「東急ステイ」と「東急ハーヴェストクラブ」などのリゾート事業の運営会社を統合し新体制に

グループ内のホテル・リゾート事業会社を統合
人材確保やコスト低減など幅広いメリット

東急不動産ホールディングスグループのホテル・リゾート事業の更なる成長を目指し、2020年7月に誕生したのが東急リゾーツ&ステイ株式会社だ。株式会社東急リゾートサービス、東急ステイ株式会社、東急ステイサービス株式会社がこれまで培ってきた実績と信頼をひとつにして、新たな価値を提案する。

「統合前は各社がそれぞれホテル・リゾート事業を進めており、人材の確保、インバウンド需要への対応、海外人材の登用、コスト面の急上昇など共通の課題がありました。グループ内でそれぞれが各課題に対応するよりも、ひとつに統合して取り組む方が、メリットが大きいと考えました」

営業面でも利用客へのアプローチ幅が広がり、多様なターゲット層にサービスが提供できると判断したという。

「構想から約2年を経て、実際にスタートした時は、新型コロナウイルスの影響で大きく環境が異なっていました。しかし、約2年の期間をかけていたからこそ、2020年の統合を実現できたのだと思います。こうした課題は瞬間的なものではなく、企業として持続的に成長していく上で、早めに解決しなければならないのです」

誕生からわずか半年だが、ホテル事業の営業体制や人材の確保など、各社に共通していたことを一本化しただけでも大きな効率化が図れているという。

「当社は会員制事業の比率が高く、コロナ禍においても多くのお客様にご利用いただいております。ゴルフ事業では緊急事態宣言下で法人の需要が減少するものの、個人のお客様は増え、月によっては前年を超えるほど安定しています」

2020年秋からはGo Toトラベルキャンペーンが実施され、リゾートホテルを中心に利用が集中した。

「実質的には約2カ月でしたが、ホテル内で食事をされる方も多く、稼働率が大きく伸びました。Go Toトラベルに関わる事務処理も必要で一時的に人員が不足しました。当社は運営面の事業ポートフォリオが広いことを生かし、本来の職域を越えて社員がサポートするなど臨機応変に対応し、新会社としてのメリットを十分に発揮できました」

当初、東急ステイは都内の山手線の内側を中心に「滞在型のホテル」を前面に展開してきた。

「当時はまだインバウンド需要も高まっておらず、ホテルの独自性として客室内に洗濯機やキッチンを整備して滞在型を打ち出しました。これが一定のマーケットの中からお客様の需要を喚起することにつながりました」

時代は急激なインバウンドへとシフトし、法人客のビジネス需要をターゲットにしていた同ホテルにも外国人観光客が増えていった。

「コロナ直前に約30%が海外のお客様、約20%が国内レジャーのお客様でした。ツインやダブルの稼働率が上がり、当社も2017年に都内から地方都市、リゾート地へと展開を広げました」

全国展開は順調に進行し、2020年4月に「飛騨高山 結の湯」がオープンし28店舗を数える。2021年4月には「函館朝市 灯の湯」、さらに同年8月には30店舗目の「新宿イーストサイド」がオープン予定。

「飛騨高山と函館のホテルではリゾートホテル事業を通じて得たノウハウを生かし、立地や地域特性を活かした心地よい空間の温泉大浴場を設置しています。各社がこれまでに培ってきた経験を生かし、時代の変化に対応し、お客様の滞在価値が上がるよう取り組んでいます」

東急不動産ホールディングスグループ各社との共同事業も展開
ワーケーションや非接触型のサービスも導入

統合した3社だけでなく、東急不動産ホールディングスグループ各社が担う幅広い事業を融合した取り組みも実践している。

「グループの力を活用することで、幅広いお客様にさまざまな提案ができます。例えば東急不動産が展開しているシェアオフィス『ビジネスエアポート』や、株式会社東急スポーツオアシスのフィットネスクラブ『東急スポーツオアシス』が利用できるなど、グループ内のリソースを活用した宿泊プランも提供しています」

東急ハンズが、東急ハーヴェストクラブの客室、リゾート施設内の店舗デザインや、売店で販売する商品を共同で開発しているという。

週の後半はリゾート地で仕事をして、週末は同じ場所でレジャーを楽むとか、飛び石連休の期間を含め仕事とレジャーを目的に滞在する、ワーケーションの提案もしている。

「お客様の利便性向上にもつながる新たなサービスも始めています。東急ステイでは予約、チェックイン、カードキーの発行、チェックアウトまで非接触が可能なアプリをご用意しています。スキー場ではレンタルやスクールの予約から決済までWeb上で対応しています」

これまでは人的サービスをいかに手厚くするかがホテルの質や格を表してきた。しかし、今後はそれだけでなく、例えばできる限り接触を避けたいというお客様には、極力対面型のサービスを排除して満足していただける運営体制を確立するなど、多様なニーズへの対応が求められるという。同社は、新会社とグループの力を生かし、次世代の豊かなサービスを追求していく。

全国のパートナー企業と運命共同体で広がる、地域情報プラットフォーム「まいぷれ」

中央発信ではなく地方発の地域コミュニティ
38自治体でふるさと納税のプロデュース業務

全国566市区町村(2021年2月現在)・月間約820万PV(2020年9月現在)を誇る地域情報サイト「まいぷれ」の運営を中心に地域情報のプラットフォームを築いている株式会社フューチャーリンクネットワーク。現在も毎月いくつもの地域情報サイトを全国で誕生させている成長中の企業だ。その事業は地域情報流通、公共ソリューション、マーケティング支援などを通じ、全国に着実に浸透し続けている。

「当社は直営地域以外の地方都市はフランチャイズ化によるパートナー組織約140社と一緒になって運営しています。地元に密着する以上は、地元で雇用した地元の人間が展開するのがベターだと思うのです」

中央から地方という流れではなく、その地域の独自性を重視した展開は、既存のメディアとの大きな相違点だ。

「従来のタウン誌など紙媒体と違うのは、ネットを活用したストック事業である点です。少しずつ信頼を重ねて収益を増やしていくビジネスモデルですから、動き方や営業の仕方も違います」

