世界トップレベルの性能を誇る高周波コネクタメーカーが、同軸から多領域に拡大を図る

通信の高速化に不可欠な高周波コネクタを開発
設計、精密加工、組立の全工程に高い技術

無線通信設備、無線装置、測定器、光伝送装置、医療機器、防衛・航空レーダー、衛星通信などで使用される高周波コネクタの開発・生産を主力事業に成長を続ける株式会社ワカ製作所。そこには常に先を見据えた技術開発で、他社との差別化を図る同社の取り組みがある。

「高周波とは文字通り周波数が高いこと、つまり1秒間あたりの電気・電波の振動数が多いことを指します。簡単に言うと通信が高速化するほど、信号や電波の周波数が高くなります。例えば、ケーブルで信号を送る際、情報量を多くするためには周波数を上げて波をたくさん作る必要があるのです」

モバイル通信を例にとると、3G、4G、5Gと通信を高速化するほど、高い周波数が必要になる。

「当社はこうした通信の高速化に必要不可欠な、高い周波数に対応したコネクタを開発しています。周波数が高くなることで、デリケートになり部品の質によっては反射や減衰が起こり、通信が滞ってしまうのです。そのため、精密なコネクタが求められます」

電気的な理想論では、まったく段差がなく、電気の通りやすさが一定な伝送路を通すことが望ましいが、現実には課題が山積する。

「コネクタは挿抜を繰り返すものなので、段差構造を設けていないと接続部品としての機能を果たしません。高周波への対応を実現するためには、まず求められる性能を出せる設計力が必要です」

理論上の性能を出す設計ができたとしても、加工技術が伴わなければ製品化はできない。

「そこには精密加工の技術が求められます。最新の加工装置を使っていても、そのまま使って満足のいく結果が得られるわけではありません。設計の段階で加工の限界まで抑えるようにします。さらに、組立の段階で調整をしていきます」

ケーブルとコネクタを接続するケーブルアッセンブルの工程では、はんだ付けで熱を加えるため、材料の変形による影響が生じる。ものづくりのノウハウと経験が不可欠だという。

「従来は高周波対応のハイエンド製品に特化したメーカーではありませんでした。創業当初は民生用の接続部品や、カセットテープレコーダーのモーターコイルなどコネクタ以外についても製造していたのです。また、ゲーム機専用のコネクタ開発にも携わりました」

高周波や超高性能というよりも、幅広い分野に果敢に挑戦する方針だった。

「1980年代から高周波コネクタに取り組み始め、次第にシフトしました。当時、民生用のコネクタは安価で大量生産という時代を迎え、当社も韓国や中国の拠点で生産しました。しかし、2000年代になると海外での人件費も高騰し、リーマンショック後は日本の家電メーカーが海外勢に押されていきました」

海外のメーカーは日本ほどシビアな用件を求めないため、やがて競争力を失い、路線変更が必要になったという。

「当社は1980年代から高周波帯への対応を始めていました。蓄積した技術を生かして、製品力を強化していく方向に向かったのです。2013年にはJAXA認定を受けるなど、民生用からより高い周波数への対応と高品質を追求する路線に完全にシフトしました」

同軸コネクタ以外にも領域を大きく広げ
高周波の伝送技術を磨いて期待に応える

宇宙開発向けに求められるのはなによりも信頼性だという。現在取り組んでいるのは、信頼の上に成り立つ高性能化だ。

「無線通信でミリ波を本格的に利用するようになったのは、5Gが取り沙汰されたごく最近のことです。それまでは数百MHzという、当社にとっては比較的低い周波数が中心だったのです。従来から意識的に技術力を磨いていたことが実を結んだのです」

データの高速通信、大容量化が進むなか、高周波コネクタへの期待も高まり続ける。

「当社の製品は既に同軸コネクタで実現できる上限、世界最高の周波数まで到達しています。現在はもう少し上の周波数まで実現しようと研究しています。一桁上までというのは難しいので、同軸以外の方式で実現できる方法にも取り組んでいます」

高周波の根幹に関わる技術は同じでも、部品の構造などは大きく異なるという

「高周波伝送路には、同軸コネクタ以外に導波管という、電波の特性に合わせた管の中に電波を通していく方法があります。また、プリント基板といった回路を使う方法、無線などの方向もあります。いずれも、同軸コネクタとは異なり、例えば基板上なら平板回路における技術などが必要です」

専門分野の設計技術力が求められるため、経験を持った技術者の採用も常に行っている。

「この事業を進めていくためには、優れた技術者や他社との協業も必要です。そのためには当社が先端技術に取り組んでいることをもっとアピールすることが大事です。業界や関係者に伝えるため、現段階では大きな需要が期待できない先端開発品も、他社にさきがけて積極的に製品化しています」

同社のコアコンピタンスは高周波の伝送技術だという。今後は得意分野の力を磨いていくだけでなく、技術領域をさらに拡大していく方針だ。

スマホ、自動車など幅広い製品に欠かせない「添加剤」のリーディングサプライヤー

デジタルマーケティングから信頼関係を築き
モノを売るのではなくソリューションを提案

グローバルなスペシャリティ化学会社グループALTANA社は、BYK、ECKART、ELANTAS、ACTEGAの4事業部門で構成される。塗料添加剤、プラスチック添加剤をはじめとするさまざまな工業用添加剤のリーディングサプライヤーがBYKだ。ビックケミー・ジャパン株式会社はその日本法人として、国内外に向けた事業を展開している。

「当社の事業は製品を紹介し、理解して買っていただくというビジネスモデルではありません。まずはお客様との信頼関係を構築し、その上で課題や困りごとをお聞きします。当社のR&D、技術営業が実験をしながらソリューションを提案するのです」

