時代刺激人 Vol. 318
牧野 義司まきの よしじ
1943年大阪府生まれ。
最大のポイントは自宅という固定資産の売却処分
そこで本題だ。私の場合、両親がともにかなり以前にほぼ85歳で他界しており、親の介護などの問題がほとんどなかった。また、3人の息子たちは会社勤め、あるいはベンチャービジネスを立ち上げて活動しており、あとは私自身がどう対応するかどうかだけだった。
身軽になる最大のポイントは、自宅という固定資産の売却処分だ。我が家の場合、新築してから築21年たった中古住宅ながら、軽量鉄骨づくりで内装に気を付け補強修理も心掛けてきていたので、見栄えも悪くなかった。それでも中古住宅なので、売れるだろうか、値下げを求められるリスクが大きいのでないか、と懸念したが、運よく1か月ほどで売却できた。この点はラッキーだった。
自分の家を持つことに伴う住宅ローン返済負担はすでに終えていたが、今回、自宅の売却で固定資産税などの税負担、庭の手入れはじめ屋内の掃除などの作業から一気に解放された。自分事のように申し上げているが、実は、長年の人生のパートナーと言えるわが女房の負担軽減の意味合いがはるかに大きい。
シニア向け賃貸マンションはバリアフリーなどに配慮
私たち夫婦は、資産売却のメドがついた段階から、新たな固定資産を持たずシニア向けの賃貸マンションを、と考え、物色を始めた。しかし一般の民間賃貸マンションは、不動産会社の話では、貸主の大家さんたちが、生活保護世帯や高齢者には冷淡で、さまざまなリスクファクターがある、と拒むケースが多いことを知っていたので、全く対象外だった。
ターゲットに置いたのは、時代状況を見据えた企業が、シニア向け賃貸マンション開発に取り組んでいる事例だ。その1つ、旭化成の子会社、旭化成ホームズが東京都杉並区内に新築で建設中の賃貸マンションがあり、見学したところ2LDKで72平方メートルのゆったりスペースで、バリアフリーの工夫が随所に施され、看護師さんの見回り訪問、綜合警備保障会社によるもしもの場合の安全確保体制などに強い興味を持った。
この賃貸マンションは、介護&食事サービス付きの高齢者向け住宅とは違って、一般マンションと同じのすべて独立自炊生活。月額賃料は、設備内容から見て飛び上がる高さでなくリーズナブルだったので、契約して入居した。固定資産を持たない気軽さは実に大きい。
引っ越しでの苦労は予想外、でも数年後ならば遅きに?
ただ、身軽化作戦である程度覚悟をしていたものの、予想外に大変だったのが引っ越しだ。一軒家から一気に手狭なマンションの転居のため、まさに「断捨離」が必要で、さまざまな家財道具や蔵書などを大処分せざるを得なかったが、夫婦で四苦八苦の難作業の日々が続いた。でも、今は転居してみて、本当に身軽になった、というのが実感だ。
私の場合、今は健康で認知症リスク、高齢者うつといった状況でなく、アクティブシニアの活動が行えている。しかし、今後、仮にフットワークの衰えなどが顕在化したりすることを考えれば、今回、身軽化作戦に踏み切ったのは大正解だった。数年後ならば、遅きに失して、機敏な対応はとても取り得なかったのでないか、と思っている。
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