日本は米国や英国の失敗もとに「金融立国」よりも「技術立国」で再生を 環境・省エネ技術含め日本が世界に誇る「技術の強み」活用が重要


時代刺激人 Vol. 23

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

今回の米国発の金融危機は、「金融立国」で来た米国経済の破たんだが、京都大の佐伯啓思教授がそのからみで、とても鋭い分析をしておられる。
「米国型資本主義による経済発展の行き詰まりの原因は、1970~80年代に社会が成熟段階に達してしまい、人々がさほどモノを欲しがらなくなった。その結果、製造業に投資しても大きな利潤が出ないので、余ったカネを金融市場に集めてバブルを常に起こすことで、経済発展するしかなかった」点にある、という。
 確かに、そのとおり。米国は、そういった形で「金融立国」型の経済システムにして世界中を巻き込んだが、サブプライムローンを軸にしたさまざまな証券化商品に無理がきて金融システム崩壊に至った。しかし、こと「金融立国」という意味では、それは米国だけでなく英国も同じ。さらにアイスランドなどもそうだ。

「世界を制した『日本的技術発想』――日本人が知らない日本の強み」
 そこで、今回のテーマは、日本が米国や英国の失敗事例をもとに、「金融立国」よりも、日本が世界に誇る強みでもある環境・省エネ技術はじめさまざまな技術を活用して「技術立国」で経済再生をめざしたらどうかという点に関して、ぜひ、述べてみたい。
その話のとっかかりとして、最近、ワクワクして読んだ本を紹介したい。技術ジャーナリストの志村幸雄さんが書かれた「世界を制した『日本的技術発想』―― 日本人が知らない日本の強み」(講談社刊ブルーバックス)だ。なかなか興味深い話が多い。
 志村さんの「日本的技術発想」のヒントになるキーワードをいくつか並べてみよう。「携帯電話の多機能化でケータイをパソコン化する日本発のアイディア」、「ものづくりに宿る『軽薄短小』技術」、「からくりをロボットに変える『合わせ技』」、「模倣を越える『工夫力』と『考案力』」、「軍需に頼らない世界最強の民生技術」、「感性を数値化する製品開発」、「『環境』『安全』を技術の基本機能にしてしまった日本の凄み」などだ。何となくイメージができるのでないかと思う。

日本は技術文化国家、環境技術などをテコに戦略的な技術外交を
 そして、サワリの部分だけを少し引用させていただこう。
「日本の産業技術は、製造技術、すなわち『いかにつくるか』では強いが、『何をつくるか』という製品技術では弱いとされてきた。(中略)しかし私の見るところ『ものづくり』を基盤にした製造技術も、製品技術とは同等の価値のある技術である。実際、日本企業はしばしば、製造技術の革新(プロセス・イノベーション)を製品技術の革新(プロダクト・イノベーション)に転化する離れ技をやってのけている。高解像度のデジタルカメラや、ガソリン車と電気自動車の長所を活用したハイブリッド車が世界市場で存在感を発揮しているのは、その表れだ」
「技術文化国家としての日本に求められているのは、日本が技術力を戦略的に使い、国際貢献していく技術外交でないだろうか。(中略)技術での国際貢献をめざすには環境技術が最有力手段になる。日本が蓄積してきた世界に冠たる環境技術を、技術外交の手段として供与していけば、互いの国益が守られ、結果としての地球規模での利益も確保できる」

日本の戦略的な強み、弱みを探れば、自然に行き着く先は「技術革新力」
 この後段部分が志村さんの指摘したいポイント部分で、私も100%同感する部分だ。これから、私の主張ポイントでもある米国や英国の「金融立国」の失敗事例をもとに、日本は、その拠って立つ基盤を「技術立国」に置いたらどうか、という点について、述べたいと思うが、その結論部分は、この志村さんが主張される「日本が蓄積してきた世界に冠たる環境技術を、技術外交の手段として供与していけば、互いの国益が守られ、結果としての地球規模での利益も確保できる」という点も含まれている。
 コラムの第10回のノーベル賞日本受賞問題に関連して、私は「技術立国」が日本のめざす道であることを書いたので、そのコラムも合わせて、ご覧いただけばと思うが、その場合、なぜ「技術立国」に至ったかという点を述べる必要がある。
私は今、志のある人たちと一緒に社会システムデザイン研究所(横山禎徳代表)のメンバーとして、制度疲労をきたした日本のさまざまな制度、端的には医療制度や年金制度などに関して、新しい発想として社会システムのデザインが必要との立場にたって、制度改革問題に取り組んでいる。
そのうちのメンバーの横山代表、それにフェローの松田学さんらとは言論NPOというNPOで一緒に活動していた際、「日本のパワーアセスメント」、つまり日本という国の実力度はどの程度なのか分析が必要とし、日本の戦略的な強みや弱みの洗い出しをした。

経済、社会・教育、大衆文化、化学・技術、防衛・軍事、政治、エネルギー資源、食料、環境、言論・思想の10分野に関して「先進度」「強靭性」「影響力」の3項目で見たのだが、結論から言えば、戦略的な強みという面では経済の強靭性、大衆文化の影響力、科学・技術の先進度、環境の先進度の4つが日本のパワーとして誇れるものだった。

中国は環境設備機器のメインテナンス、ソフトウェアで日本を頼りに
 大衆文化の影響力はアニメや漫画のいわゆるソフトパワーの部分だが、経済の強靭性は別にして、私の場合、日本が戦略的な強みという形でアピールするならば、科学・技術の先進度、環境の先進度、それらを括った「技術立国」、「環境技術立国」でないかと思っている。
中国の環境・エネルギー問題の調査で昨年2008年に北京を訪れ、発展改革委員会や環境保護総局(当時)、精華大学などと話し合った際、日本が中国と共生していく場合、とくに中国の環境問題に日本がさまざまなレベルで協力していく場合、環境破壊に歯止めをかける技術、省エネ技術などだなと直感した。
その際、興味深かったのは、ある中国人専門家が「中国は今、経済成長によって、日本を含めた海外から環境技術などを買うことができる。しかし、最新鋭の設備などハードウエアを買っても、それをメインテナンス(維持管理)する技術、ソフトウエアの面ではまだまだ立ち遅れており、日本に依存するところ大だ」と述べた点だ。

日本は環境技術への取り組みと経済成長の併存が可能であることを示せ
 かつて日本政府は、国民の巨額の金融資産の活用を含めて、ニューヨークやロンドンに比肩する金融センターを東京に、といった形で「金融立国」を政策的に強く打ち出した時期があった。しかし税制を含めた政策改革を進めないまま、中途半端なものに終わっている。考えようによっては不幸中の幸いというものだ。
それよりも今、米国や英国の「金融立国」が破たんした中で、東京国際金融センターに比重を置くよりも「技術立国」で新たな経済再生をめざすべきでないだろうか。とくに中国との問題に限らず、世界的に環境問題がキーワードになった今、日本が存在感を示せるばかりか、世界に貢献しながら経済再生につなげるチャンスでもある。そして、日本は環境への技術的な取り組みと経済成長は併存できるし、同時に達成可能な問題であることを示せばいいのだ。

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