どれほど社会が変化し、技術が向上しても、揺らぐことのない方針だという。

「従来はお客様とFace to Faceで会話していましたが、現在はデジタルマーケティングにシフトし、Webを介したコミュニケーションを駆使しながら、信頼のある関係性を高めています。しかし、デジタルの利便性があるものの、話の深さなどには限界もあります。そこで、オンラインツールを使って当社の技術営業が1対1で課題を伺っています」

当初は若手に浸透し、そこから5年から10年かけてゆっくりと移行するものと考えられていた。これが新型コロナウイルスの影響により、わずか数カ月ですべての層に広がったという。

「当社は製品自体を前面に出すよりも、優れた技術をアピールしています。例えば、さまざまなポリマーの分子量分布をきちんとコントロールして、開発者の求め通りに作るという技術があります。そこではポリマーにつける『手』がポイントです。一般的に、世の中にあるものはいろいろな素材が組み合わされてできています。これを結びつけるのが当社の製品なのです。どんな『手』が必要か、どんな骨格がふさわしいかは、お客様の課題によって変わってきます」

同社のR&Dによって、優れた技術が生まれても、それを押しつけるだけでは自分たちの自己満足に過ぎず、ユーザーの役には立てない。

「そのためにもお客様の課題を理解するためのコミュニケーションが大切なのです。ドイツと日本だけを比較してもローカルの要望は異なります。ですから、ドイツの仕様のまま日本で使うことはまずありません。お客様の声を聞くことがポイントなのです」

「当社は豊富な製品を持っていますから、これを組み合わせてソリューションを提案することができます。しかし、バッテリーやエレクトロニクス関連では、新たなチャレンジをする必要も生じます」

同社は兵庫県尼崎市にテクニカルセンターを構えている。日本国内向けだけでなく、グローバル展開におけるR&Dの拠点として位置づけられている。

「特にバッテリーはグローバルな事業の責任者が常駐して開発を進めています。中国や欧州では、EV向けのバッテリー工場がどんどん新設されており、こうした需要に対応する当社のR&D技術は、尼崎から世界に向けて発信されているのです」

プラスチックのリサイクルやフードロス解消も
自社の研究開発が未来社会の発展に大きく貢献

エレクトロニクス関連は日本や東アジアが世界的にもリードしている分野だ。フラットパネルディスプレイは液晶から有機ELなどにも進化している。

「スマートフォンの普及などによって大きく進化し、需要もどんどん高まっています。世界中の液晶パネルの80%以上に当社の技術が採用されているなど、コアな部分に使われることで、当社の事業も大きく伸びています」

内部に使われるセラミックを主体とする電子部品や、情報量を高めた特殊なプリント基板、デバイスも、高集積化により素材の進化が求められている。

「当社への要望や需要量も大幅に増えています。また、バッテリー関連も大きく進化しています。発電する用途だけでなく、カーボンオフセットの実現に向けて、光や地熱を利用して蓄電する用途が広がりました。こうした環境下で利用される電極やセパレータ部分や、安全性に優れた全固体電池の研究も進めています」

同社が力を入れているのは、世界的に伸びている分野だけではないという。地球規模の環境を考えたときに、自社としてできる取り組みとは何かを常に考えている。

「例えば、プラスチックのリサイクル技術を高めることは地球環境に大きく貢献します。この分野ではリサイクル時の強度や外観を高める技術を提供しています。また、社会的な課題になっているフードロスについては、食品の賞味期限を延ばすためのパッケージを開発することでロスを減らすことができます」

食品パッケージの材質や貼り合わせ方についてのソリューションも自社で確立しているのだという。

「いずれの場合も、当社の最終製品あたりの使用量はごくわずかです。しかし、グローバルニッチを追求することで、膨大な量が必要になるのです。それが、当社のビジネスであり、大きな強みなのです」

事業のひとつとして添加剤を扱っている化学メーカーはあっても、添加剤という専門分野に特化した事業をこれほど大規模に展開している企業は見つからない。同社は、世界中に圧倒的なシェアを持っているオンリーワンの存在だ。

「当社の直接のお客様は、自動車を例にすると自動車向け塗料メーカーです。しかし、その先には自動車メーカーがあり、自動車のドライバーがいます。すべてのお客様に対して、当社のチャレンジが少しでも貢献できるようなお手伝いをしたいと考えています」

顧客の期待に応えるソリューションを提供し、未来社会に大きく貢献する事業を継続していくことが、同社の喜びとさらなる成長へとつながっていく。

不動産鑑定から、土地・建物の総合コンサルティングファームとして、ワンストップで対応可能に

事業を大幅拡大し10年で約100人の社員増
不動産関連のコンサルティング業務にも注力

オフィスや商業施設、レジデンスなど多種多様なアセットタイプごとに専門チームを設け、さまざまな鑑定評価サービスを提供している大和不動産鑑定株式会社。120名の不動産鑑定士がニーズに沿って、幅広い見識から的確なサービスで応えてくれる不動産の専門家集団だ。

「当社は1966年の設立から順調な成長を続けており、2011年には189名だった社員が、2020年には約300名に増えるなどこの10年は大きく成長することができました。リーマンショックを脱してからは、不動産証券化に伴う事業が増加し、不動産鑑定部門以外でも建築エンジニアリング部門などが大きく伸張しました。一方で東日本大震災後の復興にも力を尽くしてきました。」