例えば、衰退しつつある地方都市で、いかに皆が手を取り合い、少しでも付加価値を上げていくかを一緒になって考えていく。

「地元の事業者とはひと月数千円の関係でつながっていて、一緒に1ミリずつであっても成長していこうという考え方を共有しています」

また、同社は全国38の自治体からふるさと納税のプロデュース業務を受託しており、その取り組みに対する問い合わせ件数は年々増えているという。

「ふるさと納税のポータルサイト運営ではなく、自治体のふるさと納税の裏方として、特産物の生産者に返礼品にできないか交渉したり、取材して魅力を伝える記事を作成したりする事業です。寄附した納税者の管理、納税者への証明書送付や返礼品の配送など、すべて地域としっかり向き合って取り組んでいます」

これまでの運営実績でノウハウは質量ともに充実してきた。

「個人の方が『まいぷれ』の事業で起業できるような仕組みを利用して、Iターン、Uターンして起業する方も増加しています。」

自分のふるさとをなんとかしなければいけない、そう思って起業する人が増えているという。

「今では当社が相談を受けたときに、自信をもって任せてくださいと言えるようになりました。資金調達から、運営のすべてをサポートしますから、安心して起業できます。同じような環境から起業したパートナーが成功している事例が多数あり、確かな実現性を感じることができます」

新型コロナウイルスの拡大でインターネットへのシフトがさらに進む
廃校など遊休公共不動産の利活用を事業化へ

2020年は3月〜5月にかけて新規の掲載申し込みが減り、一時は解約が増加する傾向にあったものの、予測していたよりは打撃が小さかったという。

「7月以降はまいぷれ利用の申込数が復調を超えるような大きな伸びを示しました。広告出稿を従来のメディアからインターネットへとシフトする流れは新型コロナウイルス感染拡大前から表れていましたが、感染拡大によって、その背中を押す作用が働いたのだと思います。年間を通じて見ると、追い風になっています。3密回避は相対的に地方都市にとって追い風なので、地域のパートナーも順調に増えています」

「まいぷれ」が取り扱う業種は稽古事、カルチャースクール、ベビーマッサージや整体などさまざまだが、飲食店が多いという。

「コロナ禍の当初は、新規の契約を取るよりも、まず地域の既存のお客様を支援しようと、テイクアウト特集を作るといったアドバイスをしました」

パートナーから顧客店舗に電話を掛け、何が起こっていてどんなサポートが必要かを聞き、安心してテイクアウトを導入できるようサポートした。

「この取り組みによって、地域の方から『こいつらは頼れる』『保険のように、付き合っておくことの安心感』『単なる広告媒体ではない』ということに気づいていただけました」

地域情報プラットフォーム「まいぷれ」を基盤に新たな事業展開も推進していく。

「将来的に事業化を進めていきたいのが、遊休公共不動産の利活用です。全国の廃校や市町村合併によって使われなくなった庁舎などを廃墟にすることなく、利活用することがミッションです。例えば、小学校は集落の中心にあり、避難所になっていたり、お祭りの拠点になっていたりします。ところが少子化で廃校になって、どんどん取り壊されています」

暫定的にシェアオフィスやカフェとして活用している自治体もある。しかし、サステイナブルに自立して運営していけなければ意味を持たない。

「例えば地域の年齢層を考えて、整体施設を誘致するとか、ランチタイムだけ営業するカレーショップを創業したい人をコーディネートするとか、アイデアはたくさんあります。廃校をポータルサイトとして位置づけたときに、ここにコンテンツを埋めていくノウハウを持っています。既に複数のエリアでエントリーや調査を始めています」

幅広くインターネットを活用しながらも、地域の人と直接対面しながら事業を進めることにこだわり続けていく方針だ。そこには人と人で結ばれた運命共同体として地域の未来を築いていこうという、同社の姿勢がうかがえる。

コロナ影響による会員数の減少後、新たな発想で潜在需要を掘り起こす総合フィットネス

コロナで早まった従来のスタイルからの転換
オンラインとの融合で新生活スタイルに対応

首都圏と近畿圏エリアを中心に創業から35年を迎える会員制総合フィットネス事業を中心に取り組む株式会社東急スポーツオアシス。歴史ある総合フィットネスは、新型コロナウイルスによる大きな打撃を受けたこの機会にこそ、従来のスタイルから大きな変貌を遂げようとしている。

「フィットネスへの需要は変わることなく続いています。このところのスポーツや健康への意識が高まるなかで、2020年に向けて盛り上がる風潮が社会全体にありました。新しいことにチャレンジしなくても、堅調に伸びてはいるという状況がありました」

新たなトピックの一つに挙げられるのはオンライン化だ。

「リアルのフィットネスに対して、オンラインフィットネスも数年前から進めているところです。方向性としてはリアルとオンラインの融合が、これからの新しいフィットネスの姿になると考えています。それを大きく加速させたのは新型コロナウイルスです。

2020年は大きな試練が訪れた年だったという。

「フィットネス業界全体が、新型コロナウイルスによって大きな打撃を受けました。当社
においても例外ではなく、会員数は約30%も減少しております。また2020年の4月から5月、当社は全館を閉鎖しました。これにより10万人以上の会員様から2カ月間の月会費が途絶えたのです。徐々に持ち直していますが、2020年末まで、まだまだ十分に回復していない状況です」

そこで、オンライン化との融合をスピーディーに進める必要が一気に高まった。

「これまでは、主にリアルなフィットネスに来ていただき、オンラインは補完的な位置づけでした。現在はリアルとオンラインとの垣根がほとんどなくなり、オフラインでもオンラインでもいろいろなことが受けられるようになってきています。また、高齢者の会員には、以前はフィットネスクラブに通っていたものの、通うことができなくなって辞めてしまった方もいらっしゃいます。生活様式が変わり、新しいスタイルでどのように提供できるかも今後の課題です」

