地方創生仕掛け人、山崎さんが面白い カギは巧みなコミュニティ・デザイン力


時代刺激人 Vol. 259

2014年最後の「時代刺激人」コラムは、新しい年の日本の政策テーマになる地方創生にスポットを当て、その地方創生のさまざまなプロジェクトに間違いなくかかわりそうな面白い人物を取り上げてみたい。

2014年最後の「時代刺激人」コラムは、新しい年の日本の政策テーマになる地方創生にスポットを当て、その地方創生のさまざまなプロジェクトに間違いなくかかわりそうな面白い人物を取り上げてみたい。その人はコミュニティ・デザイナーの山崎亮さんだ。
コミュニティ・デザイナーって、具体的に、どんな仕事をいうのだろうかとか、山崎さんのどんな点が面白いというのか、たぶん、お知りになりたいと思うが、その前に、安倍政権が12月27日の閣議で決定する地方創生の長期ビジョンと総合戦略に関して、全体状況を把握する必要があるので、少し述べておこう。

安倍政権の地方創生総合戦略は
2020年時点の数値目標が柱、計画倒れ懸念も

結論から先に申し上げれば、人口減少や人口の高齢化に伴い地方自治体が地域を支える機能を失い事実上の地方消滅の危機が今後、具体化するという調査研究報告をもとに、安倍政権は危機感を強め、地方創生に力を注ぐのだ、と踏み出したにもかかわらず、2020年時点の数値目標を描いただけで、いまひとつインパクトに欠ける。

その数値目標は、具体的には地方で若者の雇用について、今後5年間で30万人分を創出すること、働く女性が1人目の子どもを出産したあともさまざまな職場で働き続ける割合の就業率を現在の38%から55%に引き上げること、大都市への人口集中に歯止めをかけるため、東京からの転出・東京への転入に関して、現在の10万人超過状態を転出・転入を差し引きゼロにすることなどが盛り込まれている。しかし、こういった目標数字は、過去の経験から言っても単なる計画数字で、具体性に乏しい。まさにアクションプログラムの具体的な裏付けがないと、モノゴトは何も動かないのだ。いわば計画倒れ懸念もある。

政府側は「お上頼み」なくし地方主導計画を期待、
新交付金制も準備というが、、、

この懸念に対して、ある政府関係者は、政府としては、今回の閣議決定を踏まえて、まずは2015年度中に全国の関係する自治体に「地方版総合戦略」を決めてもらう。その際、国は新型の地方交付金制度を創設して、使い道に関して注文をつけたり、制約をつけるようなことをせずに、それぞれの自治体が独自の地域活性化策をつくるようにバックアップしていく、と述べている。

陸の農業とは無縁の海洋学部卒業の学士ばかり、と言う点が何とも興味深いが、持ち前の研究熱心さ、フットワークのよさに加え、農業に対する積極的な取り組み、とくに勘や経験といった伝統的な農業手法に頼らず、むしろデータ管理を含め製造業の経営手法を生かした生産工程管理を導入した点が大きな特徴だ。

要は、これまでのような「お上(かみ)頼み」のプロジェクトにせず、地方自治体、それぞれのコミュニティ、住民がみんなで知恵を出し合って生き残り策を考えていってもらうことが今回の地方創生の基本の基本部分で、国は今後、プロジェクト支援の側に回る。このため、現在1700億円の新交付金を準備するので、文字どおり、自由な発想でイキイキするプロジェクトをつくってくれれば、政府はそのインフラづくりに最大限の協力をする、というのだ。それ自体は、私も異存ない。ただ、問題は、「お上からの指示待ち」「前提踏襲」「横並び」の体質が強かった全国の自治体、それにコミュニティ、住民の人たちがチャンスとばかりに、どこまでアクティブに動き出せるかどうかだ。

地方で組織を動かし人を動かすリーダーを待望、
山崎さんはその期待に応える?