同社は従来、鑑定に特化した事業を展開していたが、専業から脱却して周辺領域へと事業を大きく広げたことが功奏したという。

「現在は、引き出し口を多く揃えた土地・建物の総合コンサルティングファームとして、ワンストップで対応できる体制を作り上げています。」

同社の顧客層は幅広い。各種法人をはじめ、個人の富裕層も多いという。

「一般企業やリート、不動産投資会社、デベロッパーなどからのご依頼が増え、これが当社の売上の伸びを支えています。それだけにとどまらず、不動産資産をお持ちの方はすべてお客様対象となります。個人の方でも相続でお悩みの方、事業承継でお困りの方は多数存在します。今後は少子高齢化により、跡継ぎ問題等がさらに顕在化していく傾向にあります。当社は不動産事業戦略室を開設して、不動産M&Aに対応し動産の評価など不動産まわりのコンサルティングに幅を広げています」

海外にも進出し、シンガポールに現地法人を開設し、アウトバウンドやインバウンド双方の情報収集を行い、海外のお客様にもサービスを提供している。

新しいことに果敢にチャレンジし応援する社風
不動産鑑定を取り巻く幅広い事業に領域拡大

同社は2021年に創業55周年を迎える。そこにしっかりと根付いているのは、顧客に対する社員の姿勢だ。

「不動産鑑定士の業務は、利害関係者の事情に左右されることなく常に公正中立な価格を提示するというのが大前提です。その上で、どうしたらお客様の困っていることを解消し、お力になれるのかを考えるのです。どうしたら実現できるのか、お客様の立場で真剣に取り組んでいます。」

社内でも、困っているとどうやって解決したらよいか、親身になって共に考えるという。

「当社は『新しいことに挑戦しよう』という理念を持っています。他社の参入を許さない当社にしかできないサービスを提供することが成長を遂げていくための基本と位置づけこれを実践してきました。好奇心溢れる社員が新しいことにチャレンジし、これを応援するという企業風土こそが、これまでの成長を遂げてきた最大の要因と思っています。

そこには、失敗もあるが、真っさらなところから挑戦し、創りあげていこうという姿勢が次の目標を成功へといざなう。

「社員の力によって、企業が大きく成長し、その成長を社員一人ひとりが実感できる環境が当社にはあります。業界を熟知している社員は特に、当社の魅力は風通しのよい社風だと評価しているようです。」

新型コロナウイルスの影響により、2020年4月〜6月は業務が減ったが、その後年末にかけて不動産取引が活発化したという。

「コロナ禍でお客様の下へ足を運ぶのをはばかられるような状況を迎え、情報発信の大切さを認識しました。お客様の役に立つ新鮮な情報を継続的に発信していくことが必要だと改めて考えました」

直接的な利益に結びつけようという短絡的な思考ではなく、顧客との距離感を縮めて、同社が身近な存在であることを伝えることに大きな意義があるのだという。

「そこで『在宅勤務応援プロジェクト』と題し、不動産の基本や鑑定とはどんなことでどう使うのか、不動産の評価の仕方、借地権とは何かなど約20項目の動画を作成して配信しました。不動産関連の企業に就職した新入社員など、ご覧になった方から『役に立った』というお言葉をたくさんいただいています」

その成果はコロナがすっかり収束し、日本経済が大きく好転したときに少しずつ現れてくればよいのだという。

「今後は非鑑定部門の成長を促して、不動産の総合コンサルティングファームにふさわしい事業構成、売上構成を実現したいと考えています。多角化を積極的に推進し、事業の柱を2本、3本と増やしていきます」

時代の移り変わりや社会の変化に呼応して、これからも新たなニーズが生まれてくるだろう。同社は世の中に芽吹いたニーズをしっかりとキャッチし、ビジネス化する取り組みを続けていく考えだ。

綿密な診断の下、まじめに施工するリフォームドクター。お客様とともに成長を目指す塗装のプロ。

ドローン新投入でさらに入念な建物診断
マスク配布で信頼関係構築

1995年の設立以来、建物の屋根や外壁の塗装やタイル張り替え、防水・止水工事を行うアサヒ建装。現在では2万5千棟を手がけるリフォームドクターとしてまじめさを貫き、多くのお客様から支持されている。リフォームにあたり、赤外線サーモグラフィカメラやレーザーレンジメーター、温湿度計、デジタルカメラ、ポールカメラ、含水率計などを駆使し、入念な診断を行い、施工を心がけている。

これまでの診断ツールに加え、最近、ドローン機を導入し、上空からの高感度カメラや赤外線カメラが活躍しているという。

「赤外線サーモグラフィカメラによる診断を少しグレードアップすると共に、ドローン機を4機導入しました。そのうちの1機に赤外線カメラを搭載し、タイルや漏水や建物の水分調査などを測れるようにしました。屋上へは入居者や管理会社の許可がないと入ることができない場合もありますが、ドローンを導入することによって上空から高感度カメラで撮影し、調査できるようになりました。また、調査報告書において、ドローンによる上空からの視点での映像はお客様自身も見たことがない場合がほとんどで、非常に驚かれます。このように、様々な角度から建物の傷みを診断し、お客様に情報提供することで予算に応じた提案することができます。お客様からの評判も良く、ご契約いただけることも増えています」