また、新たな方策のひとつとして打ち出したのは物販事業だ。

「ホームフィットネスという家庭用の健康器具の販売をスタートしました。『フィットネスクラブが作った健康器具』という位置づけです。現在は商社として卸業務が中心でしたが、次のチャレンジとしては、ECを含めて自社で販売するという計画です。当社がインフォマーシャルを制作してテレビやECで販売したり、既存の会員様に販売していく方針です」

人口の96%に潜むニーズをしっかりつかみ
心も体も癒やされるフィットネスを目指す

業界内を見渡すと、ここ数年で従来とは違った傾向がうかがえるという。

「フィットネス事業は他業種などから新規参入しやすい業態と言われています。当社のように総合的な大型スポーツクラブではなく、中小のジムやフィットネスという形態ならばかなり障壁が低く、ある程度の場所があれば事業化は難しくありません。そこで、トレーニングやフィットネス指導を目的とした個人ジムなどは大きく増加傾向にあります。そのため、受けられる方の選択肢は年々増えています」

米国のフィットネス参加人口は全体の20%を超えていると言われている。一方、日本ではわずか3%から4%だ。

「この狭い領域にいろいろな企業が参入して、お客様を取り合っているのです。残りの約96%の方には、もともと運動をしていない方もいらっしゃいますが、日常的にスポーツを楽しんでいる方であっても、フィットネスには通っていないという方も含まれています」

この96%にどうアプローチして、会員として取り込むかがポイントになる。

「日本で参加人口が低い要因は、フィットネスへの参加障壁が高いためだと思います。健康になるため、やせるためにフィットネスに通うには『努力が必要』とイメージしがちです。フィットネス=エンターテインメントという印象でまずはスタートしていただくのです」

楽しみながら、徐々に高いところを目指す方式ならば、確かに参加障壁を低くできる。

「当社を含め、フィットネスに入会すると『がんばってください』『この通りやってください』とお客様を縛ってしまいがちですが、それではすぐに離れてしまいます。『行かなくてはいけないけれど、辛くていけないから辞める』とあきらめる方も多くいらっしゃいます。そうではなく、楽しいから行きたくなるようにならなければいけません。がんばらなくても健康になればよいのです。現在のフィットネスは、まだ楽しさや面白さを提供できていません」

創業35周年を迎えた同社は今後、心も体も癒やされるフィットネスを目指していくという。新たなチャレンジで、2026年までの5年以内には最高利益を出すことを目標に成長を図る。

社会の新常識に沿った次世代型の物流会社を目指し、自社や業界を大きく変革したい

荷物を待っている受荷主こそが本来の顧客
メーカーが製品に込めた想いを共有する習慣を

クボタグループの物流部門を担うクボタロジスティクス株式会社は、グループ内の製品を中心に他社の輸送業務も手がける企業だ。同社は従来の流通会社から大きな変革を果たそうとしている。

「物流を取り巻く環境とその価値観は、大きく変化しています。かつてはとにかく荷主に貢献するのが物流会社でした。顧客志向という言葉が一般化された今、顧客とは何を指すのかを考えなければいけません。確かに荷主は顧客なのですが、それだけではなく、荷物を待っている受荷主が本来の顧客なのです」

業界と社会が変化しつつあるなか、受荷主を本来の顧客と考えると自ずから対応が違ってくるのだという

「物流とは、ただ単にモノを運ぶのではなく、メーカーとその製品を待つ顧客とのインターフェースが役割なのです。物体から商品に変化(進化)させるために命(=製品に込められた想い)を流し込むのが当社の仕事です。これが本質的な『物流』の役割なのです」

もちろん、最終的には物流会社は荷主に貢献する。しかしそのプロセスが大きく違う。荷主の顔色や評価だけを見ていては、これからの物流の仕事は成り立たないという。

「今後の物流会社として当社の存在価値を考えると、まずクボタの物流子会社という立ち位置になりますが、その上でこれをどう活用するかということがポイントです」

大きな強みになるのは、メーカーが製品に込めた思いを共有する「習慣」を社員が身につけようとしていることだ。

「仕事は能力ではなく習慣でするものです。よい習慣を身に付けると、それが能力に見えてきます。習慣というのは皆に等しく与えられた能力です。誰もができるものです」

この考えは、クボタに限らず他のメーカーにも通用するという。

「ものづくりの思想や価値観を共有できる存在として認識していただけるように、メーカーが実践している教育を私たちも受け、製品に対する想いやものづくりの共通言語を理解する努力を続けています。これによりメーカーとの一体感が生まれます」

荷主に貢献しようと考えるのではなく、荷主と一体になって、製品を待っている顧客の期待に応えること。それが実現できるのも同社の強みだ。日本のものづくりには芯が通っており、その基本理念は共通している。さらに製品やものづくりを理解することでより高い理想が生まれ、成長につながるのだという。

「ただ運んでいるのではなく、製品やものづくりを理解していると分かっていただくことで、事業が大きく広がるのです。当社と荷主(メーカー)が同じ岸に立って、同じ想いで受荷主(顧客)を向いていれば、一体感が生まれます。そこに仕事を広げる要素があります」

命を支えるプラットフォーマーを目指して
社会の新常識に沿って自社と業界の変革を促す

2021年1月、株式会社クボタの北尾 裕一代表取締役社長は年頭所感で「豊かな社会と自然の循環にコミットする『命を支えるプラットフォーマー』になろう」と長期ビジョン「GMB2030」でめざす、クボタのあるべき姿を述べた。

「当社も2030年に向けて、その実現を目指す方針です。『豊かな社会と自然の循環にコミットする』には、SDGsやESG経営を意識した考えが必要です。これまでの業界や企業の常識ではなく、社会の新常識に沿って『本気』で取り組み、実践する必要があります」

