横浜の杭打ちミス問題はまだ未決着 元請け建設企業の責任が依然あいまい


時代刺激人 Vol. 281

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 「信じがたい」「なぜそんなことが」といった事故が最近、日本国内のみならず世界中いたる所で起きている。その多くは、ヒューマンファクターなど人災によるものだが、同時に組織エラー、端的には社会の安全や人命の安全を二の次に、目先の利益を最優先にする誤った企業の行動、あるいは大組織病が関係する組織エラーがそこに潜む。

マンション居住者の生活混乱への企業責任は
建て替えなどで済む話ではないはず

実は、今回の問題になった横浜のマンションには、私の息子の家族が住んでいて、私自身は、過去に何度も足を運んだので、このマンションにはいろいろな思いがある。息子の家族は最終的に建て替えを決めたが、建て替え期間中、仮住まい先を決めざるを得ず、しかも子供たちの学校教育などでも影響を受ける。

 

しかし息子などから現場の話を聞いてみると、住民サイドがマンション傾き異変を発見し、マンション管理組合を通じて企業側に通報し対処を求めた段階からラチが明かず、建物の建築確認などで行政責任のある地元横浜市に駆け込み、自治体が動き出したため、業側がやっと杭打ち調査に本腰を入れたこと、その後、メディア報道で問題が表面化してからは、さらに企業の対応はメディアの目、社会の目を意識して対応が目立つなど、当初の冷ややか対応からガラッと変わったことーーを聞く限り、三井住友建設、不動産販売先の三井不動産レジデンシャルの対応は杭打ちミスの問題解明、下請け重層構造などの問題に対応して再発防止につなげる、ということを見据えたものでなく、補償負担のリスク軽減のためにはどう立ち回ればいいか、という打算、社会の批判が自社の営業に影響することを最小限のリスクにとどめようという意識などが先行している感じが強いのは残念だ。

ガバナンス専門の国廣弁護士も請負い企業が主導し
独立の第3者委に調査を主張

企業のガバナンス問題や不祥事対応などの専門家の国廣正弁護士に最近、話をうかがう機会があったが、その際、鋭い問題提起をされ、思わず「わが意を得たり」だった。要は、企業不祥事などでの第3者委員会の調査報告書には公益性があると同時に、一種の公共財の性格があること、その点で言うと、東芝不正経理問題を調査した第3者委員会が東芝経営陣からの依頼の範囲でしか調査せず、経営陣に不利になる問題に関していっさい言及しなかった点が問題だ、というのだ。
全くそのとおりで、国廣さんは「第3者委員会は不祥事を起こした企業などが企業の社会的責任の観点から、あらゆるステークホールダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会で、東芝の第3者委員会は存在が問われる」という指摘なのだ。

 

横浜杭打ちミス問題に関しても、国廣さんは、私の問題提起と同じだった。元請け企業が中心になって建設元請けの責任、重層下請け構造の管理監督のあり方に関して独立の第3者委員会を招集すべきであること、三井住友建設は公益性の観点からの行動が重要で、企業の社会的責任を果たすべきだ、との指摘だった。さらに国廣さんは、今回の問題に関して、業界団体の日本建設業連合会などに建設元請けと下請けのあり方を委ねる受け身の姿勢では、建設元請け企業としての資格がない、とも述べた。100%賛成だ。

メディア報道も行政官庁の「お裁き」で一件落着は残念、
今こそフォローアップ必要

主要メディアの報道姿勢にも問題がある。新聞社、TV局のメディアは、国土交通省の行政処分以降、この杭打ちミス問題をめぐるそれまでの過熱報道をぴたりと止めてしまった。典型的な横並び意識、他社見合いの行動パターンで、同じジャーナリストの立場から言ってもメディアに独自性が欠け、お恥ずかしい限りだ、と思う。
いまメディアに問われるのは、行政官庁が「お裁き」をしたら、それで一件落着にするのではなく、フォローアップ取材&報道を行っていくこと、もし問題の所在が明らかになればすかさずキャンペーンに切り換える積極報道姿勢が必要だ、と考える。

 

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