しかし、コロナの影響は少なからずあったという。その中でも、お客様との信頼関係を築くため、マスクを配布したという。

「2020年のコロナの影響に関しては、年度末の3月に仕掛かりの受注残があり、4月の売上は月目標を達成したものの、5月と6月はやはり70%減でした。ひと月に換算すると85%の減です。コロナによってお客様がどうしても二の足を踏まれるのと、すでに受注していても延期を希望されるお客様もいらっしゃいました。ただ、7月8月9月と持ち直し、売上を伸ばしていきました。このままでいくとトータルで年間目標に到達する予定ではあります(2020.12時点)。4月5月にある商社を通じてマスクを5万枚仕入れ、少しでもお互いに安心感を持って接することができればいいなという思いから、アルコール消毒液とともに、約100社のお客様に配らせていただきました。また、3月4月は不動産の入居者数が少なかったこともあり、不動産管理会社にもその影響がありましたので、7月8月の入居者数が少し戻った際に、物件オーナー様に修繕の提案をすべく弊社から管理会社に提案をさせていただいたことも受注が増えた要因の一つかなと思います。もちろん、弊社社員がコロナ渦の中でも一生懸命営業し、中堅の管理会社の受注が増えたことも影響していると思います」

2万5千棟という実績を誇る同社の売上の4割程度が集合型物件だという。

「最近では、集合型物件に絞り、分譲マンションなどの大規模改修工事を手がけるようになりました。営業や管理組合からの直接依頼、不動産管理会社の賃貸マンションの案件が増えました。外壁、屋上防水、タイル張り替えなど一通り、傷んでいるところを改修します。エリアは神奈川・東京ですが、管理会社の物件によっては埼玉まで伺うこともあります」

お客様の役に立ち、お客様に愛される仕事をする
まじめさと丁寧さが明日へと繋がる人材育成

営業拠点としては、西東京支店を閉鎖し、横浜本社、品川、町田の3箇所になるという。また、人材育成も常に行っている。

「社内的には、有資格者を増やしました。施工管理技士の2級・1級を資格を取るよう毎週日曜日に受講し、試験を受けてもらい、男性社員の半分が有資格者となっています。また、現在ではZOOMで行っていますが、毎月営業会議を開き、そこでも『仕事上の失敗は色々あるが、今あることを精一杯やること。過去の失敗や成功から学ぶこと』と常に伝えています。さらに、2021年6月以降にはコロナが沈静化することを見越し、営業部門の人材募集もかけようと考えています」

新しい試みとしては、コロナ対策として光触媒によるコーティングによって感染を防ぐという抗菌・抗ウィルスコーティングを取り入れていくという。

「建物のエントランスやドア付近など、接触感染を防ぐために、メディカルナノコートという新しい光触媒による特殊皮膜コーティング剤を塗布するサービスを始めようと考えています。ただ、施工すると費用がかかるので、コーティング剤そのものをご購入いただき、ご自身で吹き付けてもらうようにしています。現在、某信用金庫様のキャッシュディスペンサーのタッチパネルなどにセルフで吹き付けてもらうなど、試用していただいています」

今後は入札関係の仕事も受注していきたいという。しかし、資本金などの条件の壁があり、なかなか難しいとのこと。

「大規模になると、設計事務所から仕事が来る部分もあるのですが、資本金に制約があるので弊社が応募できないことがあります。しかし常に資本金など会社の大きさではなく、事業内容とその実績を評価していただけるように仕事していきたいと考えています。弊社は施工にあたり、安心保証を付けており、瑕疵担保保険という保険をかけ、不具合が出れば、再施工に保険が下りるようにしています。また、塗装の仕事は、一見すると施工後の状態はきれいに見えるのでその匠の技を目で見て判断できないですが、どれぐらい保つのかにおいて、丁寧にしっかり取り組むまじめさは他に代えがたい大切な部分だと考えており、現場の職人がきちんと行っています」

また、リフォーム会社、不動産管理会社、物件オーナーの三者間の行き違いなどをなくす努力も怠らない。

「お客様あっての仕事なので、お客様に可愛がっていただくことが第一です。忙しくなるとどうしても電話やメールで済ましてしまいがちですが、少しのボタンの掛け違いがトラブルの元になるので、そこは丁寧に、メールを打ち確認の電話を入れること、口頭ではなく文書で記録に残すことなど、そこまでを施工として人材教育をしています。最近、クレームも減ってきており、塗装の仕事と言えばアサヒ建装とすくに思い浮かび、電話一本いただけるよう、常にお客様の心に成功実績を残すことが大切だと社員には伝えています」

ここまでやっていただけるのかということで受注に繋がることが多いという同社。2018年には、台風によって建物が損壊するという出来事が多くあったが、同社に在籍する大工たちが台風の翌日に不動産管理会社の物件の修理をするなど緊急対応を行い、大変喜ばれたそうだ。「いつでもお客様の助けになること、少しでも人の役に立ち、会社を発展させていきたい」と三浦社長。お客様に多く支持される理由はそこにあるのだと思う。

SMO業界トップのスケールメリットを活かし、難治性疾患などの新薬開発に大きく貢献

SMO業界でシェア40%以上を誇るトップ企業

株式会社EP綜合は、2016年に株式会社イーピーミント(以下「イーピーミント」)と株式会社綜合臨床サイエンス(以下「綜合臨床」)との合併により誕生した、治験施設支援機関(以下「SMO」)のトップランナーだ。業界2位と3位の合併により、シェア40%以上を誇るナンバーワン企業と位置づけられる。

「イーピーミントでは大学病院等の大規模病院を、綜合臨床ではクリニックを中心に提携していました。合併により売上高、規模ともにSMO業界トップ企業になったことに加え、クリニックから大規模病院まで幅広い医療機関のネットワークが構築されたことで、より製薬会社や大規模な医療機関からの、相談や新規お取引が増加しました。大学病院やがんセンターなど大規模な医療機関では、院内に治験事務局を設置しているケースが多く、治験コーディネーター(以下「CRC」)だけでなく、治験事務局をサポートする人材(SMA)も派遣するなど、治験を円滑に推進するための様々なニーズに対応しています」

