勢で、企業の目線が、肝心の顧客本位でなかったということだ。

JR北海道には安全文化がないのだろうか、
脱線炎上事故も事態改善策が見えず
 まずはJR北海道の問題から見てみよう。農業の取材でJR北海道を利用することが多かったが、今回、安全文化があるのだろうか、と思わず考えざるを得ない事態が相次ぎ、これでも公共輸送機関なのだろうか、と思ってしまった。
2011年の石勝線のトンネルで特急列車が脱線炎上したあと、今年に入って一気に事故が多発している。4月、5月、7月に函館線での特急列車の相次ぐ出火事故、そして8月、9月に同じ函館線で連続して貨物列車の脱線事故がそれだ。

極めつけは、この最後の9月の貨物列車の脱線事故をきっかけに、JR北海道が原因となったレールの補修放置が他の線区であるのかどうか、レール異常の点検を行ったところ97か所の補修放置があったこと、このうち49カ所は実際に乗客を乗せて列車運行させているレールだったことで大騒ぎになった。そこで、国土交通省が鉄道事業法にもとづく特別保安検査を行ったところ、新たに函館線など7路線でレールの異常放置があった個所は驚くことに何と170にのぼったため、問題が一気にエスカレートした。

『安全経営』託して2011年秋に自殺した
中島元社長の遺言メッセージも生かされず
 ところが、経営の最高責任者の野島誠JR北海道社長が9月22日の記者会見で「手が回らず補修を後回しにしていたようだ」と、他人事のようなあいまいな言い方で終始したため、経営のガバナンスが問われる事態になった。私も、この記者会見記事を見て、JR北海道の安全文化の欠ける経営体質に驚かされたが、現場取材に行ける状況でなかったので、メディア報道を注意深くチェックした。

その中で、毎日新聞が10月8日付の朝刊企画「鉄路の背信――JR北海道異常放置」の記事が気になった。JR北海道は2011年5月27日の石勝線での特急列車の脱線炎上事故をきっかけに再発防止の教訓にするため、今年4月から札幌市内の社員研修センターに、その事故車両を展示しているが、教訓が生かされないまま、今回のような異常事態が続いている現実を記事で指摘している。
さらに、その企画記事では、事故当時の社長の中島尚俊氏(故人)が国土交通省からの事業改善命令への対応で、安全性向上のための行動計画に関して担当部局がつくった案に手を入れ「会社発足時、厳しい経営環境の中で緊張感があったが、徐々に体質にゆるみが出ている」と指摘、その行動計画書を政府に提出する直前の2011年9月、「安全を最優先にすることを常に考える組織になってほしい」という遺書を残して自殺した。こうした犠牲を伴っているのに、経営のガバナンスは何も改善していなかった、という。

JR北海道の場合、経営分割時点からの
労使のミゾの深さがガバナンス欠如にも
 問題を浮き彫りにする記事が10月4日付の日経新聞朝刊、10月7日付の産経新聞にも出ていた。それは冒頭部分にも書いたJR北海道での労使のミゾの深さ、さらに相対立する労組が現場でコミュニケーション・ミスをもたらし安全文化が二の次になっている、という指摘を行っていることだ。とくに日経新聞報道によると、中島社長が自殺したあと小池明夫会長(2011年9月当時)が急きょ、社長に復帰した際、JR北海道にとって大きな課題だった労務対策に関して、中島前社長の事態打開策に対して、小池氏は労組問題に干渉しない及び腰の姿勢になり、トラブルも増えた。そして、今年6月に現在の野島社長にバトンタッチとなったが、先ほど述べた9月22日の補修個所の異常放置に関する記者会見発言に見られる経営のガバナンスのなさとなっている。

次に、みずほ銀の暴力団向け融資の問題に移ろう。すでにメディア報道で、概要をご存じだと思うが、2010年12月にみずほ銀はオリコとの提携ローンに暴力団組員らへの約2億円の融資があることを知ったのが発端。その2年後の2012年12月に金融庁検査で、その暴力団組員への融資が発見されたが、金融庁はなぜか今年9月になって、みずほ銀に対してその問題融資を放置したままであることが問題であるとして、業務改善命令を出し、表面化した。

みずほ銀の暴力団向け問題融資放置で
金融庁、メディアを欺く情報開示体質
 しかしみずほ銀の問題は、問題表面化後のメディア対応で、とくに情報開示の面にあった。金融機関のメンツの問題なのか、もともとの閉鎖体質が出たのか見方が分かれるが、本来ならば、企業に姿勢として機敏かつ正確に情報開示し、企業としての問題対応に積極的であるべきなのに、現実はそのことからはほど遠かった。

とくに、この暴力団員への問題融資を放置していたことに関して、法令順守担当の役員どまりで対応していた、という当初の説明から、その後の記者会見で「申し訳なかった。実は、歴代3人の頭取が報告を受けていた」と言い直した。金融庁だけでなく、メディアもミスリードされていた。そればかりでない。問題融資が取締役会で報告されながら、なぜか議論にならなかったことも判明した。何ともメガバンクの一角を担う金融機関とは思えないガバナンスのなさだ。

過去のシステム障害時の教訓生かされず、
3行対等の経営統合で足の引っ張り合い
 みずほ銀は第3者委員会を急きょ設置し、この問題融資がなぜ2年間も放置されなかったのかを含め真相解明に当たるというが、かつての九州電力のケースのように、問題対応でつくった第3者委員会の報告に対して、積極的な改善・対応策をとらず、単なる外部へのポーズでしかなかったため、大きな批判を浴びたことを教訓に、しっかりとした対応をとるように求めたい。とくに、みずほ銀が3行統合時のコンピューターシステム障害で金融混乱を招いた当時のコーポレート・ガバナンスの欠如問題はいまだに記憶にあるだけに、ガバナンスの改善が見ものだ。

さて、今回の2つの企業の問題は、過去にさまざまな問題事例を抱えて、痛い目にあっておきながら、なぜ失敗を繰り返すのか、経営のガバナンスがさっぱり改善、あるいは改革されず、同じような経営組織課題を引きずっているのか、という点に尽きる。
JR北海道の場合、旧国鉄の経営分割で厳しい経営課題を背負ったのは事実だが、当時、国から他のJR分割会社よりも金額が突出する6822億円の経営安定基金を受け、経営支援のバックアップを受けた。むしろ、北海道内でただ1つの長距離路線を持つ鉄道という慢心が経営面で競争意識を欠いた可能性があるし、また労使のミゾの問題にしても、それが経営の先端部分から末端の現場に至るまで安全確保、安全重視の意識の欠如につながっていたとしたら重大問題だ。

大組織病の病根持つ企業は他にもある、
顧客重視を忘れた供給先行型経営は問題
みずほ銀も冒頭に述べたように、3行の経営統合から、すでにかなりの年数がたつというのに、形式的に対等の統合だったことがかえって災いしたのか、未だに一体化、同質化出来ていないとすれば、これまた問題だ。

2つの企業の事例は、たまたま浮かび出てきた問題で、実は、他の数多くの企業にも存在する病根かもしれない。冒頭部分でも述べたように、顧客重視の姿勢が欠如していることが大問題だが、外部の顧客・消費者目線を忘れて自己規律のないまま、供給先行型の企業成長パターンにこだわったりすれば、必ず反発を招き、その企業自身が淘汰を受けると思う。その意味で、今回の2つの企業がコーポレート・ガバナンスの面で、どこまで改革に取り組むかが焦点だ。

著者プロフィール

  • 牧野 義司
  • 1943年
  • 大阪府
  • 早稲田大学大学院

今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

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