顧客(受荷主)に製品を届けて、初めてクボタは「命を支えるプラットフォーマー」になれるという。届けるのは誰か。クボタグループの最終ランナーこそが同社なのだ。

「そこに求められるのは、なによりも安全対策です。安全対策の基本として、全社員が常に意識しているのは『安全確保に対して妥協していないか』『安全と費用を天秤に掛けていないか』『あきらめ、仕方ない、こんなものと思ってはいないか』『予知や認識した危険への対策を打たずに、見なかったことにしてはいないか』という4点です」

必要な対策にコストをかけることで、より安全にできる対策方法はたくさんあるという。

「そのお金を惜しんだばかりに、お金では解決できない事故が起こるのです。お金で対策できることがあるのなら、できる限りの対策をとりたいと思っています」

安全のみならず、GMB2030の実現には、今までの業界、会社の常識を打ち破ることも必要だという。

「例えば、廃プラや木材パレット廃材対策、トラックのCO2排出量削減、労働環境の改善など、当社を含めた物流業界には社会が目指す新常識を実現できていない点がまだたくさんあります。まず当社がクボタ製品を運びながら社会の新常識の実現に向け、実践している姿を見せて、それを評価していただきたいと思います」

その上で、他社製品との共同輸送を積極的に進め、多くの荷主が社会に貢献する同社の姿を見て評価すれば、活動はさらに広がる。

「当社だけが想いを実現して満足するのではなく、業界の変革に結びつけていきたいと考えます。物流業界自体が変わらないと労働力不足も解消しません。業界に属する各社の目指すゴールは一緒です。他のメーカー系物流会社と広い意味での社会貢献活動に関する情報共有を行うことで業界全体が良い方向に進むだろうと考えています。」

同社の想いと実践を業界に発信して物流の理想型をアピールし、新たな業界標準を確立することが目標だ。

「安全対策は今ある対策や装置だけでなく、ないものは作ることも考えて実現していきます。また社会の新常識を取り入れ実践し、当社の存在価値を上げることで、社員にはここで働いていてよかったと感じてもらえます。それが、人材が集まるモデルケースとなり、業界全体を良い方向にシフトさせたいと思っています」

同社はこの方針を着実に実行し、メーカー系の物流会社としてトップの位置を目指していく方針だ。

プロジェクト・マネジメント(PM)事業を中心に、事業領域を拡大するグローバル企業

日本のどのグループにも属さない中立な立場で行うプロジェクト・マネジメント(PM)事業
高い評価で通信事業は顧客数が3倍増に

不動産・建設ビジネスをグローバルに展開するリーディングカンパニーの日本法人として、PM事業などに取り組むレンドリース・ジャパン株式会社。その事業は大きく広がりを見せている。

「当社の基軸となるのはプロジェクト・マネジメント(PM)事業です。例えば、投資会社や通信キャリアなど発注者がビルや通信基地局などを作る場合、まず設計会社や工事会社を決定します。この段階で当社は、30年以上日本で培ってきたノウハウを活かして第三者的な立場から入札を行うなどして適切な設計会社や工事会社を発注者に提案します」

その価格と品質が見合うものか、設備が必要なものなのかなどを精査して、コストダウンを図るのもPMの役割だ。

「工事期間中は進捗状況や内容を確認しながらスケジュールを管理します。施工時の仕様変更の妥当性やそれに伴うコストの精査・交渉も行います。設計者や工事会社にプロジェクトを任せ切りにせず、発注者を最後まで支援するのがPMの役割なのです」

日本国内では、設計や建設に関連する企業がPM事業を兼ねるケースも多いという。

「例えば、設計会社や工事会社がPMを務めた場合、意図せずにそれぞれの利害関係が生じる可能性は否定できず、発注者をはじめとするすべての関係者が満足のいくものになるかという点で疑問が残ります」

また、日本国内には、海外で多数の建設プロジェクト実績を持つ企業が少ないという。

「当社はロンドン、ニューヨーク、シドニー、シンガポールなど、世界各地で豊富な不動産開発・建設実績と最先端のノウハウがあり、サスティナブルな事業が提案できます」

グローバルそして中立的な視点から、新しい工法や技術を提示できるのが、同社の大きな特長だ。同社の日本国内におけるPM事業は、ここ数年で大きく変化しているという。

「顧客が多様化し、さまざまな企業から高い評価をいただくことで、さらに依頼が増えています。例えば、通信のPMビジネスは顧客数が3倍ほどに増えました。携帯電話分野だけでなく、光ファイバー、ETC関連やセキュリティ関連の分野にも広がっています。建築のPMビジネスでも顧客が増加しています。大手百貨店グループや金融機関など、リピート契約していただくケースが増えています」

同社は2013年に事業不動産投資開発部門を新設

「大型機関投資家との企業共同体で、約1,100億円のファンドを設けました。現在は日本国内でのデータセンター開設を目指していますが、今後は日本だけでなく、中国、マレーシア、オーストラリア、シンガポールでも展開予定です。当社では開発はもちろん、建設、資産管理、PMも担います」

同社の通信への見識が高いことから、スタッフが渡米し、米国内でレンドリースの通信ビジネスが立ち上げられた。日本国内で培ったスキルを活かし、グローバルにリーダシップを発揮していくという。

「当社は通信とデータセンターを含むデータインフラストラクチャーの分野でも業界をリードしていく考えです。約4年前には日本国内で電気通信用の鉄塔を建てて、通信キャリアにリースし、当社の鉄塔にアンテナなど通信機器を設置できる事業を開始しました」

これにより、通信キャリアはインフラへの投資を抑えながら事業を拡大できる。

携帯基地局向けコンクリートポールを開発・販売
2040年にはカーボン排出完全ゼロを目指す

「当社の開発、設計能力は優れており、景観に配慮しながら建設コストを大幅削減できる画期的な携帯電話基地局向けコンクリートポール製品を作り上げました。既に日本国内で4,000本以上が設置され、稼働しています。こうした新しい事業にも注力しています」

PM事業を基軸としながら、幅広く事業領域を拡大できているのは、どのような理由からだろうか。

「PM事業を通じてプロジェクトのすべてのプロセスを見通すことができるからです。加えて、部分的なスキルを持っている企業は多いのですが、投資、開発、工事、資産管理までプロジェクトの全ライフサイクルを一貫して提供できる力があるのが当社です」