同社は医療機関の倫理的で効率的な治験実施をサポートするため、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)に基づく事務手続きや、治験審査員会(IRB)の運営支援、治験に関する書類の管理など幅広い業務を行っている。

提携医療機関数6,300施設、
CRC1,100名体制の全国展開で差別化を図る

SMO業界のマーケットは、このところ年間約350億円から400億円で推移しているという。

「日本SMO協会には現在24社が登録されています。以前は、比較的小規模なSMOでもビジネスとして成り立っていましたが、近年は大学病院やがんセンターなどの大規模な医療機関では、一定規模以上のSMOが求められる傾向にあり、治験支援の依頼が大手4社に集中してきているのが現状です」

同社の大きな強みは業界トップというその規模だ。

「業界全体で約2,800人のCRCのうち、1,100人余りが当社に所属しています。以前は治験を実施するには、SMO1社だけでは医療機関数やCRC数が不足するため、複数のSMOが参加していましたが、今は規模によっては当社1社だけで対応できるようになりました。その分、製薬会社は手間とコストを抑えることが可能になります」

同社は全国展開をしており、北海道から沖縄まで33拠点を有し、6,300施設の提携医療機関があることも製薬企業等の治験依頼者にとって大きなメリットだ。

「例えば、首都圏だけでは症例数が足りない治験も、札幌から沖縄まで全国の医療機関を組み合わせることで治験がスムーズに進められます。」

また近年、開発動向の変化により支援内容はより専門性が求められている。同社はがん領域をはじめとする高い専門性が求められる治験においても支援実績を多数有している。

「新薬開発の動向は、がん、アルツハイマーや統合失調症などの難治性疾患にシフトしてきています。当社にはそれらに対応できる様々な専門性をもった経験豊富なCRCが多数所属しています。特にがんの治験支援には多くの実績があり、経験CRCは400人以上にのぼり、当社の強みの一つです。」

アジア圏のマーケットで見ると、中国や韓国、シンガポールでも治験は盛んに行われ、治験専門の医療機関もあるという。

「日本国内に治験を呼び込む働きかけも行っています。グローバル製薬企業では、品質は高いが、やはりコストと時間がかかることがネックになり、日本での治験実施を避けるケースもあるようです。海外との競争力をアップするためにも、できる限りコストを抑え、スピードを早めることが重要です」

バーチャル治験『Virtual Go』を推進

新型コロナウイルスの影響で、バーチャル治験に向けた取り組みにもスピード感が増したという。

「オンライン診療サービスなどを手がける企業とも協業し、治験をオンライン化する『Virtual Go』構想をEPSグループ全体で推進しています。例えばオンライン診察後そのまま治験参加の同意説明を行なったり、治験薬を郵送したりと、従来は仕事などで通院が難しかった方にも治験参加の可能性が広がります。最終的には被験者が医療機関に行かなくてもほぼ全てがリモートで治験が進められることを目指しています」

がんやアルツハイマーなどの領域については、新薬を待ち望んでいる患者様が多数いる。

「製薬会社や医療機関と共に、難治性疾患の患者様を救う新薬開発が早期に進行するよう、今後も尽力していきたいと考えています」

治験をよりスムーズに進める上では、医療機関へのさらなる支援が必要となる。今後も医療機関と製薬企業との橋渡し役としてSMOのコーディネート力を発揮することが求められる。同社は大きな使命を果たしながら、創薬の未来を築いていく。

TOEIC® Programなどを通じ、人と企業の国際化に貢献

初・中級者向け『TOEIC Bridge®』を4技能化
団体特別受験制度(IPテスト)ではオンライン方式を新採用

「人と企業の国際化の推進」への貢献を基本理念に、TOEIC® Programをはじめ、英語によるコミュニケーション能力の向上やグローバル人材の育成にかかわる活動を展開しているのが一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)だ。

「TOEIC® Programは現在、世界160カ国、約14,000の企業や団体で活用されています。聞く・読む力を測る『TOEIC® Listening & Reading Test』の2019年度の受験者数は約220万人、話す・書く力を測る『TOEIC® Speaking & Writing Tests』も順調に伸びています」

40年以上前に日本人が発案し、米国の非営利テスト開発機関ETSによって開発されたTOEIC® Listening & Reading Testは、十分にマーケットに浸透していると言えるだろう。

「グローバル化の流れを背景に、ETSのブランド、IIBCの長年にわたる地道な活動の成果が表れています」

2019年には、初・中級者向けの聞く・読む力を測る「TOEIC Bridge® Listening & Reading Tests」に加え、初・中級者向けの話す・書く力を測る「TOEIC Bridge® Speaking & Writing Tests」がスタートした。

「これにより『TOEIC Bridge®』の4技能化が完了しました。また、昨今のテレワーク推進やオンライン授業の導入により、場所や時間を選ばずにテストを実施したいという要望を受け、2020年4月から企業・学校などの団体向けに提供しているIPテストに、オンライン方式を追加しました。既に60%以上が自宅でも受験が可能なIPテスト(オンライン)を選択されています。」

IPテスト(オンライン)では、なりすましなど不正が生じた場合、スコア価値の低下や疑念につながるとして、7月よりリモート試験官サービスを開始している。また2021年3月中旬からはAIを活用した不正防止システム「AI監視サービス」を導入する予定だ。

「リモート試験官サービスでは、リモートで試験中のモニタリングを行うため、受験開始時間が固定されてしまいます。眼球の動き等の検知により不正行為を検出するサービスが始まると、開始時間の制限が撤廃され、いつでもどこでも受験できるようになります。」

