全国の信用金庫を窓口に保険販売、潜在ニーズを掘り起こして、地域の顧客に万が一の備えを
フコクしんらい生命保険株式会社
代表取締役社長
櫻井 健司
全国の信用金庫を中心に代理店チャネルによる保険販売事業を展開しているフコクしんらい生命保険。一時払型の個人年金保険をメインに契約高を伸ばしていた同社に大きな転機が訪れた。
「当社に限らず、金融機関の経営に重くのしかかったのはマイナス金利政策です。2016年から政策導入されて以来、これまでにほぼ金利はなくなっている状況です。当社の場合、信用金庫を通じて販売していた主力商品が一時払型の個人年金保険でした。いわば、銀行預金の延長線上にある商品で、金融機関の窓口で比較的販売しやすいという特長がありました」
信用金庫の顧客に一定のニーズがあり、信用金庫と同社の双方にとって魅力的な保険商品だったという。
「マイナス金利政策によって一時払型の個人年金保険は販売を休止せざるを得ず、契約数や契約高は激減し、苦しい状況が続きました。そこで個人年金保険など貯蓄性の高い保険商品から、保障性商品へと軸足をシフトする方針を打ち出したのです」
もともと信用金庫の顧客は、地元の中小企業に勤める人が多くを占める。
「地域に根差した中小企業の多くは大企業のように、団体保険やグループ保険といった福利厚生制度が十分に行き渡っていません。こうした方を対象に、廉価で分かりやすく、気軽にご加入いただける保険をご提供するのが当社の役割だと考えました」
しかし、これまでとはまったく方向性の違う保険商品を信用金庫の窓口で販売することは困難を極めた。
「預金したい、車を買いたい、おいしいものが食べたいというのは、お客さまが必要性を自覚している顕在ニーズです。しかし、そもそも自ら進んで保険に入ろうと考える方はあまりいません。『万が一に備えて保険に入っていますか?』『これでは十分ではないかもしれませんね』などと、コンサルティングが必要なのが、保険商品をはじめとした潜在ニーズ商品です。特に保障性商品の販売では、入院時や万一のときの備えに必要な金額を示しながらニーズを喚起し、潜在ニーズを顕在化する工程が必要です。保険はいくら良い保険商品を開発しても、販売前に必ずこのニーズ喚起が必要なのです」
潜在ニーズを顕在化するのは簡単ではないが、同社は保険会社としてそのノウハウを持っていた。これを信用金庫と共有する方策を探った。
「時間をかけて必要性を説いて、やっと『1本くらい保険に入っていなければ心配かな』などと思っていただけます。本業として保険商品を販売している保険会社の社員でも難しいことなのです。実際に信用金庫の窓口ではさらに厳しい状況でした。当社から研修に出向いて、信用金庫の担当者にロールプレイングや同行指導を行うなど、スキルアップのためのサポートをしました」
その結果、平準払の保障性商品として、現状の医療に対応した『解約返戻金抑制型医療保険』、一定期間大きな保障が得られる『定期保険』が新たな主力商品になった。現在は、認知症や要介護状態までをカバーする『介護保障定期保険特約』や『軽度介護保障特約』をこれら主力商品とセットで販売し、幅広い保障の提供を推進している。また低金利環境でも一定の商品性を維持できる保険商品として、万一のときの保障が一生涯続き貯蓄性も高めた『利率更改型一時払終身保険』も開発・販売している。
「長年保険を販売していても、お客さまが自分から積極的に入っていただけるケースは少なく、何度も詳しくご説明して、万が一のためにとご納得いただき、ようやくご加入いただけることが多いものです。お客さまに万が一のことが起こったときに初めて、『あのときに勧めてくれてありがとう』と感謝のお言葉をいただける、それが保険なのです」
都市銀行や地方銀行など、さまざまな金融機関のなかで、信用金庫ならではの特長を生かした取り組みを行っている。
「信用金庫は地域に根ざした金融機関ですから、その地域周辺のご事情をよく知っています。例えば、長寿化が進む中で認知症になられる方やそのご家族、ご近所の方もいらっしゃいます。そうしたお客さまを対象に、信用金庫や業務提携先である株式会社公文教育研究会とともに『認知症予防セミナー』を開催したり、認知症になった場合に給付金が受け取れる保険をご案内するなど、地域密着のメリットを生かし、さまざまな工夫をしてご紹介しています」
信用金庫との連携は今後も揺らぐことなく、さらに良好な関係を目指していくという。
「信用金庫をビジネスパートナーとして展開していく方針は今後も一切変わりありません。密接な関係を維持しながら、信用金庫やそのお客さまの一翼を担うことで、より大きな社会貢献を果たしていきたいと考えています」
信用金庫は地域にとって、身近で頼れる大きな存在だ。その顧客には、新型コロナウイルスの影響で苦渋を強いられた飲食店関係者も多く含まれる。渉外の場では、迅速な緊急融資など「今こそお客さまのために汗を流すときだ」と金融機関のビジネスを超えて奔走している姿もあったという。その信用金庫とともに、地域の顧客に資する保険会社として、今後も使命を果たしていく方針だ。
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