同社は以前から、環境性能や人の健康やウェルビーイングに配慮した次世代型の建築物である「グリーンビル」を推進している。

「当社が運用するすべての不動産ファンドが、2020年GRESB アジア・リテール部門サステナビリティ・ランキングでトップ5入り(一位を含む)しています。その背景にあるのは、当社が運用している物件は世界最先端のグリーンビル建築であるからです。グリーンビルは、投資している会社にとって、長期的な視点で考えると、環境面、社会面ともに大きなメリットがあります。当社では、2025年までにスコープ1 と2 でカーボンの排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)、2040年までにカーボンの排出を完全にゼロを目標にしています。」

発展する同社の今後に必要なのは、優れた人材だという。

「当社は日本であまり知名度がありませんが、携わった世界有数のプロジェクトをぜひ見ていただきたいと思います。組織のダイバーシティも推進しており、さまざまな人が集まることでより良いものが創造されると考えています。」

さまざまなPM事業によって実績を積み重ねてきた。そのノウハウを次のPM事業はもちろん、幅広い事業分野に活かし、更なる成長を続けていく。

トータルなソリューションを提供する、世界最大規模の金属加工用、切削工具メーカー

グローバルに展開するエンジニアリンググループ
デジタル製品を含めて約50,000種類の幅広い製品

スウェーデンに本社を構えるサンドビックは、金属切削工具、先進的な金属材料、鉱山建設機械などを取り扱っている。現在、150カ国で40,000人の従業員が所属するグローバルなエンジニアリンググループと位置づけられる。

「サンドビック・グループのコロマントカンパニー部門は、機械加工ソリューションのビジネスエリアで新たなデジタルソリューションを含めたトータルソリューションを提供する世界最大級の金属加工用切削工具メーカーです。」

1942年に金属切削工具の販売を開始した同社は、グループと同様に150カ国で、7,600名以上の規模で事業展開をしている。同社の製品は切削工具だけでなく、金属加工に関わる分野に領域を拡げている。

「デジタル製品も含め、約50,000種類のアイテムを用意しています。標準的な製品だけでなく、お客様の要望に沿って、テーラーメード製品や特殊品も展開しています。お客様のものづくりへの想いは多岐多様ですから、それぞれの加工に合わせたトータルソリューションを提案することで付加価値を提供しています。」

同社は大きなビジョンとして、トップメーカーとして業界基準を定めることを掲げている。

「そのため、研究開発に特に注力しており、約2,500人が切削工具の新製品や加工ソリューションの開発に携わっています。その成果として世界全体で1,800件の特許を取得しており、年間約150件ずつ増えています。近年は企業として大きく進化している途上です。」

同社の切削工具には、旋削工具、フライス工具、穴あけ工具、超硬エンドミル、ツーリングシステムなどがあり、それに加え加工に役立つデジタルツールも提供している。

「当社のユーザーは、充実したデジタルツールをご活用いただけます。エンドユーザーだけでなく、セールスチャネルに応じた代理店などビジネスパートナーも金属加工についてのEラーニングを受けることができ、エンドユーザーには加工に役立つ計算アプリや工具選定・加工準備作業を補助するソフトウェアなども提供しています。」

また、社内に向けて、Eラーニングコンテンツを公開している。

「社内向けには金属加工についてネット上で学べる体制を作り、各自がいつでも社内教育を受けられる環境を作っています。さらに金属加工だけでなく、マネジメントやリーダーシップスキル、PCの使い方など外部のリソースを使いながら全従業員が自主的に学べる仕組みを構築しました。」

インフラを整えておくことで、自らが目指すスペシャリストへの方向性に応じた勉強ができるという。受け身でトレーニングするのではなく、自主性を重んじているのが特長だ。

高価でもコストダウンや生産性向上を図る製品
付加価値のある製品で企業の成長をサポート

グローバリゼーション時代を迎え、同社は、アジアを中心にボーダレス化を進めている。日本のエンジニアは国をまたぎ、海外の顧客にも価値を提供している。

「従来は国単位で展開していましたが、現在はこれを超え、ヨーロッパ、南北アメリカ、中国・韓国・台湾、そして日本・東南アジア・オセアニア・オーストラリア・ニュージーランド・インドで組織化して活動しています。お客様が海外展開する上でも、当社の横のつながりを活用していただける点が大きな利点です。」

同社の製品の特長は、ユーザーに大きな付加価値を提供する点だという。

「例えば工具寿命が長くなることによって、製品の交換頻度が減ります。また、加工条件を上げることで加工時間が短縮します。そのため、ひとつのものを作り上げるまでの時間が短縮でき、生産性が上がります。また品質の高い工具を使っていただくことによって歩留まりがよくなり不良品が少なくなります。」

比較的高価な製品であっても、最終的な金属加工においては、製造コストを低く抑えることが可能になる。

「大切なのは一つひとつの単価ではなく、工具を使うことによる自動化、省人化、標準化に大きく働きかけることです。世界的に金属加工に関わろうと考える若い世代は減少しています。当社の製品はこうした時代の流れにも合致しています。また、当社は加工前の設計段階で使用するソフトウェアをはじめ、ものづくりにおいてトータルのソリューションを提供することで全体の生産性向上に寄与することを使命としています。」

現在注力しているのは、航空宇宙産業、自動車産業だ。航空機のエンジンの高性能化や自動車の軽量化に対応する製品を数多く導入している。

「さらに、重要なパートナーでもある工作機械メーカーに向けては、関係をさらに強化しながら、工具メーカーとしてパートナーおよびお客様の成長をサポートしていきます。トータルソリューションの提供により、さらなるお客様の生産性向上に寄与していきます。」

同社はビジョンとして「Shaping the future together(共に未来を創造する)」と掲げている。ここには約80年に渡り蓄積してきたノウハウ、知識、データを提供し、一緒に未来を創りあげていこうという力強い考えが込められている。