これにより、受けたいけれど受ける時間がないという人の希望に応え、テストの信頼性と価値の向上にもつながる。

グローバル人材を育成するさまざまな事業
非接触・非対面時に求められる英語能力を

2020年は新型コロナウイルスの影響も大きく、TOEIC® Listening & Reading公開テストでは約半年間が実施できなかったという。

「公開テスト自体は密を回避しており、感染のリスクは少ないと考えますが、受験者の健康などを考慮して、やむを得ない判断でした。また、会場として大学を借用することが多いのですが、大学が学生に対してもオンライン授業で対応している状況で、場所を確保することも難しかったのです」

再開後は、一部会場が試験向けに貸し出しされなかったり、通常よりも間隔を空けて実施するため受入人数が減少した。さらに、中止期間が続いたことから申込が殺到。このため、当初は先着順のところ、受験機会を公平にするため抽選制に変更した。

「公開テストを1日1回から1日2回開催することで、受験機会の増加を図っています。また、引き続き会場の確保に努めているものの、すべての受験者が希望の日時で受験できない状態が続いています。2021年度は試験日を増やし、毎月開催します。少しでも多くの方に受験機会をご提供できるよう尽力してまいります」

同協会は「地球人財創出会議」や「IIBC Café Globe」など、グローバル人材の育成事業にも注力している。

「人材育成イベントはオンライン化して、より参加しやすくなりました。語学力というのは必要条件ですが、十分条件ではありません。グローバル人材の育成事業を通じて、異なる言語、文化、商慣習など多様化社会の中で、どうやってコミュニケーションをおこなうのか、世界を舞台に活躍する方をゲストに招き、考え、学びあう場を提供しています」

言葉で伝えることがいかに大切か、そのためにはどうコミュニケーションをとるべきか。現在は海外との往来が極めて制約されている。ビジネスの在り方は海外に赴いて、直接会って話をするという形態から、オンラインでコミュニケートすることに変わってきている。

「コミュニケーションの機会は、リアルの世界では減っていても、サイバー空間では増えています。自由な情報交換、意思の表現がサイバー空間で盛んになっています。その場に入っていける語学力と、重要な情報を入手して判断する力が必要です」

従来は表情や身振り、手振りを使って「上手には伝わらなくても、なんとか意思を伝えられる」という場面があった。しかし、電話やメール、チャット、ZOOMなど非接触・非対面時には、より高く発信する能力が求められる。

「2020年は新型コロナウイルスの影響で、十分なサービスが提供できなかったことに対し、心からお詫びを申し上げます。現在は全力で、できる限り多くの方に受験機会を提供できるよう努めております。あわせて、オンラインテストのセキュリティを高めていく取り組みも進めています」

いつの時代にも言葉の壁は立ちはだかり、その解消は大きなテーマであり続ける。同協会は今後も、人と企業の国際化の推進に貢献し、多くの人が自由にコミュニケーションを図れるよう、積極的な活動を続けていく方針だ。

約40万人の中高生が利用する、「NOLTYスコラ」の活用法を競う「手帳甲子園」が盛況

9回目をむかえる手帳甲子園
コロナ禍で初のオンライン開催

長年にわたり「能率手帳」の名称で親しまれ、2013年から「NOLTY」ブランドとして、より身近に感じられる手帳を送り出し続けているのが株式会社NOLTYプランナーズだ。ビジネス用途だけでなく、2011年に発売した中高生向けの手帳「NOLTYスコラ」は約1,200校、手帳のみで約33万人、手帳以外の関連製品を含めると約40万人の学生が利用するまで大きく伸びている。

「当社は2011年に株式会社日本能率協会マネジメントセンターの法人事業部から独立しました。分社後の施策として実施したのが、ビジネス手帳のノウハウに学生を呼び込む、学校市場の開拓だったのです」

ひとりでも多くの生徒が手帳の活用を通じて「自ら学び、考え、行動出来る力」を身につけることを願い、『手帳甲子園』というコンテストを毎年開催している。

「これは『NOLTYスコラ』を活用して、生徒が書く習慣を身につけ、生活習慣の改善や、自律的な時間・目標管理につなげる取り組み、優秀な活用事例を表彰し、広く紹介するものです」

2020年の第9回手帳甲子園は、新型コロナウイルスの影響で、初のオンラインで開催となった。その結果、例年に比べ参加人数が増えたというメリットがあったという。中高生以外ビジネス用途の「NOLTY」手帳は企業向けだけで約430万冊、個人向けの市販品を含めると約1,000万冊を販売している。

「法人向けは継続率が高く、約95%の企業から毎年ご発注をいただいていることが大きな特長です」

手帳を使用することで脳の消費が抑えられる
手書きのよさとデジタルとの融合も視野に

さまざまなものが、アナログからデジタルへと移行されていくなか、紙の手帳をメインに捉える同社は、どのような考えを打ち出していくのだろうか。

「もちろん、デジタル化の否定はしません。アナログとデジタルを使い分けるとか、融合するといったことが大切だと思います」

同社は脳科学の分野から、手書きの有用性を実証する研究を産学協同で実施してきました。

「中高生に『NOLTYスコラ』を使ってもらい、実際にどのような脳の動きがあるのかを研究しています。『NOLTYスコラ』をずっと使っている人と、使っていない人とでは、記憶に対する脳の消費に違いがあることが分かっています、『NOLTYスコラ』を使っている人は、記憶の中にスケジュールのフォーマットが既にあるのです」

そのため、既存のフォーマットに当てはめることで、脳の消費を抑えながら判断することが可能だという。一方、『NOLTYスコラ』を使っていない人には、フォーマットが存在しない。

