まちづくりのDNA。ものづくりの現場で学んだ人との繋がりの大切さとはなにか
東急不動産株式会社
代表取締役社長
金指 潔
たった一枚の作業服が現場で働いていた人たちの心を開いた。「ものを作ってくれる現場が一番大事だ」という、東急不動産株式会社 代表取締役社長 金指 潔が、自身の経験と東日本大震災の震災復興支援を通して再確認した、まちづくりのDNAとはなにか。これからの日本のまちづくりはどうあるべきかを探る。
作業服を通して、もの作りの現場の大切さを学んだリーダー金指潔。そんな彼が2008年に社長に就任した翌日の朝、かつての仲間たちが自宅に大挙して訪れたという。
金指今思い出すのが、発表があった日の朝、6時ごろに、昔の仲間の大工の親方が奥さんを連れて自宅に来まして、おめでとうと言いに来てくれましてね。そういった意味では昔の仲間連中も喜んでくれたと思っています。
宮川やっぱり部長さんとか、そういうことじゃなくて、現場の方が来てくださるというのが一番嬉しいですよね。何かを忘れに来たんじゃないんですもんね。
金指そうですね。それは確かに。自宅に来てくれるし、やっぱり本当の意味で「良かったね」と言いながら、やっぱり距離があいてしまうことに対して、何となくお互いが寂しくなるようなことはありましたね。
宮川でもそれはずっとつながっていくものですからね。
金指そうですね。今でも年に2度3度は会って話をする、あるいは飲んだくれて酒を飲むようなことはやっていますけど。
白石いいですね。この作業服を着て現場に行かれて、そこで生まれたまた深い愛ですよね、皆さんとの。そういった中で金指社長は、会社を何度も辞めようとお考えになったとお伺いしてるのですが、それはどんなことがあったのですか。
金指自分の実感として何か手につかめるもの、あるいは体を動かせるものがないと何となく自分が納得いかない、そんなことがあると、机に座って長いことなると嫌になってしまうわけです。ですからそれが辞めたいと思った一番の原点かもしれません。
白石でもその思いがあってもまた辞めないで続けるという心というのは、どういった経験から生まれたのですか。
金指例えば、どうでしょう、ものを作っている現場というのは色々なことがあります。例えば天気が悪くて大きな風が吹く、あるいは、大きな雨が降ってくるようなことがあって、その中でもやはり一生懸命ものを作ってくれる人がいる。こういう人たちを見て何かしていると、自分がいかに甘やかされているかが分かりますよね。そういったことが、私自身がおそらく仕事を続けていく原点だったのかもしれません。
白石では、続いての変革、そのキーワードは何でしょうか。
金指3番目がですね、「東北と渋谷」です。
ビジネスの原点を現場に置くリーダー金指潔、次なる変革のキーワードは、東北と渋谷。一見何ら関連性のないこのキーワードの中に、東急不動産のDNAが隠されている。
宮川渋谷はよく分かるのですが、東北というのはどういうつながりなのでしょうか。
金指実は東北というのは、私が前やっていた仕事と大変縁が深くございまして、ものを作っている大工さんや職人さんが一番多くいらっしゃるのが東北なのです。ですから、初めて工務店の仕事をする時に、まず人を集めなくてはならないということになりましたので、各地を回りながら、各地の大工さんの組合、職人さんの組合に行きながら、どうか(お仕事に)来てくださいとお願いに上がったわけです。
ですから毎年20年ぐらい、年に1、2回は必ず行っていました。行きながらその地元地元で、その職人の親方さんに会いながらいろいろ親交を深めて、私自身もその中で大工さんのことも学びました。曲尺(かねじゃく)って知っていますか、L型のこういう曲尺というのがありまして、曲尺一本でアールっていう曲面、船で言うと船底を作っていく。それから宮大工で言うと、擬宝珠(ぎぼし)という欄干にこういうハート型のものがございますが、ああいったものの曲面を出す。これを指金一本で作るんですね。そういった技術が、昔から東北には眠っているわけです。そういったことも教えてもらいまして、大変勉強になったということでございます。
宮川そうしますと、やはり3月11日は、社長も大きなショックを受けられたのですね。
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