企業年金消失させたAIJ許せない 旧社保庁OBも関与、基金巻き込む


時代刺激人 Vol. 175

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 かなりの中小企業の人たちが今、独立系投資顧問会社の許せない行動で、一気に苦しい状況に追い込まれている。そればかりか、それら企業加入の厚生年金基金の破たんリスクが表面化する可能性もあって、年金が受け取れるかどうかも危うい。

問題発覚後は旧社保庁OBは「自分も被害者」と主張

ところが、もっと問題なのは、このOBは、事件のことをまったく知らなかったという。要は、AIJが運用していたはずの2000億円にのぼる年金が運用の失敗などでほとんど消失していた、という事実を知って驚いたこと、「AIJをプロとみて信用していたので、投資運用先に関して、何の疑問を持たなかった」と、偽装された投資運用実績の数字を鵜呑みにしていたこと、むしろ、自分も被害者だと強調していること――などだ。本当だろうか。思わず首をかしげたくなる。

そこで、ここまで申し上げてきたことで、重要なことは、AIJも大問題だが、旧社保庁OBが厚生年金基金に天下った後輩OBの投資運用に関する無知や不勉強さを巧みに活用して勧誘、後輩OBも先輩との人脈ネットワークを大事にしたいと盲目的に信用して厚生年金基金を破たんの危機に陥れているということ、つまりは旧社保庁の天下り官僚の保身行動や投資運用に関する不勉強さが思わぬ大問題を引き起こした、ということだ。

独立系投資顧問会社AIJがなぜここまで急成長できたか、実は、、、

さて、いよいよ本題のAIJだ。スクープした日経新聞の最初の報道でまず驚き、その後のさまざまなメディア報道で、さらに驚きという、まさにサプライズの連続だ。監督機関の金融庁が問題表面化と同時に、波及を懸念して、すかさず業務停止命令を下したのは当然だろう。検証報道を含めて、いろいろな報道を総合すると、AIJは、野村証券OBの浅川和彦社長が2004年に設立した独立系の投資顧問会社だが、企業年金、厚生年金基金の運用の受け皿として、租税回避地として、かねてから有名なカリブ海の英領ケイマン諸島で私募投資信託を設定して運用したのをはじめ、ディリバティブを含めいくつかの金融商品に投資運用した、という。

ところが、問題はそのあとだ。報道によると、AIJは設立後、月次の運用実績がマイナスになったのはわずか7か月だけで、それ以外は終始プラスで推移、運用開始後の収益率が245%にも達し、これが話題を呼び、旧社保庁OBの勧誘効果も加わって、一気に厚生年金基金からの委託が急増した、という。
そればかりでない。2008年に世界のマネーセンター、米国で投資銀行業務を行っていたリーマンブラザーズ証券が破たんし、次々に大手の銀行、証券に波及して世界的な金融システム不安を引き起こしたリーマンショック時、さらにその後もAIJの基幹ファンドの収益率がよかった、という。

浅川社長は「当初から運用に失敗、1年で500億円の損失も出した」

これらは、実は虚偽、ねつ造話だった、ということがあとで判明する。報道によると、浅川社長は証券取引等監視委員会の事情聴取に対して、「運用に失敗し、1年で500億円の損失を出したこともあったほか、最近3年間では1000億円近い損失に及んだ」と述べたというから、これまた驚きだ。
民間の格付投資情報センター(R&I)が発行する「年金情報」という専門家向けの雑誌で2008年11月、つまりリーマンショック時に、全国の企業年金などを対象に、資金や年金基金の運用先に対する満足度を評価してもらうアンケート調査を行ったところ、AIJがトップ評価だった。

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