「使っていない人は記憶を呼び出すときに、かなりの脳の消費があります。つまり、『NOLTYスコラ』を使っていることによって、脳科学的に一定のメリットがあることが認められているのです」

今後もデジタルとどう関わっていくかを考えながら、手書きの利点をアピールしていく。

「当社のユーザー調査によると、若年層の方がデジタルと手書きを上手に使い分けていると言う結果もあります。柔軟な思考で『いいとこどり』ができるようです。年齢が増すに従って、デジタルか手書きの一方に偏りがちな傾向があるようです」

紙の手帳とデジタルの融合は、可能性を広げる大きなきっかけにもなる。

「GIGAスクール構想のなかで、『NOLTYスコラ』もデジタルへの対応が求められており、その融合も進めています。例えば、先生と生徒が手帳でやり取りする際にはデジタルツールを利用するといった発想です」

現在は構想段階だが、将来的にはデジタル版のリリースもあり得るという。

「さまざまなデジタルツールやアプリがありますが、手帳の機能はスケジューラーだけではありません。メモを残したり、考えるスペースでもあるのです」

手帳に手書きした文字や図は、単純なメモとして使うだけでなく、そこから発想を広げていくためのきっかけにもなる。

「そこで、当社は手帳ならではのジャーナル的な使い方をデジタルで実現する計画も持っています。また、逆の発想で、手帳にデジタルの要素を盛り込む考えもあります。」

手書きする紙の手帳は今後も決してなくならない。その大前提と共に、デジタルとアナログのハイブリッドな使い方は、これまでの手帳の使い方を大きく広げてくれるだろう。新たな発想が、次の手帳市場を大きく切り拓いていく。

モバイル事業に加え、官公庁・民間を含めたインフラ工事事業による2本部制で最高益を更新

「モバイルショック」による事業低迷を受け
官民の電設エンジニアリング事業を展開へ

情報通信、電気設備の総合エンジニアリング企業として、創立74年目を迎えたサンワコムシスエンジニアリング株式会社。携帯電話のキャリアによる基地局整備など、モバイル事業分野の堅調な成長により、2014年には600億円を超える売上で最高益を記録した。しかし、翌2015年には社内で「モバイルショック」と呼ばれる事態が発生した。

「当社は、モバイル事業に注力して事業を伸ばしてきました。この当時、携帯電話のキャリアはこれまでの3Gから4GLTEへの移行を図る計画を進める上で、基地局開設などの設備投資が一気に抑えられたのです。売上が約400億円に落ち込み、営業利益は1/3になりました。源泉であるモバイル事業が打撃を受けたため、社員のボーナスはカット、役員報酬も数か月カットという状況に陥りました」

厳しい状況下で社長に就任。すぐに、立て直しがスタートした。

「モバイル事業を主軸に展開していた事業体系を大きく2本部制に再編しました。ひとつは従来からのキャリアのモバイル事業を継承した通信ネットワーク事業本部です。これに加え、新たに官公庁、民間を含めたインフラ工事を施工する社会システム事業本部を開設したのです」

モバイル事業に特化した企業から、2本柱の事業への転換。しかし、結果はすぐには表れない。

「当社は創業当初から電気設備関連の事業を行っていた経緯があるのですが、それからは大きなブランクがあり、約2年間はなかなか事業が推進できませんでした。業績が悪い中で売上だけを求めていくと負のサイクルに入ってしまうと思ったのです。そこで、利益が出ない仕事はしない、利益が出るように仕事をする、という方針を徹底しました。負けた経験をもとに、どうやったら勝てるのかを探っていったのです」

その結果、現在は国土交通省や防衛省、東京都、高速道路、空港ほかの民間企業などに幅広く、電気設備の設計、施工を行う電設エンジニアリング事業を展開するまでに業績を伸ばしている。

「直近では、大規模医療機関のナースコール等を含めた電気設備、空港内の監視カメラ、荷さばき所の電気設備などに取り組んでいます。ようやく軌道に乗ったという段階で、まだまだ勝率は2割程度ですが、売上も約250億円を超えるようになりました。全体で見ると、現在の売上は600億円を下回るものの、最高益を出すまでに至っています」

通信ネットワーク事業分野では、4Gから5Gへの移行が進められている。

「5Gはキャリアだけでなく、ローカル5Gと呼ばれる設備を民間の企業や工事現場などでも構築されています。キャリアビジネス以外に民間企業の5G事業にも貢献できる場があるのです」

5Gは電波の特性として到達距離が短く、直進性が高いためビルの影などでは電波が弱くなりがちだ。そのため、4Gよりも基地局数が必要になると言われている。

「高速道路などでは比較的運用しやすいのですが、個人の方が自動車を自動で車庫に入れられるほど網羅するには相応の時間がかかります。今後はさらに設備を小型化して、もっと密度を高めていく必要があります」

海外では稀な電気通信工事のプロ集団企業
ネットワーク、社会システムの両軸を強化

同社は電気通信に特化した技術を持つ、プロフェッショナル集団の企業だ。しかし、海外には電気通信工事を専門とする企業はあまりないのだという。

「強電会社が電気通信工事も行うケースが一般的です。日本国内には、18社の主要電気通信工事会社があります。このうち、17社はNTTの仕事を主体とした企業です。当社は唯一、民間をメインに事業化している企業です。NTTを除くキャリアと、地域のCATVなどが主な取引先です」

また、強電以下の電気通信関連の事業はすべて引き受ける幅広事業領域を持っている。

「電気や通信、通信のなかでもLANなど特化した分野ではなく、すべての領域について対応可能な体制を構築しています。その中で、当社は常に技術者集団でありたいと考えています。施工管理会社として仕事を流すという立場ではなく、技術の先端に常に関わり合っていきたいのです」