正直言って、農業現場の取材などで毎月、さまざまな地方に出かけるチャンスの多い私から見て、元気で躍動的な農業者に出会うと、まさに拍手喝采で、時代刺激人ジャーナリストの立場で応援しようとなる。ところが地方によっては、シャッターが下りて人の往来も少ない商店街が多く、そういった薄商い閑散状況のもとで、何から手を付ければ、このコミュニティは活性化するのだろうかと考え込んでしまうことも多々あった。組織を動かし、人を動かすリーダーにも事欠くのが偽らざる実情だったからだ。

今回、取り上げるコミュニティ・デザイナーの山崎さんは、そういった問題解決にぴったりの素晴らしい資質を持った人なのだ。実は、農政ジャーナリストの会という、私もメンバーの組織が山崎さんをゲストスピーカーにお招きして、地方創生の現場が今後取り組むべき課題について話をしてもらう、というプロジェクトがあったので、参加したら、これが大当たり。時代が閉そく状況なので、ジャーナリスト目線で時代を刺激する、というのが私のセールスポイント?だったが、私自身が、山崎さんの話を聞いていて、思わずわくわく感が出てくるほど、さまざまな組織や人を動かす現場事例がいっぱいだったのだ。

コミュニティ・デザインは昔の概念と違い、
人が互いにつながりを持つためのデザイン

山崎さんの取組みをご紹介する前に、コミュニティ・デザイナーという仕事の中身を申し上げよう。山崎さんによると、コミュニティ、つまりさまざまな人たちが生活の場に、あるいは仕事場にといった形で人々が集まるコミュニティで、人が互いにつながりを持つためのデザインを行う、というのがコミュニティ・デザイナーの仕事だ、という。

とくに山下さんらが意識したのは、先進事例を学習することだった。葉ネギ栽培でカベにぶつかっていた時に門をたたいたのが静岡県浜松市の有限会社グリンオニオンの河合正博社長だ。河合さんは、葉ネギのブランド化を実現したプロ農業者だが、山下さんらの技術を盗むというよりも、自分たちがカベにぶつかった現実を率直に伝えて教えを乞いたい、という姿勢に納得し積極的に学習指導に協力してくれた。今でも3人の師匠だという。

コミュニティ・デザインそのものは、かつて人口の大都市集中という形で都市化が進んだ際、それらの人口を収容するニュータウン建設が活発化し、それらのニュータウンで住民が互いのつながりをつくりだすための広場や集会所などをどう作り出せばいいのか、といったデザインが必要になり、いわゆる商品などのデザインとは異なるコミュニティ・デザインがあったので、言葉自体はずっと以前からあった。
ただ、山崎さんによると、今では日本の国や地方、コミュニティの至る所で無縁社会化が進んできており、かつてのコミュニティ・デザインの発想でもって住宅の配置や公園づくりなどの物理的なデザインを行うだけでは、人のつながりが生まれず、その意味で新たなデザイン力が求められる時代になった。山崎さん自身はそういった問題意識でデザイナーとして取り組んでいる、というのだ。

香川県観音寺市での「まちなか再生計画」で
ショップ・イン・ショップを提案

山崎さんが具体的に取り組んだ事例は数多くあるが、話を聞いていて、興味深かったのは香川県観音寺市から業務委託を受けた市内の中心部のシャッター通り化した商店街「まちなか再生計画」のプロジェクトだ。

50歳から70歳までの商店主のおじさんたち50人と一緒に議論しながら、2000年以降、灯が消えたように人通りもなく閑散としてしまった商店街の再活性化をめざしてほしい、というものだ。山崎さんの手法はワークショップという形でディスカッションしながら問題を抽出し、自分たちでスクラム組んで何がやれるかなどを次第に浮き彫りにしていくのだが、商店主たちはほとんどがマンネリズムに陥っていて、なかなか積極的にならない。
さすがの山崎さんも苛立ちを隠せなかったが、ワークショップを重ねるうちに、組織や人を動かす、あるひらめきが生じた、という。その1つは、ショップ・イン・ショップ、つまり店の中にもう1つの店をつくる事例が観音寺市の商店街にあり、アイディア次第で面白いビジネス展開になることを提案したのだ。