ロングランを続けるオンライン麻雀「Maru-Jan」をリアル化し、ヘルスケア事業も推進

2020年には過去最大の年間売上を記録
また、食品の健康度が分かるアプリ「FoodScore」を発表

2004年4月に発売したオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」は国内屈指の息の長いゲームとして親しまれている。開発・運営する株式会社シグナルトークは2020年、月間売上が同社初となる1億円超に上るなど、年間で過去最大を記録。新たな事業分野にも果敢に挑戦を続けている。

「とくにヘルスケア分野に力を入れています。2005年には認知機能をチェック・管理できるWebサービス『脳測』をスタートしました。当初は麻雀が認知症予防に効果的だということを科学的に検証しようと考えたものです」

「脳測」は医療機関で行われるMMSEの測定結果に準じ、脳の認知機能を数値化できるサービスだ。近年は引き合いが増えており、現在は提携企業でサービスを継続している。

「当社はITによる健康づくりのサポートを目指しています。オンライン上で処理する手法はゲームとも共通しており、当社の技術が生かされています。2016年には健康リスクをスコア化したアプリ『my healthy』をスタート、2020年にはこのデータを基にワークパフォーマンス改善につながる食事をAIがアドバイスする『WorkUp AI』サービスを提供しました」

さらに次のステップとして、「FoodScore」がスタートした。これは、食品のバーコードや原材料名から、それぞれの食品の健康への影響をAIが数値化してリスト化し判定してくれる新サービスだ。

「食品の健康度合いを数値で示すことで、体によい食品を探し回らなくてもリストから選ぶことができます。健康度合いの判定に力を入れています。国内約16万種類の商品に対応しており、コンビニやスーパーなど一般的に流通している食品ならばほぼ網羅しています」

このうち約5万商品はバーコードの読み取りに対応。海外の商品やバーコードの読み取りに対応していない商品は、原材料名をスマートフォンのカメラで撮影すると健康度が分かる。

「アプリはシンプルな操作を実現しており、無料で利用できます。当社は特定の商品をお勧めするのではなく、データを基にした数値を提供しています。当社がヘルスケア事業で蓄積してきた『my healthy』や『WorkUp AI』のデータを活用して、何を食べればどう健康に影響するかを判断します」

これに加えて、消費者庁の添加物データや欧米の機関が発表したデータ、700人以上の専門家の書籍や論文のデータをプラス。AIによるディープラーニング学習の結果を基に、病気や症状と関連した商品の健康度スコアを導き出す。

「食生活に気を遣っていても、それが本当に体によいのか、どの食品がどれだけ体に影響しているのか分かりません。プラス30点、マイナス20点というように、食品の健康度が分かった上で食べられる世界を作っていきたいと考えています」

「『FoodScore』アプリによって食べ物の新しい価値観を作っていきたいと考えています。現在は健康のために何を食べたらよいか、という部分ばかりが脚光を浴びがちです。食べることを避けるという観点からはなかなかアプローチできません。『FoodScore』アプリでチェックし、アプリを通じて食品を買っていただける世界を作っていきたいと思います。より多くの方に使っていただき、スマホアプリの『マップ』のような、必須の存在に育てたいと思います」

オンライン麻雀卓『Maru-JanR』を開発
他社ができない、やれない新領域に取り組む

2020年にオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」が大きく伸びたのは、新型コロナウイルスの影響で、外出を控えたり、リアルな環境で麻雀ができなくなった方から支持された結果だと振り返る。

「アフターコロナ以降もこのまま伸び続けるのではなく、揺り返しは必ずやってくると想定しています。そこで、当社では新時代のリアル麻雀としてオンライン麻雀卓『Maru-JanR』を開発しました」

麻雀卓は従来から完全にオフラインの世界だ。「Maru-JanR」はこれをオンライン化したもので、電子決済への対応や成績の記録が可能になる。

「オンラインとオフラインを融合したものです。現金を賭けて遊ぶような麻雀ではなく、ポイントをやり取りして遊ぶシステムとし、さらにポイントは一切換金できないようにすることで、麻雀を遊ぶ楽しさと、法的な安全性を両方クリアしました」

同社はバーチャルとリアルの両面から麻雀関連事業を積極化する方針だ。さらに、新領域の事業も挑戦を続ける。

「新規事業に進出するのは、当社しかやらない事業を展開することで、企業の存在意義を打ち出すためです」

短期的な利益を追求するのではなく、自社にしかできないこと、他社がやらないことを事業化していくのが同社の方針だ。

個人向けスクール、企業・官公庁研修、グループ内向け人材育成の3軸でIT教育事業を推進

アウトソーシンググループに参画し業務拡大
エントリーレベルの新入社員向け研修を積極化

東名阪と札幌、福岡に8校の総合ITスクール「KENスクール」を展開する個人向け事業と、即戦力を育てる法人・官公庁向け研修事業を中心に展開してきた株式会社シンクスバンク。近年は所属する企業グループ内の人材育成に取り組むことで、さらなる急成長を遂げている。

「当社は2014年にアウトソーシンググループに参画しました。資金面の援助も大きかったのですが、人材育成を推進するグループの戦略とともに大きく成長しました」

アウトソーシンググループは、株式会社アウトソーシングを筆頭に、株式会社アウトソーシングテクノロジーなど国内外200社以上、数万人という規模で多くの人材を擁する組織だ。

「規模の大きさはもちろんのこと、他社と大きく異なるのはエントリーレベルの業界未経験者が多いことです。業界内では採用を控えがちな傾向にある未経験者を採用し、社内でしっかり人材育成した後に外部企業に派遣することを積極的に展開しています」

同社は、もともと個人向けの総合ITスクールを開講してきた実績があり、0を1にするといった初等教育のノウハウを蓄積してきた。

「グループ内の人材採用が急加速するに従って、当社が積極的に活用され、さらにグループの採用も増えたのです。現在では新卒採用約2,000人、中途採用約6,000人という規模感にまで至っています」

