コロナ危機対応での日本の危機管理は最悪


時代刺激人 Vol. 316

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

ワクチン開発成功で危機克服した先進事例を見習え

コロナ禍に対応する日本の危機管理は率直に言って、最悪の状態にあり、ここは総力を挙げて、対応するしかない。米国の事例を見てわかったことだが、画期的なワクチン開発の成功、それに伴う迅速なワクチン供給、接種によって、一時は最悪状況にあると見られた米国経済社会のコロナ禍が、見違えるように収束方向に向かった。この先進事例を見る限り、ワクチン開発、供給体制の整備によって接種を最優先課題にすることが何よりも重要だ。

ワクチン国内開発や輸入対応がなぜ遅れたのか検証必要

そこで、日本の危機管理対応で問われるのは、なぜ、1年半前にグローバルなコロナ禍が日本にも押し寄せることがわかった時点で、ワクチンの国内開発や海外の医療先進国からのワクチン輸入に道筋をつけなかったのか、という点だ。コロナ感染防止対策はもちろん、当初から全力投球すべきだったが、それとは別に、政治主導でワクチン開発に積極的に踏み出すと同時に、米国などからのワクチン輸入確保に積極対策をとるべきだった。根拠なき楽観的見通しに終始する政治リーダーの責任は重い。

実は、菅首相が記者会見で「ワクチン接種が新型コロナ感染対策の決め手になるので、河野太郎行政改革担当大臣をワクチン担当大臣に任命する」と表明したのは今年1月18日のことだ。明らかに、政治の対応が遅かった。ワクチンの国内開発、それと並行しての米国産ワクチンの輸入確保が遅れたのはなぜなのか、イスラエルのようにワクチンの国内開発体制にない国が戦略的アクションでワクチン接種を行った事例を踏まえ、何が危機管理策かを改めて学ぶことも重要だ。同時に、今後の危機管理のためにも、なぜ取り組みが遅れたのか、政治判断のどこが問題か、国内メーカーの開発課題は何かなどの検証も必要だ。

東京五輪は状況次第でメンツ捨て緊急中止の政治判断も

そうしたコロナ感染リスクが強まる中で、東京五輪・パラリンピックが開催される。ところがメディア報道では、南アフリカなどの海外選手の中にコロナ陽性反応の選手が出ただけでなく、海外から参加の大会関係者の間で感染リスクが高まってきた、という。ワクチン接種を受けていない日本のボランティアなどの感染拡大するリスクも一気に強まった。

感染リスクの高まりを背景に、コロナ緊急事態宣言が出されている中での東京五輪開催に関して、私は、早い時期から、開催中止もやむなし、と見ていた。しかし、開催に踏み切った今、最悪の事態が想定されるならば、危機管理という観点から、大会開催中でも状況次第で、菅首相ら政治リーダーが、開催国のメンツやプライドを捨てて関係国に緊急中断や中止を伝える政治判断が重要、と考える。必死で東京五輪に向けてエネルギーを集中してきた選手の人たちには申し訳ないが、変異型ウイルスの感染が一気に拡大し、東京五輪どころでないとなったら状況は変わる。非常時における危機管理を優先すべきだ、と考える。

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