潜在患者数は530万人!まだ世に知られぬタバコと関係がある生活習慣病とは
公益社団法人日本医師会
副会長
今村 聡
現在、世界的に見ても喫煙をすることの健康への影響、喫煙に対する考え方は変わりつつある。喫煙の健康被害としてまず挙げられるのが肺ガンだが、実は肺ガンのほかにもタバコに関係の深い生活習慣病が存在する。それがCOPDだ。今村聡は公益社団法人日本医師会の副会長を務めながら、COPD啓発プロジェクトの理事も兼任しており、日本でのCOPDの認知度アップに取り組んでいる。今村が進めるプロジェクトの全貌に迫る。
宮川 先生はCOPDの啓発に力を入れていらっしゃいますけれども、これはどういう経緯でこのプロジェクトが立ち上がったんでしょうか?
今村 2012年になりますけれども、厚生労働省の健康日本21の第二次という、厚生労働省が日本の国民の方たちの健康度を上げるために様々な項目に指標を設けてですね。
それを10年間の間に、どれだけ達成できたかっていうような数値目標を置いて、取り組みをしているんですけれども。初めて、COPDという言葉そして認知率8割にする政策目標ができました。それをきっかけとして、一般社団法人にCOPD啓発プロジェクトという産・学・民の取り組みを始めたわけです。
ドーキンズ 今までそういったプロジェクトと言うのは稀だったんですか?
今村 あまりなかったと思います。目標は同じであっても、取り組み方がみんなそれぞれバラバラだったのですが、今回は目標もその取り組み方も一緒にやりましょう、という意味では極めて意味のある活動だというふうに思っています。
ドーキンズ このプロジェクトは、どのように取り組んでいらっしゃるんですか?
今村 まずはテレビのCMであるとか新聞広告であるとか、そういったやっぱりメジャーな媒体を使って世の中に知っていただくという取り組みをしています。当初はですね、非常に一時期、認知率が高くなったということがあるんですけど、最近は少しそこが25%前後で認知率が止まっている、ということもありまして、なかなかこれはハードルが高いなというふうにちょっと思っています。
ドーキンズ 認知率が思うように伸びないっていうのは、なぜなんでしょうか?
今村 先ほどからも何度も出ているように、わかりにくい専門用語っていうこともあると思いますし、それからアルファベットという日本人には馴染みがないということもあります。
日本ではまた厚生労働省も「慢性閉塞性肺疾患」っていう病名をつけていますので、結局一つの病気なのに二つの病名が同時に存在するような形になっています。余計そこが難しいところかなというふうに思います。そういったこともなかなか認知率が上がりにくい一つの理由かな、というふうに思っています。
宮川 肺ですと肺癌とかいろいろありますけど、その中でこのCOPDというのが、きちっと位置づけられてないということですかね。
今村 そうですね。そういう意味で、先ほどの健康日本21にそういう目標として認知率上げるっていうことが挙がったわけですけど、なかなか病名を8割の人に知っていただくっていうのは、そもそもハードルが高いということがあるかと思います。
今村これからの取り組みとして、2020年に東京オリンピック、パラリンピックを控えるわけですけれども、そういった意味で受動喫煙あるいは禁煙対策について、東京都と連携を進めていこうとしております。
また、タバコのパッケージに、今タバコを吸うと、こういう害になることがありますっていうような記載がありますけれども、その中に、COPDという文言を入れていただくように働きかけをしています。
また、ポスターというのは非常に多くの方たちに目に触れる重要なもので、先般お亡くなりになった非常に有名な落語家の桂歌丸さん、歌丸師匠が亡くなられたということに関しては、皆さん世の中で相当大きな話題になったと思うんですけど、何でお亡くなりになったかっていうことを、多分ご存じなくて、実はCOPDという病気でお亡くなりになった。高座の出ておられるときに鼻にこういうチューブが入っていますけど、これ酸素を吸いながら、これ無しでお話しになるっていうのはものすごい呼吸困難、苦しい状況にあるので酸素を吸いながら高座に登られたということです。
COPDとは、日本語に訳すと「慢性閉塞性肺疾患」と呼ばれる肺の病気。主に長年の喫煙による生活習慣病で長い年月をかけてゆっくりと進行する。こちらは健康な肺、COPDが進行すると、気管支や肺胞が炎症を起こして腫れる。
やがて、肺全体が膨張してゆく。その結果、症状としては、歩いたり着替えたりなど、普通の動作が息苦しくて続けてできなくなる。咳や痰がひどくなり慢性化。起きているときだけでなく、就寝中でも咳や痰で苦しくなるため、睡眠不足に陥り、常にぼんやりした寝不足状態が続く。
症状が進行すると、鼻から酸素を吸入する在宅酸素療法が日常的に必要になる。また、24時間常時酸素吸入が必要になり、携帯酸素や酸素ボンベがないと外出も困難になる。COPDは肺だけにとどまらず、これらの症状の他にも、全身に影響を及ぼす危険性がある。
COPD患者の90%以上が喫煙と関係がある。喫煙者は自身の健康だけではなく家族や周りの人たちの健康のためにも、直ちに禁煙することが、少しでもCOPDの進行を遅らせるための第一歩。
ドーキンズ 病気かな?と思ったら病院に行くのが一番だと思うんですが、COPDをセルフチェックする方法っていうのもあるんですか?
今村 まずは、その原因がはっきりしないのに咳や痰が続く場合、それから階段やちょっと早足をしたときに息切れが起こる。そういった方が喫煙者であれば、COPDの可能性が非常に高いというふうに思います。ですから、やっぱり喫煙者の方にCOPDがあるってこと知っといていただくことが大事かなというふうに思います。
宮川 ガンなんかですと、定期健診でどうしてもチェックしたいと思うんですけど、この病気の場合にはなかなか検査っていうわけにはいかないような感じもするんですが。
今村 確かにおっしゃるように、ガンがあっても、肺ガンがあっても咳や痰が出たり、呼吸困難が起こることはあるわけですから、そういう症状があったら病気が何かということは別として、まずは医療機関を受診していただくと、COPDに関しては、呼吸機能検査といって思いっきり息を吸って、思いっきり息を吐き出すという検査があります。
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