93歳でも「過去に関わっていては先に行けません」の前進力
株式会社マネジメントサービスセンター
顧問
梅島 みよ
1966年、コンサルタント会社として創業し高度経済成長期から現代まで時代のニーズに応じて、様々な人材育成プログラムの開発、提供に取り組んできた梅島。時代を超えて個人の能力、資質の現状把握と可能性の発見を担ってきた人材アセスメントとは?
福井「日本に招いて、講義をしてください」とおっしゃるぐらいですから、最初に会ったときに感動した点があったと思うのですけれども。やはり、一番驚いた点は、これは新しいなと思ったところはどういうところですか?
梅島男性と女性の管理能力に差はないと言われたことです。私どもの会社の恩師です。
今回は梅島の50年代の友人で心理学者であり、DDI社のエグゼクティブ・チェアマン、ウィリアム.C.バイアム博士を特別ゲストとしてお招きした。
博士お会いできて嬉しいです。
福井お会いできて嬉しいです。バイアム博士は、梅島さんの最初のお会いしたときの印象はいかがでしたか?
博士彼女には本当に感心することばかりでした。女性でこのような地位に立っている人はその当時、日本にはあまりいませんでした。世界中を旅していろいろな知識を持っていて、何もかもよく知っている方でした。本当に素晴らしい女性です。
宮川出会われたころ、日本の企業の人材育成についてはどういうふうにお感じになりましたか?
博士日本では人材開発を全くやっていませんでした。人をただ組織のポジションに置いて、5年経ったら適当に他の部署に動かすという人事でした。
その社員にどんなスキルが必要であるかとか人材開発に関して全く考えていませんでした。人材開発という視点で見ていなかったのです。そのような状態ですから、逆に私たちには良いチャンスになりました。変化が起きたのは、日本企業が海外に進出し始めた頃からでした。その頃から私たちDDIがやってきたことを日本企業も注目し始めたのです。
宮川しかし、それはアメリカから持ってこられて、すぐ日本の企業に理解されましたか?
博士いえ、まったく理解されませんでした。しかし、梅島さんのように素晴らしい営業力を持った人たちが徐々に広めていったのです。
福井そこから広めていくには本当に努力もなされたと思いますけれども、そもそもバイアム博士の目指すアセスメントというのはどういうものなのでしょうか?
博士当社が多くの企業から評価されているのはアセスメントセンターメソッドというもので、それは何かというと、ある役所の昇格候補の人たちをシミュレーション(模擬訓練)に入れます。例えば、スピーチをしなければならないとか、ある業務をしなければならないというような、昇進するとやらなければならない業務をシミュレーション(模擬訓練)させます。もし、昇進をしたらどんな行動をとるのかを仮にやらせてみるのです。
そして、何かスキルが不足していた場合は必要なトレーニングをしてその穴を埋めていきます。どんなトレーニングを受けさせるべきか、そういったことをアセスメント(評価)で決めていくのです。
宮川なるほど、非常に合理的な感じですけれども。
福井でも、もともとはアメリカから生まれたもので、その翻訳はどういうふうにされたのですか?
梅島それは難しかったです。英語の言葉はたとえば、言葉はWordですか、日本語では漢字はたくさんの考え方が一つの漢字のなかにあります。で、送られてくる資料を英語で言っていることが日本の事情のなかで同じような考えに分かるようにという、その翻訳は会社全員が取り掛かりまして、みんな、米軍で働いていた仲間ですから、みんなで翻訳に一生懸命になって、そして、それを日本の実情もまたバイアムに知らせて、つまり、西洋と東洋、洋の東西で同じ能力評価でも、若干、表れ方が違うというようなところはありますから、そういうところを交流して、ある程度、オリエント(東洋)に適合するようにというプログラムに作っていきました。
宮川バイアムさんはそういった日本の企業が梅島さんの努力によって、たとえば、どんなことで変わってきましたですかね?
博士以前よりも能力を重視するようになり、年齢が若くても昇進させるようになったと思います。そして、グローバリゼーションという時代になり、国際化ということがすごく大きな意味を持ってきたと思います。日本企業は日本のやり方がそのままでは海外で通用しないことに気がつき、他国の組織文化や新しいやり方を学び、それをまた日本に取り入れるようになってきました。
宮川バイアムさん、この人材アセスメント、これは今、世界中でどれぐらい広がっているものなのですか?
博士正確にはわかりませんが、既に100カ国以上に広がっていると思います。
福井そんなに……。
宮川それだけ広がったのはなぜだというふうにお考えですか?
博士それは我々のメソッドが他の手法よりも正確な結果が得られるからだと思います。面接だけでなく、筆記試験だけでもなく、私たちのアセスメントセンターメソッドでは自分がその立場になったら、どう行動するかを実際にやらなければならないのです。
例えば、スポーツチームに入団する選手を選ぶ時、フットボール選手を選抜する時、面接だけではなく、実際にプレイをさせてみます。そして、誰が一番上手なのかを見るのです。
アセスメントセンターメソッドというやり方で「自分たちがやらなければならない状況において、どういう行動を起こすか」ということを、私たちは観察するわけです。そして、その人が成功するかどうかを予測するのです。
福井なるほど。だからこそ、やはり、実践が大切ということなのですね。
梅島そうですね。本当の人間を見つめるということでしょうね。自分の持っている概念で見るのではなくて、この人間はこうあるべきであるではなくて、この人間はこうであるこういう行動をする、こういう長所がある、こういう心配なところがある。そういうのをできるだけ早い時点で発見して、それを長所は伸ばし、長所を発揮する部署にだんだんと移していって、そういう機会を次々と準備していくことによって、人は育つと。そういうふうに考えます。
多くの著作を持つバイアム博士は最近の著書で自社に必要なリーダーを育成する方法についてこう、記している。
博士誰かが会社を辞めた時、CEOは人事にその職を任せられる人材は誰かと聞きます。人事は適材がいないと探すことになります。社内で探すか、外部から雇うことになりますが、素晴らしい会社というのは、先を見据えて社内で人材開発を続けて準備しているので、誰が辞めても問題はありません。後任は必ず社内に準備されているのです。このポジションが空いたらそこに誰が入るのか、かつては長い期間をかけて検討していましたが、現在では物事の変化が速いスピードで起きるため、そういった予想は長期的には行えません。ですから、実務レベルでの準備をしていくことが重要です。
宮川バイアムさんは、そうしますと、これからのリーダーシップのあり方はどういうふうにお考えですか?
博士これからの理想のリーダーは他人の置かれた状況を考えられる人です。昔は王様のように、ただ上からこれをやれと指示するのがリーダーシップでしたが、今の若者は上から言われただけでは聞きません。彼らに動機を与え、それをやることを納得させなければなりません。そのやり方は昔と比べると随分と変わってきました。数十年前と比べると、当時、評価対象にしていた能力と、今やっているものとは随分と違ってきています。今のアセスメントセンターメソッドでは昔とは全く違った新しいやり方で行動特性を測定します。
宮川やはり、今いる人材をどうやって輝かせるか、それもやはり、リーダーの大切な仕事で、そのためにこの人材アセスメントというものが……。
梅島そのリーダーの能力を伸ばしていくということも必要ですね。
未来を築く新たなリーダーを育てるために、手を携えて共に歩む。それがマネジメントサービスセンターとDDIの50年。
出演者情報
企業情報
関連コンテンツ
カテゴリー別特集
リンク