あらゆる電気通信分野をこなすという事業体系の中で、やや弱い部分が空調だという。

「ネットワーク機器は熱に弱いため、空調整備が重要です。M&Aを含めて、空調分野の強化を図っていく方針です。また、今後のトレンドでもある5Gにもしっかりと向き合っていきます。既に6Gの姿も見えてきており、技術はこれからも大きく変化していきます。その進化にどう追従し、対応していけるか、業態が変化していく中でどう収益を上げていくかが経営課題です」

同社は通信ネットワーク事業、社会システム事業の両軸をさらに強化し、2023年には800億円規模の売上達成を目指す方針だ。

チャレンジで成長を続け、チームワークで全社のランクアップを図る老舗企業の姿

ウイルス対策エアフィルターで病院の衛生に貢献
信頼と実績あるフロンティア企業の力を発揮

空調設備機械部、プラント機械部、環境機械部、グローバル事業部の4部門の事業を中心に展開し、成長を続けている進和テック株式会社。なかでも、ホテルや病院をはじめとするビル、工場などの空調用エアフィルターは、同社の取り扱う主力製品のひとつに挙げられる。

「まだ新型コロナウイルスが取り沙汰されていなかった2018年のことです。そこでは今後の病院向けのエアフィルターの今後の方向性について、社内で会議を行いました。今後のトレンドは抗ウイルスか、それとも抗カビか、議論を交わした結果、会社の方針としては「抗カビエアフィルター」を開発することになりました。」

2020年の初頭、中国・武漢で原因不明の肺炎が発生しているというニュースが伝わってきた。

「ウイルスがいずれ日本にも持ち込まれ、感染が広がるかもしれないという情報を受けて、当社も対応策を講じる必要があると考え、上層部を集めて経営会議を開き早急に抗ウイルスフィルターの開発に着手するよう指示を出す予定でした。そこで開発責任者が小声で『実は抗カビエアフィルターの開発を行いながら、こっそりと抗ウイルスエアフィルターの開発実験を行っておりました。来週には正式な試験結果が判明しますが、恐らく他に類を見ない素晴らしい結果が出そうです』と。会議出席者全員が驚きのあまり一瞬の沈黙があり、その後歓声が湧き、開発責任者が褒め称えられたことをはっきりと覚えています。すぐに発売を開始したウイルスを不活性化させるエアフィルターは、従来から取引先だった病院をはじめ、新規の問い合わせや受注も多数あり、現在では多くの施設でご利用いただいております。」

一方ではコロナで大きな影響を受けた業界もある。

「インバウンド需要が一気に消滅してしまいホテル業界は、経費の節減が強いられ、フィルター交換を控えたり、当社への発注が止まったりしたケースもかなりありました。当社は創業以来、赤字になった年はありませんでした。一時は私の代で初めて赤字にしてしまう覚悟をしたのですが、2020年末にはプラスに転じて、苦しい状況ながら、なんとか乗り切れる見通しとなりました。」

同社は以前から、異なる業界と取引していくことで、景況が悪化した業界があっても他の収益でカバーできるという経営方針を示していた。まさに、リスクを回避したバランスのよい企業経営を表している。さらに同社の新型コロナウイルスへの対応は続く。

「時間が経過するとともに、一般的なウイルスに対する効果ではなく、新型コロナウイルスに効果を発揮できるのかが焦点になりました。当社は新型コロナウイルスそのものを使った実証試験を大学との共同研究で進めており、確かな効果があることが判明しています。既に、エアフィルターの濾材に織り込んでいる抗ウイルス剤単体が、新型コロナウイルスを不活性化することは実証されています。現在は、エアフィルターとして利用した際の効果を測っている状況です。」

そこには空調用エアフィルターとしっかり向かい合い、信頼と実績を積んできた企業の姿が見えてくる。

「時代や社会が変化しても、どんな産業であっても、空気中の汚れはなくなりません。当社は長年にわたって対応し続けてきた老舗企業として、どんなご要望にも『お任せください』と答えられる自信があります。」

チャレンジ、チームワーク、ランクアップ
社長就任後に定めたビジョンを全社で実践

2012年に新社長に就任して以降、同社は新たにチャレンジ、チームワーク、ランクアップの3つのビジョンを掲げ、これを実践している。チャレンジの代表例は、海外進出だ。

「マレーシアに工場を新設して海外生産をしています。当初は約90%が日本向けでしたが、現在は約60%を海外向けに提供するまで成長し、世界的にも屈指の規模と生産量を誇る工場になりました。」

チームワークとランクアップは、社内の雰囲気やモチベーションアップに大きく貢献しているという。

「従来は、一人ひとりの社員が個別に働いているという状況でした。例えば、同じ部署で机を並べていても、同じものをそれぞれ別の仕入れ先から異なる金額で仕入れていて、作業員の手配もバラバラの発注でした。チームとしてきちんと情報を共有することで、適正なコストや業務の効率化を図ったのです。さらに、チームにどう貢献したかを評価基準に盛り込み、指導力を向上し、社員全体のランクアップを図ったのです。」

同社のチャレンジは、今後もさらに続いていく。

「空気中の汚れの半分は天然に由来するもの、もう半分は人為的なものと言われています。しかし、誰も汚すことを目的にしているのではなく、豊かで快適な生活を作り上げる課程で、汚してしまっているのです。そこで、私たちは日本の空をきれいにする仕事をしているのです。」

今後はさらに、海外を含め地球規模の環境をきれいにすることが使命だという。同社の活躍の場は、これからも大きく広がる。