アウトソーシンググループの人材を大別すると、製造系、技術系に分けられる。このうち同社が所属しているのは技術系だ。

「個人向けスクール、企業・官公庁向け研修、グループ内向け人材育成の3本の柱ができあがり、それぞれが順調に伸びている状況を迎えています」

コロナ禍の需要急騰を受けてオンライン化推進
日本の夜明けを担う人材育成がミッション

2020年は新型コロナウイルスの影響で、事業内容に大きな変革の機会が訪れたという。

「グループ内研修ではオンライン授業を早急に採り入れました。また、緊急事態宣言を受けて、企業・官公庁の新卒社員向けオンライン研修の需要も一気に高まりました。当社のリソースを生かして、スピーディーにカリキュラムを作り上げ、当社の約70人の講師は、フル稼働という状況でした」

グループ内を中心に、自宅待機者向けのオンラインスクールも毎月2,000人〜3,000人が受講するという規模で開講したという。

「提供方法は手段でしかありません。これから先、オンライン型だけにシフトするという考えは持っていません。当社が以前から続けてきた、対面方式の直接指導を求める方も多数おられます。オンラインと従来型の通学スタイルを併用することで、幅広い要望に応えていく方針です」

オンラインによる授業は、先端の技術を生かした展開を進めているという。

「AIや画像分析の技術を活用し、オンライン授業の様子をカメラで捉えて、受講者の表情などから関心の度合いを測る研究を進めています。近い将来には、画像解析や心理学といった要素を採り入れて教育のDXを推進し、理解度もオンライン上で分かるようになると期待しています」

海外に比べ、国内ではデジタル人材が不足しており、今後はさらに深刻化すると予想されている。

「一方でIT産業が雇用の受け皿となっている状況もあります。当社は何を目的とし教育に携わっているのかというと、人の雇用を守るためです。これは不変です。雇用と当社のビジネスは深く紐付いているのです」

DX化の推進によって、同社が取り組む事業への需要と期待は、さらに高まると考えられる。

「今後、IT技術者が数十万規模で不足していくと予測されているなか、デジタル人材を作り上げていくことが大きな使命になります。従来のITの初等教育だけではDX人材の育成は実現しません。DX人材はソフトを使えるなどITの技術力、ビジネスを理解する管理力、プロジェクトをマネジメントする力等、多岐に渡る能力が求められます。将来的にはブランディングの変更も含めて検討を進めています」

同社は、産学官と連携しながら、日本のデジタル産業の発展に寄与できる人材を育てていくことを今後の目標に掲げている。国内のDX社会が進んでいくなかで、DXを武器に日本の夜明けを担う人材を育成することをミッションに事業の発展は続いていく。

自社事業とM&Aで事業拡大し、培った技術で全インフラのカバーや海外展開を積極推進

インフラを主軸に据えながら
事業領域を拡大してマルチインフラ企業へ

企業単体での躍進はもちろん、グループ企業の増加で成長を続けている株式会社建設技術研究所。2006年には区画整理を主業とする日本都市技術株式会社、2010年に地質調査や砂防・火山・地震防災のコンサルタント企業の株式会社地圏総合コンサルタント、2015年に分析業の株式会社環境総合リサーチ、ビルなどの建築設計を行う株式会社日総建、2017年に建物の設備設計・構造設計、インフラのコンサルタントなどの英国Waterman Group PlcをCTIグループに迎えた。

「今後の経営を中長期で見通したときに、メインを河川・道路などのインフラにしつつも、建築も含めて幅広い業態に拡大することで成長を図ろうという方針です。その手法として、自社で事業を育てると共に、M&Aを推進しています」

CTIグループが目指している方向のひとつはマルチインフラ企業だという。

「マルチインフラとは、河川や道路だけでなく建築・まちづくりなども含め、グループが培った技術ですべてのインフラを包括するものです。さらに、海外展開を図ることでグローバル化し、アクティブ企業を目指す考えです」

公共事業において、新設がいつまでも多くは続かないだろうと同社は見通す。作ったものを維持管理することと、現状に新たな機能や付加価値を与えて再生利用する方向に向かっていくという。

「例えば、ダム再生は、既存のダムをかさ上げしたり、管理方法を変えて治水機能などを向上させることで、災害の発生を抑えようという取り組みです。これは現在の機能に新たな価値を付加するものです。また、道路には自動運転に対応したセンサーを付けるなど、現在の道路や付帯設備に新しい要素を加えることで、多機能道路が実現できます」

最先端の技術として河川管理では水位のモニタリングにAIを活用し、危険水位に達しそうだとAIが判断したら、警告を発する実験も既に行われている。

「ここが建築との大きな違いです。建築は古くなると壊して新しく建てる、スクラップ&ビルドの手法が一般的です。この考えでは、作る、壊すという作業が永遠に続きます。土木の世界は、作ったものをどうやって長持ちさせるかを重視するのです」

同社の事業は約半分が国土交通省など国の省庁。1割が高速道路会社等を含めた民間企業、他が地方自治体だ。今後は民間や地方自治体を含め、多様な顧客をターゲットに掲げて事業分野を拡大する考えを打ち出している。それは、国の事業が縮小傾向になった際のリスクヘッジとしても機能する。

「海外も今後の伸張が期待される分野です。既にCTIグループの株式会社建設技研インターナショナルを中心にアジアへの展開を図っています。今後は英国Waterman Group Plcの技術者とのコラボレーションで拡大を模索しています。まずはアジア、さらにイギリス国内での当社の技術活用、Waterman Group Plc技術を日本に採り入れるなど、さまざまな取り組みを計画しています」

日本と英国には既に長年かけて独自の技術が確立されている。異なる国で双方がどれだけ優位性を保てるかをこれから検証していく計画だ。

「英国では景観を大切にする発想が根付き、ビルの内側だけをリニューアルして付加価値を向上する技術を持っています。日本でも街並みとの親和性など景観に配慮が必要なエリアでは需要が期待できます」