商店主たちが発想の転換を評価、
マンネリズムを打破するビジネスチャレンジも

具体的には、女性の下着など洋品雑貨を売っている店の中に、その店の経営者夫婦の息子がパティシエ経験を生かしてケーキなどスイーツの店を出してビジネス展開しているのだが、甘いもの好きの女性が下着や洋品雑貨を買うと同時に、同じ店内でスイーツを買うという異業種コラボレーションが山崎さんにしてみれば「面白い」事例で、「まちなか再生計画」の1つとして、それぞれの商店主が同じように、意外性を持たせながら、別のモノを店内で販売するといったショップ・イン・ショップにチャレンジしてみたらいい、という提案だ。
発想の転換の面白さだが、これが1つの刺激になって、マンネリズムに陥っていた商店主たちがやる気を見せた。現に、このショップ・イン・ショップが刺激剤になっていくつかのチャレンジが生まれた。

商店主たちが居酒屋で「今宵も始まりました」と
FB発信したら一気に全国ネットに

もう1つは、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の1つ、フェースブック(FB)に縁遠かった商店主がちょっとしたきっかけで、このFBを活用し「今宵も始まりました」というネットワークづくりを始めたら、これが全国の関心事となり、今や観音寺が全国区の話題になったが、そのきっかけをつくったのが山崎さんで、商店主たちに自信を植え付けた、という話だ。
これだけの話だと、いったい何の事?と思われるだろう。実は、山崎さんがワークショップを進めていても、50人の商店主の人たちの関心事は、終了後の居酒屋でのノミュニケーション、早い話が酒を酌み交わしながら、みんなでわいわいがやがやコミュニケーションを図ることにあった。
そこで、山崎さんが一喝し、「失礼ながら、ワークショップが本題で、居酒屋会合を楽しむだけの集まりにしてはダメだ。以後、居酒屋の話はご法度」とした。さすがに商店主たちも会合の趣旨を踏まえて、まじめに対応したが、それでもお酒好きの数人が個別にひいきの店に行き、その店からスマートフォーン上のFBを活用して「いま、ここにいるぞ」というシグナルを「今宵も始まりました」という形でFB上に流したら、これが全国のFBを見ている人たちが「いいね」「いいね」のサインを送る結果となり、一気に香川県観音寺市のおじさんたちが面白いアフターファイブ(午後5時以降)プロジェクトを展開していることが評判になった。
山崎さんによると、商店主50人のうちFBを扱えるのがわずか3人だったが、今やそれが大きな輪になり、FBを使っての情報発信、メッセージ発信によって、自分たちをアピールできることがわかった。そればかりでない。この観音寺市商店主の「今宵も始まりました」ネットワークに神田はじめいくつかの所から声がかかり、新たなネットワークづくりになった。

山崎さん「FB使って情報発信したら
外部の人たちとかかわる仕組み発見が成果」

山崎さんは「このFBのネットワークは『まちなか再生計画』とは無関係ですが、結果的に、商店街のおじさんたちがFBというSNSの新ツールを使って、情報発信したら、予期しない人たちとのネットワークづくりにつながるのだ、ということを知ったのです。見もしない、外部の世界の人たちとかかわり得る仕組みづくりがあるのだ、ということを知っただけでなく、これをきっかけに『観音寺市で今、面白いプロジェクトが起きているぞ』などと情報発信すれば、新たな広がりをつくれることを知ったのです。とても重要なことです」と述べる。

これは一例に過ぎない。もっとほかにもあるが、聞いていると、いろいろな地方での仕掛けが大きな広がりを持ってきている。山崎さんは、愛知県東海市の生まれだが、実家の仕事の関係で大阪府枚方市に育った。大阪人特有のフットワークのよさ、誰とでも気軽に話しかけてすぐに仲良くなるコミュニケーション力のよさなどを持ち合わせている。現在、41歳の若さながら、行動力があって日本国内のいろいろな地域の現場で、アクティブに活動されていて、とてもわくわく感のある人だ。

著者プロフィール

  • 牧野 義司
  • 1943年
  • 大阪府
  • 早稲田大学大学院

今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

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