新技術開発と優れた人材の育成に注力
領域が広く深い、社会に貢献できる事業

同社の大きな経営資産は人材と技術力だ。

「建設コンサルタントは工場を持っていません。大切なのはしっかりとした人材育成と、技術開発で新たなシーズを作り出せる力です。業績がやや低迷している時期であっても、まず人材を確保して、社員教育に力を入れました」

それが、業績が上向きになったときに大きな力となり、社員と企業の成長を支えてくれる。

「また、技術も磨かなければいけません。国の事業の発注も価格から技術競争にシフトしてきました。これからは、AIを含めた新技術に対する投資を活性化する必要があります。当社は約10年間で技術投資を倍増させた結果、多くの新規事業を獲得してきました。この取り組みを続けていきます」

しかし、残念なことに土木は理系の学生からの人気がないのだという。

「大きな魅力のひとつは、活躍できる領域が広く、そして深いことです。社会にとって大切なことに取り組んでいると自覚し、誇れる仕事が当社にはあります」

今後、さらに多くの学生が業界を志望し、マルチインフラを通じて一緒に社会の未来を創りあげていくことを同社は望んでいる。

世界トップレベルの性能を誇る高周波コネクタメーカーが、同軸から多領域に拡大を図る

通信の高速化に不可欠な高周波コネクタを開発
設計、精密加工、組立の全工程に高い技術

無線通信設備、無線装置、測定器、光伝送装置、医療機器、防衛・航空レーダー、衛星通信などで使用される高周波コネクタの開発・生産を主力事業に成長を続ける株式会社ワカ製作所。そこには常に先を見据えた技術開発で、他社との差別化を図る同社の取り組みがある。

「高周波とは文字通り周波数が高いこと、つまり1秒間あたりの電気・電波の振動数が多いことを指します。簡単に言うと通信が高速化するほど、信号や電波の周波数が高くなります。例えば、ケーブルで信号を送る際、情報量を多くするためには周波数を上げて波をたくさん作る必要があるのです」

モバイル通信を例にとると、3G、4G、5Gと通信を高速化するほど、高い周波数が必要になる。

「当社はこうした通信の高速化に必要不可欠な、高い周波数に対応したコネクタを開発しています。周波数が高くなることで、デリケートになり部品の質によっては反射や減衰が起こり、通信が滞ってしまうのです。そのため、精密なコネクタが求められます」

電気的な理想論では、まったく段差がなく、電気の通りやすさが一定な伝送路を通すことが望ましいが、現実には課題が山積する。

「コネクタは挿抜を繰り返すものなので、段差構造を設けていないと接続部品としての機能を果たしません。高周波への対応を実現するためには、まず求められる性能を出せる設計力が必要です」

理論上の性能を出す設計ができたとしても、加工技術が伴わなければ製品化はできない。

「そこには精密加工の技術が求められます。最新の加工装置を使っていても、そのまま使って満足のいく結果が得られるわけではありません。設計の段階で加工の限界まで抑えるようにします。さらに、組立の段階で調整をしていきます」

ケーブルとコネクタを接続するケーブルアッセンブルの工程では、はんだ付けで熱を加えるため、材料の変形による影響が生じる。ものづくりのノウハウと経験が不可欠だという。

「従来は高周波対応のハイエンド製品に特化したメーカーではありませんでした。創業当初は民生用の接続部品や、カセットテープレコーダーのモーターコイルなどコネクタ以外についても製造していたのです。また、ゲーム機専用のコネクタ開発にも携わりました」

高周波や超高性能というよりも、幅広い分野に果敢に挑戦する方針だった。

「1980年代から高周波コネクタに取り組み始め、次第にシフトしました。当時、民生用のコネクタは安価で大量生産という時代を迎え、当社も韓国や中国の拠点で生産しました。しかし、2000年代になると海外での人件費も高騰し、リーマンショック後は日本の家電メーカーが海外勢に押されていきました」

海外のメーカーは日本ほどシビアな用件を求めないため、やがて競争力を失い、路線変更が必要になったという。

「当社は1980年代から高周波帯への対応を始めていました。蓄積した技術を生かして、製品力を強化していく方向に向かったのです。2013年にはJAXA認定を受けるなど、民生用からより高い周波数への対応と高品質を追求する路線に完全にシフトしました」

同軸コネクタ以外にも領域を大きく広げ
高周波の伝送技術を磨いて期待に応える

宇宙開発向けに求められるのはなによりも信頼性だという。現在取り組んでいるのは、信頼の上に成り立つ高性能化だ。

「無線通信でミリ波を本格的に利用するようになったのは、5Gが取り沙汰されたごく最近のことです。それまでは数百MHzという、当社にとっては比較的低い周波数が中心だったのです。従来から意識的に技術力を磨いていたことが実を結んだのです」

データの高速通信、大容量化が進むなか、高周波コネクタへの期待も高まり続ける。

「当社の製品は既に同軸コネクタで実現できる上限、世界最高の周波数まで到達しています。現在はもう少し上の周波数まで実現しようと研究しています。一桁上までというのは難しいので、同軸以外の方式で実現できる方法にも取り組んでいます」

高周波の根幹に関わる技術は同じでも、部品の構造などは大きく異なるという

「高周波伝送路には、同軸コネクタ以外に導波管という、電波の特性に合わせた管の中に電波を通していく方法があります。また、プリント基板といった回路を使う方法、無線などの方向もあります。いずれも、同軸コネクタとは異なり、例えば基板上なら平板回路における技術などが必要です」

専門分野の設計技術力が求められるため、経験を持った技術者の採用も常に行っている。

「この事業を進めていくためには、優れた技術者や他社との協業も必要です。そのためには当社が先端技術に取り組んでいることをもっとアピールすることが大事です。業界や関係者に伝えるため、現段階では大きな需要が期待できない先端開発品も、他社にさきがけて積極的に製品化しています」

同社のコアコンピタンスは高周波の伝送技術だという。今後は得意分野の力を磨いていくだけでなく、技術領域をさらに拡大していく方針だ。